ブースターポンプ(pump)を使っても上手くいかないことはありませんか?
渦巻ポンプを設置したけど、流量が足りずにブースターしたい。
こんなニーズは工場では結構あります。
そこでブースターポンプを設置しても、あまり変わらないね・・・と悲しい結末になることが多いです。
ブースターポンプが失敗しやすい理由を、考えてみましょう。
圧力損失計算と深く関連があります。
ブースターポンプ(pump)って?
そもそもブースターポンプってどういう用途なのかを最初に整理します。
通常はライン中に1つのポンプを置いて、送り先まで配管で繋げます。
この主ポンプが能力が足りなくて運転上困ったというときに、ブースターポンプとして直列に2台目を設置することがあります。
便宜上、ブースターポンプの能力は主ポンプと同じにしておきましょう。
これで何とか間に合わせ的な対応をしようと考えがちです。
特にバッチ系化学プラントの場合、時間単位で使用量が変化しているので、ブースターポンプとして2台目のポンプを設置しても使用機会が少なく無駄になりやすいです。
いわゆる給水ユニット型のブースターポンプは経済的な運転を目指して、圧力検知やインバータによる回転制御をしたりしますが、化学プラントでは防爆の縛りで導入ができないケースもあるでしょう。もしくは渦巻ポンプ型だと腐食したり漏れやすかったりという理由で、避けるケースも考えられます。今回は給水ユニット型は対象にせず、自前でポンプを1台追加するという場合を想定しています。
性能曲線の解釈
さて、このケースのブースターポンプがあまりうまくいかないことを、性能曲線上で見ていきましょう。
同能力のポンプを2台設置する場合の性能曲線を考えることになります。
直列ポンプの場合の性能曲線は、流量を1つ指定して主ポンプとブースターポンプの揚程を足し算する形です。
ブースターポンプの性能曲線としては縦に2倍した形になります。
一方で、配管抵抗曲線は変わっていません。
ここでポイントは、ポンプ性能曲線と配管抵抗曲線の交点が運転点です。
ポンプ性能曲線が2倍になっても配管抵抗曲線が同じなので、交点は純粋な2倍にはなりません。
流量も揚程も2倍にはなりません。
上の図ではQ2<2Q1という関係になります。
ブースターポンプを置いて能力2倍になったはずなのに、なっていない!
なんて不満が出るのは性能曲線を見ると明らかなことです。
配管口径アップ
さて、ブースターポンプを置いて失敗する場合の典型的な対策は、配管口径のアップです。
少なくともブースターポンプの出口の口径は1サイズはアップさせましょう。
これは配管抵抗曲線を落とす働きがあります。
抵抗曲線が寝る方向になると、流量は増えます。
ブースターポンプがない1台運転の状態でも流量は増えます。
Q3>Q1となって、Q1では流量が足りないと不満があってもQ3だと問題なかった、というケースは十分に考えられます。
ポンプの能力が足りずにブースターポンプを検討してほしい、と言われたら配管口径もチェックしましょう。
配管工事費は確かに掛かりますが、動力費は削減できます。
限定ブースト
仮にブースターポンプを設置する場合にも、場所は限定しましょう。
例えば、主ポンプで複数の場所に同時に送るという場合を考えています。
この場合、液が流れてこないという不満が出る場所は実は限定的です。
- 送り先の高さが限定的に高い場所
- 送り先で一定以上の圧力が求められる場所
こういう場所の直近にブースターポンプを付けるという案です。
一般のブースターというとこのイメージが強いでしょう。
とはいえ、これはこれで失敗しやすいです。
特に高さが高い場合、ブースターポンプを直近に置くと主ポンプで液が送られずに、空状態で運転する可能性があります。
使用ラインの系統の実態をちゃんと把握する必要があります。
実態把握の時間がないから、とりあえず主ポンプの近くにブースターポンプを置いて何とかしよう!っていう流れになって、失敗というパターンです。
口径アップでも限定ブーストでも系統の把握とポンプの性能曲線の知識が必要です。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
ブースターポンプが失敗しやすい理由を解説しました。
2台直列運転で配管口径が変わっていないから、能力が単純な2倍にならない。
口径アップさせる点に目がいかない。
ラインを限定化しようとしたら、限定個所の特定に失敗する。
この問題を解決できるかどうかは機械エンジニアの腕の見せ所だと思います。
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