JIS A 9501 保温保冷工事施工標準の計算表を使った、ちょっとした応用です。
以下の記事を先にご覧ください。
ここで保温材単価や熱量単価という単価の情報が入っています。
保温材の最適厚みを計算する時に、これらの単価の情報に依存する部分があるので、最適厚みは固定ではなく定期的な見直しをする価値はあります。
簡単にパラメータを振って確認してみましょう。
配管外径と保温厚みに対するコスト比較
配管外径と保温厚みを変えたときに、コストがどう変わるかを最初に考えましょう。
条件は以下の通りです(前回と同じ)
- JIS G 3452 SGP配管の外径
- 周囲温度 20℃
- 表面熱伝達率 12W/(m2・K)
- 年利率 5%
- 使用年数 15年
- 熱量価格 5円/(kWh)
- 年間使用時間 4000時間
横軸に配管口径(A単位)をとり、縦軸に保温厚みを取りましょう。
この場合の、合計コストはJISの計算によると以下の通りになります。
千円 | 15 | 20 | 25 | 40 | 50 | 80 | 100 |
15 | 847 | 977 | 1137 | 1478 | 1753 | 2413 | 2993 |
20 | 977 | 1112 | 1278 | 1630 | 1915 | 2596 | 3194 |
25 | 1160 | 1305 | 1482 | 1859 | 2163 | 2892 | 3532 |
30 | 1389 | 1545 | 1737 | 2146 | 2477 | 3267 | 3962 |
40 | 1966 | 2151 | 2378 | 2863 | 3255 | 4193 | 5018 |
配管口径が大きいほど、保温厚みが大きいほどコストが高いという結果になります。
先に結論を言うと、保温材施工単価 > 熱量単価 という前提条件が成立しているために、この結果が得られます。
1から計算をすればこの結果は得られますが、他の人が実施した結果だけを見ると分からないでしょう。
保温単価が変わった時
保温単価を2,240千円と設定していますが、10倍の22,400千円になったとしましょう。
この場合の結果を示します。
千円 | 15 | 20 | 25 | 40 | 50 | 80 | 100 |
15 | 4192 | 4824 | 5604 | 7275 | 8636 | 11902 | 14779 |
20 | 6045 | 6849 | 7841 | 9967 | 11699 | 15856 | 19517 |
25 | 8255 | 9235 | 10446 | 13040 | 15153 | 20227 | 24695 |
30 | 10814 | 11974 | 13405 | 16476 | 18976 | 24981 | 30269 |
40 | 16964 | 18486 | 20366 | 24400 | 27684 | 35575 | 42525 |
10倍にする前から保温材施工単価 > 熱量単価であったので、10倍にしたときにはその差がさらに顕著になります。
熱量単価が変わった時
熱量単価を5円/kWhで設定していますが、10倍の50円/kWhになったとしましょう。¥
千円 | 15 | 20 | 25 | 40 | 50 | 80 | 100 |
15 | 5120 | 5927 | 6907 | 8981 | 10653 | 14641 | 18139 |
20 | 4700 | 5384 | 6214 | 7959 | 9361 | 12697 | 15616 |
25 | 4507 | 5119 | 5857 | 7404 | 8644 | 11586 | 14156 |
30 | 4461 | 5026 | 5707 | 7129 | 8267 | 10960 | 13309 |
40 | 4661 | 5177 | 5796 | 7088 | 8118 | 10551 | 12668 |
保温材施工単価 < 熱量単価ですので、最適保温厚みが求まります。
15A~25Aは保温厚み30mmが最適であることが分かりますね。
40A以上だと40mmが最適に見えますが、50mmの方が最適かも知れません。
気になったら、50mmの計算もしてみても良いでしょう。
保温厚みを大きめに取りたい
最適計算上は保温厚みを選べますが、個人的には保温厚みは少し厚めにしておきたいです。
- 運転条件が4000時間以上運転することがある
- 運転温度がより厳しい側に移行する場合がある
- 15年以上使うことが多い(メンテナンスできない)
プロセス条件や運転条件が完全に固定化されている、という前提が付いているのが最適計算です。
15年での一式交換というのも非現実的でしょう。
ですので、少し余裕を見たいと個人的には思っています。
参考
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最後に
最適保温厚みの計算を現場に応用するために、保温単価と熱量単価のパラメータを少し変えてみました。
保温単価<熱量単価であると最適保温厚みが算出されます。逆だと保温厚みが小さいほど有利という結果になります。
最適計算に縛られずに、運転条件の振れを考慮して、余裕を持った設計をしたいですね。
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