配管のフランジ(Flange)形状は、RFとFFの2種類があります。
知らなくても意外と何とかなってしまいますが、プラントの機械系エンジニアを名乗るうえでは知っておきたい知識です。
私は、RFとFFの違いを明確に意識して仕事をしたことはありません。割とどうでもいいです。
ですが、意識したことがないということと、違いを知らない・分からないというのは別のことです。
1つ上の知識を習得してエンジニアとしてステップアップするために、知っておいた方が好ましいでしょう。
フランジとパイプの接続
まずはフランジとパイプの接続関係に着目します。
大きく3つの種類があります。
それぞれの特徴はざっくり言うと以下のとおりです。
- 差し込み溶接 シンプル
- 突き合わせ溶接 強度
- ルーズフランジ コスト
差込み溶接
差込み溶接はフランジ形状が普通の円板でシンプルな構造をしています。
バッチ系化学プラントでは非常に良く使います。
何と言ってもシンプルですからね。
突合せ溶接
突合せ溶接はフランジに「首」が付いた構造です。
石油化学系でよく使うようです。
理由は「強度が高い」から。
- 差し込み溶接に比べて溶接が少ない
- 配管と同じように溶接が可能
差し込み溶接は、内側の溶接がある分だけ面倒で手間が掛かります。
ルーズフランジ
ルーズフランジはスタブエンドという「つば」をパイプと溶接します。
フランジ自身は溶接をしていなくてルーズな位置関係にあります。
ルーズフランジはスタブエンドとセットで使います。
ルーズフランジはスタブエンドやパイプよりも材質を落とすことができるのは、1つのメリットです。
ステンレスの体積を小さくすることでコストを下げることができます。
また、ルーズフランジにすると配管やフランジの角度調整が簡単にできるので、配管の製作誤差を吸収することも可能です。
フランジの形状
次にフランジの形状について解説します。
4種類取り上げますが、大きく2つに分類できます。
- FF/RF 標準
- MF/TG 高圧
バッチ系化学プラントクラスの低圧環境下では、この2つが使い分けできていれば問題ありません。
平面座・全面座(FF・RF)
平面座・全面座という表現をします。
RFとFFのフランジという言い方もするでしょう。
バッチ系化学プラントでは使い分けは基本的にしません。
鉄系なら全面座・ステンレス系ならルーズフランジなので必然的に平面座でシールすることになります。
ルーズフランジそのものは全面座ですが、スタブエンドがある分だけ平面座の扱いになりますね。
はめ込み型・みぞ型(MF・TG)
最後に、フランジとシール材の形状関係を紹介します。
一番左の形状が最も標準的な形状です。
シンプルな円板のフランジに、シンプルな円板のガスケットを挟み込みます。
これがスタンダード。
真ん中の形状は「はめ込み型」といいます。MFとも言いますね。
MはMale、FはFemaleの意味です。
ガスケットの当たり面を小さくして、小さい力でも締付圧力を確保することができます。
高圧の配管など気密性を高く取りたい場所に対して使います。
右の形状は「みぞ型」と言います。TGとも言います。
MFよりも強力に密閉したい場合に使います。
このあたりのガスケットになると渦巻型ガスケットを使うこともあります。
バッチ系化学プラントではTGはおろか、MFですらほとんど使いません。
フランジとガスケットの関係
フランジのRFとFFを考える場合、フランジとガスケットの関係を考えると分かりやすいです。
ガスケットの種類を最小化するために、バッチ系化学プラントではフランジのRFとFFに関係なく、同じサイズのガスケットを使います。
フランジの違いとガスケットとの関係を見ていきましょう。
ガスケットは化学プラントの配管設計でとても大事です。
詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
①RF(平面座)
RF(平面座)は下の図のように、フランジ面に凸部があります。
簡単にするため、ガスケットとフランジ面を同じサイズにしています。
RFのフランジ当たり面 = ガスケット
と考えています。RF形状として、この図のようなパターンはレアでしょう。実際には、
RFのフランジ面 > ガスケット
の関係になります。
②ルーズフランジ
ルーズフランジとガスケットの関係を見ておきましょう。
RFフランジの時と比べて、フランジ側の内径部がちゃんとフラットになっている場合があります。
この場合は、
ルーズフランジのフランジ面 > ガスケット
となりますが、先に述べた通り誤差範囲です。
③FF(全面座)
FF(全面座)の構造も見ていきましょう。
こちらは当然ながら、以下の関係があります。
FFのフランジ面 > ガスケット
RFタイプ(ルーズフランジも含める)とFFタイプの違いはガスケットの当たり面にありますが、ガスケットの寸法を変更しない限り、同じ締め付け力でボルトを締めるとガスケットに加わる締め付け圧力は変わりません。
RFフランジを意図して適切に運用しようとすると、ガスケットを適正に選ぶ必要があります。
フランジのFFとRFの差
汎用的なフランジにFFとRFの2つがありますが、使い分けはどうするでしょうか?
