機電系エンジニアが化学プラントなどのプラントエンジニアリングをしていると、分からない・知らないと悩むことばかり直面すると思います。
少なくとも3~4年経験するまではこの時期を過ごすでしょう。
そこから先も10年くらい経験するまでは自分の判断に自信が持てないはずです。
特定の人だけではなく、多くの人に共通する問題が多いのでまとめてみました。
分からないのは、自分だけじゃなかったんだ。
今悩んでいるエンジニアも、自分を追いつめることなくこんな風に考え方を変えて仕事に取り組んでもらえれば幸いです。
とにかく仕事のありとあらゆる部分で分からないはずですよ。
設備予算が分からない
機電系エンジニアリングのスタートである設備予算についてですが、考えれば考えるほど分からないはずです。
- 設備投資と回収の関係
- 会社が期待している予算額
- 個々の設備案の概算額を一瞬で計算する方法
- FSで適正な精度を出す方法
- 社内で運用している積み上げ見積の方法
見積作業という技術的な問題だけでなく、投資という会社の判断の問題まで、幅広い問題に頭を悩ますでしょう。
初心者のころはせっかく見積作業を完成させても、
- そもそも見積案を正確に理解していなかった
- 見積案に対して適正な見積額を提示できなかった
- もっと安価なプランを考えることができなかった
などのやり直し作業が多数発生するはずです。
これらの作業を効率化するためのマニュアルなども準備されているでしょうが、全体を網羅するマニュアルを作るのは難しいので、結局はどこかの何かでつまづくことが普通です。
この度に、自分は見積ができない駄目なエンジニアだ、なんて思う必要はありません。
逆に「見積なんて簡単だ」「機械的に見積をすれば良い」と思っているエンジニアの方が危険。
見積段階でしっかり設計要素を考えることが大事で、本当の設計は見積にあると言ってもいいくらいです。
そんな見積が上司に一発承認を貰えると思っている方が間違いなくらいです。
上司と徹底的に議論しましょう!
フローの考え方が分からない
エンジニアが作成するフローシート。
実はエンジニア自身も分からずに作成していることが多いのではないでしょうか?
- プロセス部門から言われるがまま
- 図面屋に類似プロセスをそのままコピーしてもらっていた
- トラブルが起きた時に事後対応のその場しのぎで改訂していく
こんな作業を繰り返していくと、フローシートの考え方を身に付けるのは時間が掛かるでしょう。
フローシートの1本1本の配管の役割や口径の考え方を説明できるようになるためには、プロセスをかなり理解していないといけません。
これをプロセスに詳しくないエンジニアが100%理解しようと思うことの方がおかしいのかも知れませんね。
フローシートはエンジニアリング部門の物でななく、会社の財産ですからね^^
それでも自部門で作成するフローシートだからこそ、社内で一番詳しいレベルになっておきたいもの。
上司からフローシートに関して指導を受けた時は、そういう期待をされていると思ってください。
最初は分からなくて当然です。
設備の設計が分からない
既設をコピーするだけのエンジニアなら、設備の設計思想が分からないと言っても仕方がないでしょう。
とはいえ、バッチ系化学プラントの設備なら検討する事項はあまり多くはなく、エンジニアリング業務の中でも最も取り組みやすい分野です。
設計者なのだから設備の設計ができて当然。
こういう自負もあるでしょう。
材質・強度などを運転条件から当てはめる単純作業だけなら、比較的早い段階でマスターできます。
初心者なら個々の仕様を決めるだけでもかなり大変ですよね。
でもこの段階で悩む人はあまりいないと思います。勉強材料は世の中に出回っていますから。
問題は、工場として事業場として共通仕様をどうやって決めるか。
これは難しいですよ。
プラント数が多ければ多いほど習得に時間が掛かります。
それこそ10年では足りず、20年くらい掛かるかもしれません。
これは一度まとめてしまえば、後世の多くのエンジニアが頼りにできるバイブルになるでしょう。
問題は個々のエンジニアの考え方にばらつきがあり、まとめることが難しいということ。
数はエンジニアリングの最大の敵ですね。
機械の図面が正直分からない
機械エンジニアなら機械設備の図面は知っておきたいですよね。
ところがこれが結構分かりにくいもの。
どの設備にも共通するような図面の内容について、図面とにらめっこする初心者は多いと思います。
まずは、お絵かき・着色をするところから始めましょう。
図面で何を見たらいいか分からない初心者にとって、特に大事なシール部は理解しておきたいもの。
シールが分かると機械の構造の8割は理解しているといって良いでしょう。
線が多くて分かりにくい図面に対して、地道に着色していくことで、
この部品はどこまでが一体でどこからが分割されているか
が見えてきます。主要部分で分割している部分にはシールが必ずあります。
シールを通じて全体の構成が分かると、耐食性が必要な場所の材質が図面から解読できます。
耐熱温度は簡単に分かるでしょう。
シールの構造が分かれば耐圧強度もある程度推測できます。
溶接記号も取り組み方は同じです。
蛍光ペンを持って図面に着色していく。これが近道ですよ。
配管図が読み解けない
配管図が読み解けないエンジニアは多いでしょう。
配管図は1本1本は単純ですが、その数が圧倒的に多いのが問題。
数はエンジニアリングの最大の敵、ですね。
ここに1週間くらいの膨大な時間を掛けるエンジニアも多くいるでしょう。
読み解こうと思うと、とても時間が掛かります。
ここでも機器図と同じく、蛍光ペンが大活躍。
フローシート1本1本を配管図で追っかけていき、見終わった部分を着色していきます。
