フレキシブルチューブ(Flexible Tube)について簡単な選び方を解説します。
フレキシブルチューブは化学プラントの配管代わりにいろいろな場面で活躍します。
多くの化学プラントの設備や部品は結構前から新製品の開発が止まっている感がありますが、フレキシブルチューブは数少ない開発の見込みがある製品でしょう。
種類が多くて選び方に困っているエンジニアもいることでしょう。
フレキシブルチューブを選ぶ時の基本的な考え方をまとめました。
用途
フレキシブルチューブの用途をざっくり分けてみます。
フレキシブルチューブは振動を吸収する機能を持っています。
ポンプ・ブロアーなどの回転機器を動かすとき、配管と完全に固定してしまうとポンプや配管が壊れる恐れがあります。
特にグラスライニング配管は割れますし、フッ素樹脂ライニング配管は漏れる恐れがあります。
危険物タンクなどでは地震が起こったときの対策としてフレキシブルチューブを使います。
この場合は、消防法の認定を受けたフレキシブルチューブが必要ですので、購入するときはしっかり指定しましょう。
フレキシブルチューブは力の伝達を無くす機能を持ちます。
ロードセルの上にタンクを乗せる場合には、接続配管にはすべてフレキシブルチューブを付けて、ロードセルにはタンクと内容物の重量だけが掛かるように施工しましょう。
フレキシブルチューブは取り外しが多い場所にも使います。
例えば廃油や排水をドラム缶に充填するといった作業にも、接続部にフレキシブルチューブを使います。
エアー駆動式のダイアフラムポンプなどを使って、ドラム缶からタンクに送り込むときにも使います。
タンクに接続する窒素のラインにも、フレキシブルチューブを付けていると便利です。
仮の配管ルートを作成する場合にも使います。工場内でフレキシブルチューブが床や頭の上で組まれている場合、「何かトラブルがあったのだな」と簡単に予想できます。
接続位置に自由度を持たせることは、フレキシブルチューブやホースの類でしか対応できませんが、ホースだと割れるリスクが高いので、フレキシブルチューブの方が有利です。
構造
フレキシブルチューブの構造を簡単に解説します。
まず、フレキシブルチューブは下の図のような波打った形状のホースです。
この波の形状が、振動を吸収したり位置を変えたりする働きを持ちます。
フレキシブルチューブは曲げることが可能です。
どれだけ曲げることができるかという指標として曲げ半径があります。
配管設計上は、曲げ半径以上の無理のない曲げの範囲でくみ上げるように設計します。
振動が起こる場所でフレキシブルチューブを曲げてしまうと、結構問題になりやすいです。
材質
フレキシブルチューブの材質について解説します。
ステンレス
フレキシブルチューブの基本材質はステンレスです。
化学プラントでもよく使います。
構造的には、ステンレスのチューブに対して外側に補強材を付けます。
これをブレードと呼びます。
ブレードもステンレスで作ることが普通です。
フレキシブルチューブは可撓性というたわみ・曲げ・変形を実現する機能ですが、そのため肉厚を犠牲にして強度を下げています。
これを補強する意味でブレードを付けます。
ブレードが無いフレキシブルチューブは不安でしかありません。
PTFE波型
フレキシブルチューブはPTFEで作ることも可能です。
このように、PTFEのチューブとステンレスのブレードで形成します。
チューブの波の形状が、液溜まりの原因となります。
化学プラントでは結構嫌がります。
PTFEストレート
PTFEは液溜まりを無くしたストレートタイプも存在します。
20号タンクのフレキシブルチューブなどこちらのタイプを液のラインには使います。
その代わり、曲げる性能が損なわれます。
曲げたい場合は波型・液をためたくない場合はストレート、と使い分けます。
口径
フレキシブルチューブの口径は20A~100Aくらいが限界だと個人的には思っています。
特に、25A・40A・50Aが多いでしょう。
口径が20Aより小さいと折れる可能性が高く、100Aより大きいと取り付け取り外しが難しくなります。
工場によっては100A以上でも使っているかもしれませんが、普段使っていない工場で20A以下・100A以上などの極端なサイズを使う場合は、メーカーと相談しましょう。
長さ
長さはメーカーによって差があります。
20~30mも製作可能なメーカーもあります。
消防認定のフレキシブルチューブは厳しい制約があります。
長くても3m程度です。
取り扱い上・交換等の作業性を考えると、5mくらいまでを限界とする方が良いと思います。
接続
接続方法は数パターン存在します。
- フランジ
- ねじ込み
- フェルール
- カプラ
- カムロック
化学プラントの場合、漏れを嫌うので確実なフランジ型がとても多いです。
ねじ込みはほぼ使いません。
フェルールは取り外し頻度が高い場所などに限定して使います。
医薬系ならフェルールが多いイメージですが、化学プラントではあまり多くはありません。
カプラ・カムロックともに取り外しの作業性を考慮した接続継手です。
頻繁に取り外しがある場合は、こういう継手を活用しましょう。
参考
最後に
フレキシブルチューブの化学プラントでのかんたんな選び方を紹介しました。
振動・地震・力の伝達を吸収したり、位置を変えたりする目的で使います。
ステンレス製かPTFE製かに大きく分かれます。
曲げやすさか液溜まりの度合いかを選択する形になるでしょう。
漏れ防止のフランジ接続と取外し性を考慮したカプラ・カムロック接続も使い分けをします。
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