タンクの底板の計算で失敗したらどうなるのですか?
少し前に、社内の若手から出た質問です。
標準化が進んでいて、タンクの容量に対する板厚はパターン化されているから、計算をしなくても何とかなる世界。
もし何か起きたら・・・を考えるのは大事ですね。
内圧で凸、外圧で凹
物理原則を最初に抑えておきましょう。
物体に力が加われば変形します。
タンクのように内圧・外圧を考える場合、内圧が高ければ膨張し、外圧が高ければ収縮します。
その度合いが高ければ、材料は割れます。
タンクの強度計算の基本である、胴部の計算でもこの状態にならないことを考えます。
胴板の計算さえすれば、天板と底板の計算は省略。
天板と底板も、計算ミスすれば変形することが考えられます。
底板が膨らむ
底板が薄いと、膨らむという可能性が最も考えられます。
タンク内に液体の自重を受けているため、外圧よりも内圧の方が高い状態が一般的です。
タンクの板厚が薄いと、液体の圧力に負けて変形していきます。
この絵はとても極端に書いたものです。
外周部が盛り上がる形で変形して見えますが、タンクの中心部が下に変形することで外周部が盛り上がるように動きます。
一般に、タンクは基礎と固定しているわけではないので、こうなるでしょう。
配管が変形したり割れたり、基礎周辺のコンクリートやモルタルが割れたり、といった現象として最初は出てきます。
さらに力が掛かれば、底板の割れが起きるでしょう。(おそらく溶接部から)
底が平型でなくて傾斜の場合には、底板の変形を意識して補強板をたくさんつけます。
平底だからこの問題が全く起きないというわけではない、ということがポイントです。
天板は強化しやすい
膨らむという問題なら、天板の方がリスクは高いです。
タンクの天板は胴板・底板よりも薄くするのが原則です。
内圧を持って爆発しようとしたときに、その力を安全な上部に逃がすためです。
底板に比べると天板は弱い力で膨張します。
それだと少し不安・・・となると天板は結構簡単に補強材を入れることが可能です。
天板だけ皿型、底板は平型というような構造そのものを変えることすら、可能です。
ただし、天板を補強していくと、底板との強度差がどんどん少なくなっていきます。
ここに注意。
- 底板:液体自重+若干の気体圧
- 天板:若干の気体圧
という力の比較をしているので、気体圧に対して耐えるように板厚を上げて、底板と天板の厚みが同じ程度になってしまうと、液体自重を考えてない結果になります。
それでも運転上は問題ないのですが、底板が運転条件のズレに対して意外と弱いという結果になることが見過ごされます。
底板は収縮しにくい
底板が膨張する可能性は考えやすいですが、その逆の収縮するケースは考えにくいです。
というのも、底板には液体圧が掛かっているから。
タンクに液体が充填されていて気相部分が減圧になった程度では、問題にはなりません。
この状態だと、天板の収縮の方が先に発生します。
タンクの洗浄など液体が無い状態で操作間違いで気相部が減圧になったという場合でも、天板の方が先に壊れるでしょう。
参考
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最後に
タンクの底板が薄いとどうなるか?という思考を行いました。
内圧に対して膨らむので、タンク自身は上の伸びた形になります。
その結果、配管や周囲から漏れが起きることでしょう。
天板を補強しやすいから、底板が軽視されがちです。
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