これでも時間短縮ができるだけで、時間は掛かります。
初心者が1週間見ても得られる成果は多くはありません。時間を区切る癖をつけましょう。
配管図は自部門の成果だから、時間を掛けてちゃんと理解しないといけない。
この発想が強すぎるとプロジェクト全体にとっては阻害要因となりえます。
小規模な工事で1回目から100%段階でのレビューをすることに慣れていると、
中規模工事でも同じように100%レビューに取り組んで痛い目に会います。
こういう場合は、50%レビューなど臨機応変に取り組みましょう。
工事施工図を読み解けない
配管図に比べると優先度は低いですが、読み解けないという意味では悩むでしょう。
- 土建図のチェック
- 製缶図と配管図の干渉チェック
- 製缶図から作業性を読み解く
この辺りはとても悩み、苦しむ部分です。
現場での作業を理解していないエンジニアは、図面だけを見て何となく妄想をして結局使い物にならない製缶ができるということが起こります。
ここで、現場からクレームが。
クレームが続けば続くほど悩むでしょう。
初心者~中級者が最も苦戦する分野です。
進捗管理が分からない
業務の進捗管理は実はかなり難しいです。
初心者は周囲の人から言われるがまま対応するので精一杯でしょう。
その段階を越えて、周囲の人の作業進捗を管理しようと思ったら、まぁ大変。
- メーカーは返事が遅い・ない。
- 製造部に確認メールをしても返事がない
- 図面屋さんは100%レビューまで相談しない
- 部下の設計進捗の報告がない
報告連絡相談の練習をしないまま、日常業務を何となくこなしていると、管理という意味で痛い目を見ます。
時間的に余裕がある仕事ならまだいいのですが、余裕が無い仕事でも周囲の人の動きを待つお見合いの状態になりえます。
その結果、期限に間に合わないと。
もしくは間に合わせるために強引な方法を取る。
その結果、質なのかコストなのか何かを犠牲にすることになります。
そんなことを毎回毎回繰り返さないようにするために進捗管理が大事です。
進捗管理は結局は人の管理です。だからこそ難しい。
人の管理だからこそ、これと言った正解はありません。悩みましょう。
多少の失敗は許されます。
自分の方法を確立しようと挑戦することが大事。
調整しないまま一定の年数を経つと、進捗管理ができないエンジニアというレッテルを貼られます。
予算管理が分からない
予算管理は実際にはあまり難しくありません。
ところが難しく考えがちです。
化学プラントのプロジェクトなら、設備購入・工事発注・追加精算・試製造対応の4つくらいの段階に分ければOK
それぞれの段階で、予算をチェックしにいけばいいだけ。
毎月の家計管理ができていれば、プロジェクトの予算管理なんてもっと楽です。
家計管理をしないエンジニアが多いから、予算管理も大変と思うのでしょうけどね^^
家計簿アプリを使って、日常の消費額のチェックをすることから始めたら良いと思います。
化学反応なんて興味すらない
機電系エンジニアは化学反応には興味すらないでしょう。
私も似たようなもの。
反応式を見ても良く分かりません。
大事なのは
- 吸熱反応なのか発熱反応なのか
- ガスが発生するか
- 粉を扱うか
- 取扱温度や圧力が高いか低いか
- 反応時間が長いか
- 腐食性が強そうか
というようなプロセスよりも部分だけでOKです。
分からないことだらけのエンジニアリング業務なので、反応構造などは捨てる方が得策でしょう。
それよりも大事なことはいっぱいあります。
ここで挫折感を感じる必要はありませんよ。
製造プロセスが分からない
製造プロセスが分からない機電系エンジニアはとても多いです。
初心者や中級者では悩んでいる暇すらないかも知れません。
ところが、プロジェクトを1人でこなせるようになるためには、プロセスの理解は必要です。
現場やプロセスエンジニアに個々に話を聞くだけでは、なかなか習得できません。
プロセスエンジニアが議論する場に入っていって、どんなことが話題になっているかを知る工夫が大事です。
こういう時には各種会議が役に立ちます。
プロセスエンジニアと機電系エンジニアが同じフロアで仕事をしていなかったり、
業務が忙しくてコミュニケーションが取れないと、プロセスに対する理解が遅れがちです。
機電系という自分の範囲だけをこなせばいいという近視眼的なエンジニアになると後が大変です。
化学会社から見たらそんなエンジニアは不要。
外部のプラントエンジニアリング会社に依頼する方が安い、と判断されますよ。
原単位なんてさっぱり分からない
原単位まで理解するエンジニアはとても少ないでしょう。
この辺になると化学会社の運営に立ち入ります。
- 個々の原料が1kg何円なのか
- 製品を1トン作るのに、原料やユーティリティをどれだけ消費しているか
この辺が合理化案に直結して、製品の競争力を高めます。
合理化のためにはユーティリティという機電系エンジニアでもタッチできる分野があるので、
原単位が分からないなんて怯えることはありません。
省エネの立場で提案していきましょう。
水・電気・スチームがキーワードです。
難しく考えずに、機械の原理の概要が分かれば、提案できますよ。
提案が採用されると自信に繋がること間違いなし!
参考
最後に
化学プラントの機電系エンジニアリングで悩む問題を11個紹介しました。
エンジニアリングのほぼすべての段階で分からないと思います。
特にフローシート・配管図は技術の塊なので最初に取り組みたいですが、
その次には予算・進捗など全体を見る視点を育てたいですね。
とはいえ、エンジニアのほぼ全員が悩む道です。あなただけではありませんよ。近くに仲間は居ます。
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