疑問でしょう。
簡単ですが、バッチ系化学プラントではFFとRFの差は気にしません。
私も10年以上この仕事をして、差を意識したことは全くありません。
形状が違う以上は性質が違うのですが、その差は微々たるもの。
その差を以下で説明します。
締め付け面圧が違う
フランジのFFとRFでは、締め付け面圧が違います。
当たり面積が違う
RFとFFで違うのは、ガスケットの当たり面積です。
ちゃんとガスケットを挿入できていれば、RFとFFでガスケットの当たり面積は変わりません。
そんなにきれいにガスケットを挿入できるとは限りません。
ガスケットが微妙にずれたときに、RFではガスケットの当たり面積が小さくなる可能性があります。
「ガスケットが微妙にずれたとき」という条件が入っていますが、確率的にはかなり高いです。
確率は高いものの、影響度は非常に低いです。
というのも、ガスケットがずれる範囲が限定されているからです。
ガスケット外形とボルト穴の間でしか、ガスケットはずれません。
丁寧な作業者は、1つ1つの配管取付時にガスケットを丁寧にセットします。
化学プラントの運転員でもこれはしっかり守る人が居ます。
若い人ほど雑につけている傾向があります。
それでも、漏れは起こっていません。
理想的なガスケット挿入状態
まずは理想的なガスケット挿入状態を考えます。
下の図を見てみましょう。
FF
RF
赤色の部分がガスケットです。
FFでもRFでもガスケットの当たり面の前面にフランジが当たっています。
この状態が維持できれば、FFでもRFでも差はありません。
この状態が維持できればというところが、今回のポイントです。
ガスケットはズレて挿入することがある
ガスケットはフランジ面と完全に中心が同じになることはかなり難しいです。
下の図を見てみましょう。
このように、フランジとガスケットがズレてインストールされることがありえます。
こうなると、ガスケットにはせん断力が加わります。
ガスケットがズレる理由
ガスケットがフランジ面とズレる理由を説明します。
下の図を見てみましょう。
ガスケットがズレやすい場所は以下の場所です。
- 水平配管のフランジ
- 垂直配管のフランジで、2つのフランジの中心がずれている
- 高所配管のフランジ
作業しにくい場所がズレやすそうな気もしますが、意外にも水平配管でズレやすいです。
これは、高さの問題ではありません。
水平配管にガスケットをインストールする場合、以下の工程を行います。
- 3本のボルトを仮セット
- 残りの1本の空間からガスケットを挿入
- 残りの1本のボルトを仮セット
- ガスケットの位置を薄い鉄板やマイナスドライバーで持ち上げる
- 4本のボルトを締めていく
横着な作業者だと、4の工程を省略します。
「ちょっとくらいズレていても良いだろう」
こう考える作業者は若手を中心に増えています。
費用対効果をドライに考えると、これは正しいです。
ガスケットがズレても、確かにあまり大きな問題にならないです。
ですが、この思考だと1つ1つの作業を疎かにすると、どこかで事故が起こるということに気が付いていません。
50Aで2mm程度ズレる
FFとRFでガスケットのずれはどれくらあるでしょうか?
