高所に設置された配管は、メンテナンスの難しさから後回しにされがちです。しかし、メンテナンスを意識しない設計のまま40年以上使用すると、思わぬトラブルや劣化が進行します。
化学プラントだとプラント内部の配管の設計を考えることはあっても、保全を特段意識することはありません。
壊れたら直す。基本はこの考え方です。
プラント外の配管スタンド上にある高所配管も、工場として思想が無いと同じ設計やメンテナンスの思想になります。数年レベルでは問題にならなくても、40年~50年先には問題になるような爆弾を抱えることになりかねません。
本記事では、実際に40年経過した高所配管の問題点と、それを踏まえたメンテナンスの重要性を解説します。
鉄の配管
鉄(SGP)の配管は、例えば蒸気などユーティリティ向けに使用します。
断熱付かない配管として水・排水なども鉄の配管を使います。
プラント内部なら耐食性を考えてSGPで十分という発想になったとしても、プラント外部にそのまま展開するのはやや危険です。
プラント外部の高所にある配管はメンテナンスができなくなり、漏れたときには修理に時間が掛かってしまいます。
ですので、私は鉄の配管をプラント外部に敷くことは基本的に賛成しません。
ステンレスの配管にする方がよっぽと経済的にメリットが出ます。
初期の投資費用は、ステンレスの方が高いから鉄の配管で計画されやすいですが、近視眼的です。
投資判断する人も目の前のことしか考えていない場合、とりあえず鉄の配管で・・・となってしまい、問題が起きたときになって初めて「どうしよう・・・」と慌てます。
自分が任期の時に問題が起きないように祈り、起きたら起きたで時間を掛けて少しずつ直していくしかないので、その時には任期が切れる。
こういう逃げの戦略が見え隠れします。
ステンレスの配管
ステンレス配管は耐食性が求められる内容物に対して、選定されます。
プラント外であれば、ユーティリティもステンレス化してしまう方が良いと思っています。
すなわち、プラント外はステンレス配管が大多数となるような考え方です。
ユーティリティ系など大多数の配管はSUS304で、よりレベルを上げたいならSUS316Lというくらいのイメージ。
ステンレスという材質以外に配管施工として、以下のような配慮が可能です。
鉄の配管に比べれば、点検費用などのランニングコストが大きく下がります。
設置したときは気にしなかったランニングコストが、40年~50年と経ってくると発生します。
大口径の配管でステンレスにすると価格がぐっとあがるので、抵抗感が出るでしょう。
この場合は中口径の配管を何本か通すという考えがあっても良いかもしれません。
断熱付きの配管
断熱付きの配管は、鉄でもステンレスでも要注意です。
どちらにしても断熱内部で腐食が進む可能性があるからです。
とはいえ鉄の方が圧倒的に腐食速度が速いので、断熱付き配管こそステンレスにしたいです。
蒸気配管がイメージしやすいでしょう。
蒸気漏れはプラントを止めるほどではないですが、ロスは大きくなります。
フランジ接続にせずに溶接接続にして、断熱の接続や水漏れのリスクは少なくしましょう。
参考
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最後に
高所配管はメンテナンスの難易度が高いため、設計段階での配慮が重要です。40年の長期使用事例から、メンテナンスを無視した設計がもたらす問題点と、その解決策を理解し、今後の設備管理に活かすことが不可欠です。
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