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RCM(Reliability centered maintenance)の化学プラントでの考え方

RCM 保全
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RCMという保全方式について解説します。

TBM,CBM,BMという3大保全方式に変わる4大目というわけではなく、さらに深堀した方法だと考えれば良いでしょう。

メンテナンス業界としては目新しい方式ではありませんが、社内のメンテナンスに四苦八苦しているとこういう情報をキャッチできないまま、時代が過ぎ去っていきます。

かくいう私の職場も全く同じで、TBMやCBMという用語ですらこの10年で浸透してきたイメージです。

RCMという考え方を知らずに社内で議論しているうちに、必然的にこの考え方にたどり着いた感じがします。

確立させるには、担当者のマインドを変える大きなリーダーシップが必要となるので、相当の時間が掛かることでしょう。

RCMとは

RCMとはReliability centered maintenanceの略で、信頼性中心保全という日本語です。

機器の信頼性を高め、最適な保全方式を選択するための管理方式、という良く分からない説明を聞いたことがあります。

1960年ごろにアメリカで飛行機をターゲットに研究プロジェクトを組んだのが、RCMの出発点です。

TBMやCBMという概念が浸透していく中、設備の高度化が進んでいき、管理データが非常に膨大になっていきました。

CMMSやEAMという管理システムが導入されたのもこの時代。

データ管理が膨大になっていき、判断する人間がカバーできなくなっていきます。

そこで、RCMという考え方に移行。

RCMは私の中では以下の定義で考えています。

RCMは部品レベルでTBMやCBMを決めていき、優先度を設定する

RCMの5ステップ

一般に、RCMは以下の5ステップで実施します。

  1. 故障データの収集
  2. 対象機器の設定
  3. FMEA(故障モードの解析)
  4. 保全方式の選択
  5. 保全計画

FMEAとか難しそうな名前が出てきますね。

渦巻ポンプを例にしましょう。

故障データの収集

プラント全体で発生する故障データを集めていきます。

  1. 渦巻ポンプの故障
  2. タンクの腐食
  3. 熱交換器の漏れ
  4. フィルターの破損
  5. 配管の腐食
  6. ガスケットの漏れ
  7. ボルト破損

化学プラント全体を1つの装置と見なし、装置内で起こる故障データを拾い上げていきます。

プラントレベルだと様々な設備での分割が必要でしょう。

これを拾い上げて、体系的に仕上げていくだけでも相当の労力が必要です。

プラント全体でこういう議論ができている会社は、非常に少ないでしょう。

対象機器の選定

対象機器の選定を行います。

プラント全体を俯瞰してみて、壊れるとリスクの高いものを選ぶというステップになります。

考え方はいくつかありますが、以下の基準が分かりやすいでしょう。

  • 故障する部品が複数ある
  • 故障しやすい
  • 設備一式の交換費用が高い

今回の場合、腐食性が高い薬液は扱わず、タンクや熱交換器の点検はほぼ不要というプラントを考えています。

動機器である渦巻ポンプが相対的に故障リスクが高いという理由だけで、RCMの対象にしました。

実際のプラントではもっと優先度の高い設備があるでしょう。

例えばバッチ系化学プラントなら反応器を対象機器に選ぶと良いでしょう。

FMEA

FMEAを行います。

機器の部品ごとに起こる故障モードを網羅的に整理します。

ここでは簡単に、以下の故障モードがあるとしましょう。

部品原因結果影響度頻度優先度
インペラ固着運転停止
メカニカルシール漏れ環境への影響
ベアリング焼付運転停止
カップリング破損運転停止

いろいろなモードが考えられますが、クリティカルなモードを最初に考えましょう。

設備が壊れることで運転ができなくなるもの、人や環境に影響があるものを優先して選んでいきます。

そのうえで、起こりうる故障モードの頻度を想定して、影響度×頻度のマトリックスで評価します

結果、メカニカルシールの漏れが一番のリスクだと判明しました。

保全方式の選択

保全方式を選びます。

TBM,CBM,BMのどれにするか、という選択を部品ごとに行います。

部品方式周期
インペラBM
メカニカルシールTBM4年に1回
ベアリングCBM2カ月に1回
カップリングTBM4年に1回

メカニカルシールは4年に1回のTBMにすることにしました。

ほぼ必然的に、カップリングは交換することになるので、同じくTBMで4年に1回の周期にします。

インペラは基本的には何もしないことにしました。開けて清掃する程度です。

ベアリングは交換はしないものの、更油や振動測定などのOSIをすることにして、CBMとして管理ます。

このように、部品ごとにTBM,CBM,BMを決める考えがRCMだと私は理解しています。

例えば渦巻ポンプをCBMとして設定したら、更油や振動測定は同じように行うものの、メカニカルシールやカップリングを状態監視することになってしまいます。

ところが、実際にできることは目視確認程度。

現実的には定期的に交換するでしょう。

だから、設備ごとにTBM,CBMという議論をすること自体が変です。(現実に私の会社では、設備に対してTBMやCBMという表現をしていて、凄く違和感を持っています)

保全計画

渦巻ポンプに対してRCMを設定したら、後は運用していきます。

保全カレンダーや星取表の世界です。

この運用こそが中長期保全計画において、最も大事です。

RCMの管理であろうがTBM,CBM,BMだけの管理であろうが、データの蓄積と解析が最も大事になります。

これは保全システムの構築の話になりますので、今回は省略します。

プラント設備の計画は交換と目視確認

RCM的な考え方では、CM(Corrective maintenance)も設定することは可能です。

化学プラントのように設備が成熟した業界では、この考え方はあまり必要ないと思っています。

TBM,CBM,BMの組み合わせで良いでしょう。

設備寿命を上げるための工夫がしにくいので、交換が基本的な補修方法になります。

運転時もパトロールで異常を早期に発見したり、異物が混入しないような目視確認が大事になるでしょう。

ただし、新しい剤を導入したり、既存剤の生産能力拡大で運転条件が厳しくしたり、設備のライフサイクルを考え直すイベントがでたときには、CMの考え方で早期に最適状態に移行させることが大事です。

この辺りは、業界によって変わってきます。

参考

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最後に

RCMを化学プラントに対して適用する時の考え方を解説しました。

故障モードを網羅的に調べ、重要な設備をピックアップして、FMEAにより部品ごとのTBM,CBM,BMの保全方式を設定します。

それを保全カレンダーや星取表に落とし込み、運用していきます。

化学プラントでは交換や目視確認がメインなので、CMの考え方は入りにくいでしょう。

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