簡易計算をしてみます。
50AのFFとRFでガスケットは2mm程度ズレる恐れがあります。
RFフランジがメーカーによって差があるので、参考程度の扱いにしてください。
RFフランジ外周面とボルト穴内径部の距離が片側2~3mmあるからです。
50Aフランジのガスケット当たり面が、片側10~15mm程度なので、2~3mmのガスケットのズレは、当たり面積で20%程度のズレとなります。
20%程度の当たり面積が小さくなると、ガスケット締付圧力も20%変わるので、ガスケットが壊れる可能性としては十分に考えられます。
ボルトの締付力は同じ
フランジがRFであろうがFFであろうがボルトを締め付ける力は同じです。
作業者がフランジ面を見て冷静に判断してから、ボルトにかける力を変えることはしません。
締め付け面圧はRFの方が大きい
フランジがRFの方が、FFよりも締め付け面圧が高くなる可能性があります。
上で述べたロジックを整理しましょう。
- 当たり面積はRFの方が高い可能性がある
- ボルトの締付力は同じ
締め付け面圧 = ボルトの締付力 / 当たり面積
という関係があるから、当たり面積が小さいほど締め付け面圧が高くなる、という論理です。
あくまでもバッチ系化学プラントでは「可能性がある」という程度です。
配管内圧が小さい
バッチ系化学プラントで取り扱う内圧は非常に低いです。
フランジ形状が違って、締め付け面圧が違うとしても、配管内圧 < 締め付け面圧を維持できていればOKです。
バッチ系化学プラントではJIS10kのフランジが9割9分以上です。
JIS10kなので1,000kPa以下での取り扱いです。
配管内圧も500kPaを越えることはありません。
RFフランジには不連続部分
RFのフランジには不連続部分が存在します。
下の図を見てみましょう。
これはFFフランジには存在しません。
不連続部分には、少なからず応力集中が起きます。
不均一な応力が掛かります。
この影響がガスケット側にも微妙に出ます。
ガスケットのFFとRFの差
フランジの形状には、FF(全面座)とRF(平面座)があることを紹介しました。
これと同じで、ガスケットにもFFとRFの違いがあります。
FFガスケット
FFガスケットはボルト穴があるため、以下の使い方が可能です。
- 真空配管でガスケットが引き込まれないようにする
- 遮断板代わりに使う
- 配管とガスケットのズレがほぼない
「真空配管」では、特にPTFE被覆ガスケットのPTFE被覆部が、真空ポンプ側に引き込まれるトラブルが起こりえます。
PTFE被覆でも外周を縫ったり・溶着すれば対応可能ですが・・・。
PTFE無垢ガスケットでも、引き込まれる恐れがありそうなら、ボルト穴を引き込まれに対する「支え」代わりに使うことができます。
「遮断板」とは、こちらのように内周部に貫通穴が無いタイプです。
内周部がないタイプ自体は、RF型ガスケットでも制作可能です。
FF型ガスケットにすると、配管外面からFF型ガスケットが挿入されていることが分かりやすいというメリットがあります。
遮断板が入っているかどうかの確認は、運転上非常に重要です。
その確認を容易にするために、FF型ガスケットのメリットを使うことが考えられます。
遮断板をRF型でセットすることも不可能ではありませんが、FF型の方が「配管とガスケットの芯ずれ」が起きにくいです。
シール性の信頼感を上げるためにも、遮断板にFF型を使うケースは多々あります。
RFガスケット
FFガスケットにはボルト穴が付いています。
逆にいうと、RFガスケットは、ボルト穴がついていません。
ボルト穴のあり/なしでどんな影響があるでしょうか?
