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化学工学

単位系の基本|化学工学の初歩

単位系 化学工学
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単位(unit)について、化学プラントの機械設計で使うものをまとめます。

学校ではMKS単位(m・kg・s)で学んで、実務の場でも当たり前に使うのだろうと想像している学生さんや若手エンジニアさんは多いと思います。

私も20年以上前にそんな感じでした。

でも、いざ会社に入って仕事をしていると、習っていない単位系に直面して悩むでしょう。

ゆっくり考えればなんて事はありませんが、口頭で議論するときには障害となります。

良く迷うものに限定して解説します。

単位系(unit)

化学プラントの機械設計で扱う単位系は、物理を学んだ高校生ならかなり馴染みのある一般的な物が多いです。

物理量SI基本単位SI単位
長さm
質量kg
時間s
温度K
密度kg/m3
圧力kg/m・s2Pa
粘度kg/m・sPa・s
仕事kg・m2/s2J
仕事率kg・m2/s3J/s
熱伝導率kcal/m・hr・K
伝熱係数kcal/m2・hr・K
化学プラントの機械設計でよく使う単位

力学の基本的な単位と温度を組み合わせて使うくらいです。

電気や計装に比べると初心者でも取りかかりやすいですね。

難しさは「単位の換算」にあると、私は考えています。

これらの単位を駆使するのが化学プラントの機械設計です。

実務で換算に悩む単位を紹介していきましょう。

キロ

最も悩む単位が「キロ」です。

キロはSI接頭辞という1000を表す「k」のはずですが・・・。

現場では以下の意味で「キロ」を使います。

重量kg

圧力kgf/mm2(JIS10KのK)

長さkm

特に圧力の単位はやっかいです。

1kgf/mm2を1キロと呼ぶ人もいれば、100kPaを100キロと呼ぶ人もいます。(最近ではかなり少なくなりましたが・・・)

1kgf/mm2のキロを示すときにはJIS10Kのキロ、圧力を示すときには100kPaではなく0.1MPaと表現する工夫もあります。

もっともバッチプラントではMPaを越える圧力はほぼないので、0.1MPaやコンマ1MPaという表現はあまりしません。

これらの単位が、間違いを起こすものであって相手に伝えるには誤解のないような言い方をできるようにしておきたいですね。

単に「キロ」と言ってしまうのは危険です。

プラント的には配管の長さをkmのオーダーで表現することがあって、これも「キロ」と呼びます。こちらは他の何かと間違える要素が少ないです。

熱量(calとJ)

熱量のcalとJは本当によく迷います。

1kcal=4.2kJ

1kJ=0.24kcal

この2つの関係が、物事を複雑にしてしまいます。

単に熱量というだけの話なら、calを基準とした考え方をするのが化学プラント的です。

というのも反応などに関する熱の単位を、calで議論することが多いからです。

学校ではJ単位で習いますけど、現場レベルではcalがまだまだ現役です。

遥か昔に開発された製品の資料を見ていると、calで書かれています。

新製品でも、昔の製品との関連性を考慮する機会があるので、calで統一するかJで統一するかという問題が出てきます。

昔からよく使っているcalで統一したいと考えるベテラン層が多いので、Jに切り替わるにはかなりのハードルがあるでしょう。弊社でもあと20年くらいは変わらないと思います。

仕事率(kcal/hとkW)

