塔(tower)で起こるガスケットの片締めについて解説します。
連続プラントのような大きな塔であれば、自ずと考えられていることですが、バッチプラントでは意外と注意してなかったりします。
いろいろな背景があって、現場では対応がとりにくいという場合もあります。
それでもできる対応は、全部取っておきたいのがプラントエンジニアというもの。
この記事を読めば、問題の捉え方や対策の取り方のエッセンスを知ることができます。
片締め
塔のガスケットで片締めというのが、どういう現象なのか見ていきましょう。
バッチプラントで見かけるレベルの塔は、以下のような形状をしています。
細長い塔が複数のフランジを繋ぎ合わせた構造をしていて、間をガスケットではさんでいます。
塔の上部と下部はそれぞれ配管で接続されています。
このガスケットは、通常はフランジ全周に渡って均一に力が加わります。
何らかの理由でフランジ面が傾くと、ガスケットの特定の場所だけに力が掛かってしまします。
これを片締めと呼んでいます。
片締めは、塔に限らずガスケットを使う限りは発生しうるもの。
これが塔で特に顕著なのは、塔が細長い構造をしているから。
例えば、下の図の赤の部分はプラント建屋としっかり固定されていたとしましょう。
固定して、地球に対してしっかり平行や垂直が出ているから、上部の塔も同じように平行や垂直が出ていて安心!
というわけにはいきません。
装置は完全な平行や垂直が出ているわけはないので、長手方向に進むほど誤差の影響が出てきます。
特に塔の最頂部は最も誤差が大きくなります。
塔を設置した後で、最長部の平行度を測定して調整するわけでなく、配管をくみ上げていき、その配管はしっかり平行を出そうと努力します。
平行が出ていない塔と、平行が出ている配管を繋ぐと・・・片締めとなります。
伸縮継手
片締めを起こさないための対策の、現実的な方法は伸縮継手です。
この図のように塔の上部と下部に伸縮継手を付けます。
塔自身が傾いていても、伸縮継手の伸び縮みでズレを吸収しようというもの。
成功する確率は高いですが、以下の点は気を付けましょう。
伸縮継手の耐熱温度が低くて、壊れる
伸縮継手の寿命が短く、気が付いたら割れている
伸縮継手の長さが短く、ズレを吸収できない
定期的な交換が必要になるでしょう。
ガスケットの種類
ガスケットの種類を適正なものに変えることは、1つの手です。
とはいえ、これも限界があります。
特にバッチプラントの場合はガラスライニングやセラミックなどの特殊な材質を使うために、ガスケットは柔らかいものを選ばないといけません。
片締めに弱くなる方向なので、ガスケットの適正化は完全な答えとはなりにくいことに注意しましょう。
良くない対応
他の片締め対応は、意外と成立しません。
いくつか紹介しましょう。
配管を傾ける
配管を水平に付けようとするから片締めが起きるという場合、配管そのものを傾けて設置する案が考えられます。
塔の上部は配管のサポートを付ける場所がないので、塔自身にサポートを取れるようにすることは多いです。
結果、塔と上部の配管は平行・垂直のズレが起きにくくなります。
しかし、塔直近の配管は良くても、その後の配管とのズレは起こりえます。
全部品を垂直に付けようとする
塔がズレてしまうなら、塔を何とか垂直に付けようと頑張ります。
この場合、以下の条件を付けないといけません。
- 塔の全部品にブラケットを付けて、建屋と据付できるようにする
- 建屋の各階の水平がしっかり出ている
- 設備や配管が付いた後でも、建屋は傾かない
実は結構厳しい条件です。
塔の全部品にブラケットを付けること自体が厳しいです。
各部品の長さが5mくらいの大きな分割の仕方ができるなら問題になりにくいですが、材質によっては2m程度で区切らないといけません。
2mごとにブラケットを付けると、配管ノズルを取ることが難しくなります。
ブラケットを支える建屋の構造を作るにも、高さが不足することも。
吊り架台などを付けて対応する場合には、その部材の傾きが他の部分と同じくらいかをチェックしないといけません。難しいですね。
また、塔のような細長い装置を付けようとしたら、建屋は高くなります。
コストを抑えるために、建屋面積はできるだけ小さくしたいでしょう。
そうすると建屋の重量に対して塔の重量が相対的に高く、装置を付けて運転することで建屋が若干傾いていく可能性があります。
部分的に垂直に付ける
塔の全部品を均一に垂直に付けることができない場合、部分的に付けることを考えます。
建屋と塔のブラケットを垂直に取り付けて、ブラケットのない中間部分は塔のフランジだけで接続します。
全部品を頑張って垂直を出すよりは、可能性は高くなります。
しかし、この場合でも塔の部品自体の水平や垂直がちゃんと出ていないと、片締めが起こりえます。
金属系の塔の場合は、この辺りをしっかり調整するため問題になりにくいです。
一方で、ガラスやカーボンの場合は、部品ごとの調整が取りにくいので、片締めになりやすいです。
相マークを付ける・塔組立後に全部品の水平/垂直度をしっかり確認する、といった対応でリスクをさげるしかないでしょう。
配管を強引に締める
塔は何とか垂直についたとしても、配管を取り付けるときに注意が必要です。
現地仮組時に、長さが微妙に間違っていても強引に取り付けようとしてしまいます。
塔のような細長い装置が相手なら、配管と塔を強引に付けた結果、塔が傾いてしまう場合があります。
このリスクを下げるためにも、伸縮継手は使いたいですね。
参考
関連記事
据付についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
塔のガスケットの片締めに付いて解説しました。
金属系の塔ではなくガラスやカーボンを想定しています。
細長部材で、水平垂直をしっかり出さないとガスケットの片締めが起こりえます。
伸縮継手を付けたりガスケットの種類を適正化したりすることが対応になるでしょう。
頑張って垂直を出そうとしたら、どこかに無理が出てしまいかねません。
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