RFガスケット側のメリットとしては、以下が挙げられます。
- 費用が安い
- 取外しが簡単
- PTFE被覆ができる
「費用が安い」はRFガスケットの方が面積が小さいから当然でしょう。
「取外しが簡単」は、4本ボルトのうち3本外せば、ガスケットが取り外せるという意味です。
FFガスケットではボルト穴があるため、4本ボルト全てを外さないと、取り外しできません。
「PTFE被覆ができる」というのはバッチ系化学プラントの特徴でしょう。
PTFEの無垢ガスケットのみで対応できるぎ業界なら、ここで悩む必要はありません。
グラスライニング・フッ素樹脂ライニングが多いバッチ系化学プラントではPTFE被覆ガスケットの需要が高く、
RFガスケットの需要も高いです。
PTFE被覆では、ボルト穴を作ることが難しいですよね。
- FFガスケット相当の面積のPTFE被覆ガスケットを作り
- ボルト穴を開け
- ボルト穴の周りを、PTFEで覆う。
こういう工程が入ってきます。
ガスケットとフランジの対比
ガスケットとフランジのRFとFFの比較を整理しておきましょう。
タイプ | RFガスケット | FFガスケット |
RFフランジ | 一般用途 | 普通は使わない |
FFフランジ | 一般用途 | 遮断用 |
RFガスケットが一般的なので、フランジがFFでもRFでも、使用頻度は多いです。
一方、RFフランジに対してFFガスケットは、私はあまり見たことがありません。
FFフランジ部にFFガスケットを挿入するシーンの方が多いです。
RFフランジにFFガスケットを付けても、バッチ系化学プラントでは問題ないと思いますが…。
FFガスケットは特殊
FFガスケットが特殊であり、RFガスケットが普通。
FFガスケットは「全面ガスケット」などの呼び方をすることもあります。
特殊なガスケットという位置付けです。
ライニングフランジはRF?
ライニングは例えばガラスやPTFEを対象にします。
フランジの当たり面はRF相当
ライニング後のフランジの当たり面はRF相当になります。
フランジのボルト穴より外側までライニングする必要がない、という方が正しいでしょうか。
フランジ全面をライニングすると、ガスケットやボルトも全面対応を考えないといけません。
ガスケットはPTFE無垢、ボルトは高耐食性金属など。
ライニング機器はバッチ系では特殊ではなく、むしろ一般的な物なので、そこにフランジの規格やガスケット・ボルトを特殊にするという方が思想がずれています。
フランジ母材はFF
そもそもRFフランジの方がFFフランジより若干金額が高いです。
例えば、SUS304 JIS10k 20AでFFなら900円くらいですが、RFなら990円くらい。
約10%も単価アップ。
これは大きい。
この時点で、バッチ系では選ぶ必要がありません。
ステンレス配管のフランジを、スタブエンド+ルーズフランジにするような思想なら、フランジについても仕様上問題なく安いFFにすべきでしょう。
ライニングをする立場に立ってみても、これは当然の話。
ライニング端面の処理をするときに、フランジのRF部が邪魔になるからです。
フランジがRFだと、フランジのRFとライニングの端面を合わせるための加工が必要になります。
手間が一つ増えてしまいます。
ステンレスの盲フランジに全面ガスケット
ステンレスの盲フランジにドーナツ型ガスケットを使う場合と鉄の盲フランジに全面ガスケットを使う場合の2種類があります。
これは全面ガスケットが万能でないという意味。
鉄の盲フランジに全面ガスケットを付ける背景を考えてみましょう。
RFはコストが低い
盲フランジ全体をステンレスにすれば、当然高価です。
だからこそ鉄の盲フランジに、ステンレスをライニングすることを考えます。
極めて基本的な思考方法です。
RFは締め付けトルクが小さい
RFはFFよりも当たり面積が狭いので、小さな締め付けトルクでも、ガスケットの圧縮をさせることができます。
その意味で、RFはFFよりも有利です。
こう考えると、ステンレスの盲フランジは、鉄の盲フランジにステンレスをRF上にライニングするしか方法が無い、という結論に至ります。
なんとなく、「ステンレスの盲フランジにはライニング!」というだけとは異なる、原理原則を考えるとはこういうことを指すのだと思います。
配管のバイブル
配管フランジについてもっと知りたい場合、配管に関するバイブルから手を付けると良いでしょう。
まずはプラント配管ポケットブックから始めましょう。
各種部品に対して図がちゃんと書いてありますので、今回のRF-FFの違いも分かると思います。
違いが分かった瞬間に使いやすくなるのが本書です。
関連記事
フランジについてさらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
最後に
バッチ系化学プラントで使う配管フランジ形状についてまとめました。
フランジとパイプの接続やフランジの種類について解説した上で、フランジのRF・FFについてまとめています。
ガスケットのRF・FFやライニング・盲フランジなども関連情報として記載しています。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。