熱量と同じように、もしくはそれ以上に悩むのが仕事率

kcal/hとkWの世界です。

kcal/hは熱から派生して、kWは電気から派生した、エネルギーの考え方。

化学プラント的には熱のcalで熱バランスの議論を行いますし、時間のオーダーでの議論が多いので、kcal/hという単位で相当の議論がされます。

一方で、電気設備的にはkWで議論されます。

冷凍機での問題(kW→kcal/h)

kcal/hとkWが融合する場面となるのが、熱交換器や冷凍機。

最近ではkWで統一するメーカーが増えてきました。

これはエネルギーという目で見れば妥当なように見えますが、ユーザー的にはcalやhの単位で議論するときには問題になります。

1kW=860kcal/h

この考え方から、1W≒1kcal/hというような直感的な理解をしていると、少し楽になるでしょう。

例えば、私は冷凍機100kWの能力と言われたら、かなり戸惑います。

冷凍機で100,000kcal/hというと安心します。

そのため100kW→100,000W→100,000kcal/hという換算を頭の中でしています。

これが冷凍機に送る冷却水のポンプ能力の検討に使われます。

これを発展させて、温度差5℃としたときに100,000kcal/h→20,000kg/h→20m3/h→333L/min→80Aというような換算で口径計算までを頭の中でしてきます。

これらの換算をWベースでできれば、calで考える必要もなさそうですが。。。

熱交換器での問題

熱交換器の設計では総括伝熱係数(U値)の議論がされます。

$$ Q=UAΔt $$

ここで、Uがkcal/m2・h・kの単位で整理されている工場だと、仕事率がkcal/hの単位で議論されます。

私も200kcal/m2・h・kで20m2だから200,000kcal/h、というような暗算レベルの確認を良くします。

1kcal/m2・h・k≒1W/m2・kなので、Uだけを考える場合にはkcal/hでもkWでも恐れる必要はありません。

kcal/hとkWのどちらに合わせるべきか?

どちらの単位を使っても良いですが、求める結果が何であるかはエンジニアとしては意識するべきです。

kcal/hだけで考える場合は、電力とかエネルギーという視点が欠けているように感じます。

kWだけで考える場合は、反応や装置に対するケアが欠けているように感じます。

もめ事を起こさずに処理しようとしたら、換算をすぐにできるようにするか・求める結果を予め予測して計算しておくか、ということになると思います。

calを好んで使うのは化学プラントのケミカルエンジニアのベテランという想定を、私の頭の中ではしてしまっています。冷凍機や熱交換器などの設計ではcalなのに、エアコンではWを使うちぐはぐな例も見られます。もちろん機電系エンジニアのベテランもcalを使いますが、彼らはそもそもそんな議論に関わることが少ないです。

逆にWを好んで使うのは、若手のケミカルエンジニアや機電系エンジニアを想定しています。できる若手は、Wで考えてもcalで結果を表示したり・口径計算など後のケアをしたりしています。

そう考えると、視点の問題の気もしますね・・・。

粘度(cPとkg/m・s)

粘度はcPとkg/m・sを使います。

1cP=1m kg/m・s

なので、注意しましょう。

熱交換器の計算やレイノルズ数の計算をするときなどにハマりやすいです。

逆に言うと、これ以外の時はあまり登場しないので、問題になるケースは少ないです。

化学のプロセス開発の現場では、密度の情報は比較的早くから入手出来ても、粘度はかなり後になって分かることが多いです。

一般的には溶媒の種類でだいたいこれくらいと決めてしまって、本当に重要なところだけ測定をして対策を取るという感じです。

密度と比重

単位そのものとは少し違いますが、密度と比重は違います。

密度はkg/m3の単位で、比重は無次元の単位です。

水なら密度は1000kg/m3・比重は1ですが、トルエンなら密度は870kg/m3・比重は0.87というように、表現しましょう。

もちろん温度にも依存するのですが、そこは省略するとして・・・。

比重液体なら水・気体なら空気に対する密度比という定義を思い出しておきましょう。

混同して比重を密度という意味で使っている人を、そこそこ見かけます。

参考

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最後に

化学プラントの機械設計でよく使う単位について解説しました。

mks単位で、力学の範囲に温度が少し加わった程度の馴染みのある単位です。

calとJという問題が、熱と電気という問題で根深く関わってきて、いつも悩みます。

この背景を知ったうえで、cal派・W派お互いに歩み寄りたいですね。

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