グラスライニング反応器のオプションに関する話です。
汎用性が求められるグラスライニング反応器は、標準形で統一していく方が好ましいです。
その標準も、時代が変われば変わっていきます。
使う場所によっては、特殊性が必要となることもあるでしょう。
何をもって標準とするのか、標準以外にどんな選択肢があるのかを整理しておくと、選定時に楽になります。
グラス
グラスの種類は、グラスライニングで最も悩まないといけないもの。
標準
グラスライニングメーカーは標準グラスを設定しています。
型式に相当するグラス番号を整理しておきましょう。
神鋼環境ソリューション | 9000 |
NGKケミテック | 3009 |
GL HAKKO | 200 |
グラスライニング設備を良く購入する人は、自然とこの番号を暗記していると思います。
番号を暗記していると図面を見ただけで、標準かどうか判定できるので、特に設備改造や保全の段階で活躍します。
標準外
標準外のグラスは、グラスに+αの機能を持たせようとしています。
本来の耐食性を若干犠牲にしたり、コストなどを犠牲にしたりする可能性もあるので、本当にその機能が大事という場面でない限り、選ばない方が無難です。
例えば、以下のような機能を付与することが可能です。
- 静電気防止
- ナトリウム溶出防止
- 耐アルカリ性向上
- 伝熱性向上
- 視認性向上
例えば異物混入を嫌って、ナトリウム溶出防止で統一するなんてプラントも存在すると思います。
逆に静電気・耐アルカリ・伝熱性などは使う局面が限定的になるでしょう。
色
グラスの色は一般に紺色です。
あまりにも当然のように思ってしまいますが、他にも選択肢があります。
それが水色系と白色。
紺色のグラスで作られた反応器は、中が結構見ずらいです。
明るい色のグラスにすることで、内部の状況が見やすくなったり、異物の有無を確認出来たりするメリットがあります。
異物混入を嫌うプラントでは、白色で統一していたりしますね。
撹拌翼の形
撹拌翼の形は、反応器を選ぶ時のとても大きな要素です。
細かく分類すると各社もっと種類はありますが、基本は以下の3種類です。
- 三枚後退翼
- 二枚板翼
- 高粘度向け
三枚後退翼は昔の標準でしたが、今ではかなり少なくなりました。
それでもニーズは残っているので、完全に製作停止になることはないと思います(信じています)。
現在の標準は二枚板翼でしょう。
軸封
軸封は主に以下の2つから選べます。
- ドライシール
- メカニカルシール
昔はグランドシールが標準的ですが、さすがに現在の新規品でグランドを選ぶことはないでしょう。
標準はドライシールでしょう。
メカニカルシールは異物混入のリスクがあるので、高圧向けなど限定した使い方をします。
ダブルメカニカルシールとドライシールの両方の機能を持たせたものも、開発されています。
マンホール
マンホールは以下の2つが主なオプションです。
- クランプタイプ
- 軽開閉タイプ
標準はクランプタイプです。
気密性を確保するためにも、マンホール全周を多くのクランプで挟み込みます。
クランプの数が多く開閉に時間が掛かるので、簡単に開け閉めできるタイプが開発されています。
操作性を重視する代わりに、耐圧性を犠牲にしています。
低圧でしか使用できないので、意外と使えない場面もあるでしょう。だから、標準として設定しにくいです。
他にもガラスの大きさや設置位置を考えたタイプもありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。
マンホールノズルのガラスは、グラスライニング設備でも特に壊れやすい部分です。マンホールのオプションを選定する時には、この点も意識したいですね。
排出弁
排出弁もいくつかの選択肢があります。
- 温度計を付けるか付けないか
- 自動(エアー駆動)もしくは手動
標準的には温度計を付けて自動化すると良いでしょう。
温度計はたとえその容器では使わなかったとしても、別の場所に移すと使うことがあります。あった方が良いでしょう。
同じようにエアー駆動も、手動ハンドルを併設することが可能なので、汎用性を上げることができます。
シールも種類がありますが、ベローズにするのが無難でしょう。
温度計保護管の先端
温度計保護管は、液に浸かる部分なので選択肢があります。
グラス一体化とタンタルチップの2つです。
標準はグラス一体化でしょう。
タンタルチップだと伝熱性を上げることはできますが、ガスケット劣化による漏れのリスクがあがります。
温度計で測れる温度データは、装置内の一点しか測定できないので、代表点になっているかは微妙となります。
運転上重要なデータで測定値を基に条件判定をするので、運転開始時は実験データを判定条件に設定します。
ところが、実機では測定点の問題もあって、実験データと多少のずれがあります。
ここで、伝熱性の違いも誤差として載ってきます。
それらを含めて、運転では温度計の指示値を条件判定にします。
例えば、水は100℃で沸騰しますが、実機では102℃という指示値でようやく沸騰するかもしれません。ここで、温度が101℃になっても沸騰しなければ何か異常があるから、工程を止めるというプログラムを組んでしまうと困ります。この場合は、103℃など設定を変えればOKという考え方です。
参考
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関連情報
最後に
グラスライニング反応器のオプションを比較しました。
グラス種類・撹拌翼の形・軸封・マンホール・排出弁・温度計保護管の先端が主に選べます。
標準化はしにくい部分がありますが、標準とそれ以外のメリットデメリットを理解して、担当プラントで適切な選定ができるようになりたいものです。
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