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運転

循環冷却水を化学プラントで使う目的

循環水 運転
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循環冷却水(Circulating water)を基本から解説します。

水を循環させて冷却塔で冷やすから、循環水と呼びます。

化学プラントでは冷却源の最重要のユーティリティとして、循環水を使います。

水という入手しやすい冷却源で、常温というコントロールしやすい範囲で、反応熱などの大半を担う心臓部に相当する冷却源。

街中でも冷却塔は見かけますが、実はその機能はとても重要な物です。

この記事を読むと、循環水の基本を理解できます。

機電系エンジニアはこの辺りの認識が低く、ノーメンテに近い装置として重要度が落ちがちですが、運転している側はこれ以上信頼できる冷却源は無いという位くらいに大事です。

初期冷却

循環水はプラントの初期冷却に使います。

温度は最大でも30℃程度

水道水や川の水のように、気温の影響を受ける常温の水です。

常温と設計条件に書くとややこしいので、40℃というような書き方を実際にはしますが。

冷却水は温度がかなり大事な要素です。

プロセスの工程で例えば100℃を越えた液体やガスを冷却しようとするときに、何℃の水で冷却すれば良いでしょうか?

この問題に突き当たります。

化学プラントでは循環水以外にも、冷却に使える水はいくつか存在します。

  • 循環水(常温)
  • 工業用水(常温)
  • チラー水(5~10℃)
  • ブライン(氷点下以下)
  • 温水(40~100℃)

温度差Δtが大きい方が交換熱量が大きいので、冷却水は温度が低い方が良いと考えるかもしれませんね。

ところが、この考え方には落とし穴があります。

  1. 低温の冷却源への負荷が高くなる
  2. 設備を破損させる

冷却源への負荷

プロセスで発生する熱を冷却するときに、どんな温度でもとにかく低温の冷却源を使うと、その冷却源への負荷が大きくなります。

依存しすぎという言い方でも良いでしょう。

例えば、氷点下以下のブライン冷凍機でプラントの全冷却を担おうとしましょう。

プラントで必要となる冷却熱量はさまざまですが、これを全部足し合わせると膨大な量になります。

冷凍機の大きさも、とても膨大なものになります。

冷凍機のランニングコストが高くなりますね。

それよりも、冷凍機が故障したときにどうしようもなくなるのが最大の問題です。

設備の故障はいつ起こるか分かりません。

故障したときに、他の方法で対応できるようなバックアッププランを持つことはとても大事です。

全部をブラインで冷却するのではなく、循環水やチラー水で対応することはリスク分散化の意味を持ちます。

設備の破損

プロセスで発生する熱を冷却するときに、どんな温度でもとにかく低温の冷却源を使うと、設備を故障させる可能性があります。

典型例がグラスライニング設備です。

物体に熱が加わって温度が上がると、膨張しようとします。

この膨張量は材料によって変わります。熱膨張率と言います。

ライニングのように異なる材料を張り合わせた場合、熱膨張率が異なります。

設備のように変形が拘束されている場合、破損という最悪の結果になります。

例えば、100℃の状態のプロセスでいきなり-5℃のブラインで冷やしてしまうと、温度差が高すぎて割れることがあります。

逆に自由に変形できるようにしているのがバイメタルです。温度計として使えます。

典型フロー

循環水は30℃程度の水なので、化学プロセスの初期冷却に使えます。

典型例が以下のフロー。

熱交換2段

2段の熱交換器を直列に繋ぐイメージです。

1段目の熱交換器が循環水、2段目の熱交換器がチラー水という使い分けです。

100℃のプロセスガスが、循環水で50℃くらいまで冷却して凝縮液となり、残りのガスをチラー水で30℃くらいまで冷却させるという考え方です。

ガスの蒸発熱を冷却させる意味で、循環水は多くの熱を負担する形になります。

循環水だけでは完全に熱を奪うことはできないケースが多いので、残りのわずかな熱量をチラー水やブラインでカバーするという発想です。

そういう意味で、循環水はプロセス冷却の肝です。目立たないけど非常に重要な設備です。

典型例として1段目が循環水という例を紹介しましたが、これより高温になると温水などの高温の冷却液で先に冷却する場合があります。連続プラントではこういう発想が多いと思いますが、バッチではほぼ見かけません。

工業用水の代わり

循環水は、工業用水の代わりとして使います。

プラントの冷却水として、熱を奪ったあと冷水塔で冷やして、再度プラントに供給します。

循環水構図

循環水を使わない場合は、どういう構図になるでしょうか

工業用水の場合は、設備に常時流入・常時排出という形を取ります。

これは使い捨てにする発想です。

水が多量にある日本ならでは。

昔ならこういう使い捨ては許容されていました。

近年では水の使い捨てが問題となってきていて、工業用水の使い捨ては許されなくなってきています。

工場から外部への水の排出量の問題に直結しますので、冷水塔はとても重要な役割を担っています。

循環水が使える場所

循環水が使える場所を整理しておきましょう。

  • 反応器でのバッチ的な冷却
  • 熱交換器など連続的な冷却
  • ポンプのシール水としてバッチ注水
  • シールポット・スクラバー・水封式真空ポンプの連続注水

工業用水を使う部分の多数は、循環水に変えることが可能です。

一般的には反応器や熱交換器などのメジャーな熱交換部分に、循環水を使うでしょう。

意外な使い方として、ポンプのシール水や設備の循環水としても使用可能です。

この場合は工業用水の使い捨てと同じ感覚で、循環水の使い捨てを行うことになります。

循環水の補給・ブローと関係するので、使用量の設計が大事です。採用するには慎重に検討しましょう。

参考

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最後に

循環水の化学プラントので使い方を解説しました。

プラントの初期冷却源として活躍します。

低温の冷却源ばかりを使っていると、コスト・リスク集中・設備破損などの問題が起きます。

循環水はプラントで必要な冷却の大部分を担う重要装置です。

工業用水の使い捨てを防止して、環境にやさしいプラントにするために必須です。

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