化学プラントの現場では、ヘルメットを着用することが当たり前の安全ルールとして定着しています。しかし、「なぜ必要なのか?」という理由を具体的に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。見学者や新入社員にも納得してもらえるよう、ヘルメットの本当の役割と、その背景にある危険性を理解しておくことが大切です。
今では当たり前ですが、50年~60年くらい前にはそうでもなかったようです。大先輩から聞きました。ヘルメットが当たり前になりすぎたため、危険性は分からないものの危険と言われているからとりあえずヘルメットを付けていて、工場に入ってしまう人が割と増えています。
この記事では、化学プラントでヘルメットが必要とされる代表的な理由と、実際に起こりうるシーンをわかりやすく紹介します。
歩いている時に配管に頭をぶつける
化学プラントでヘルメットが必要な理由として最も大きい理由は、歩いている時に配管に頭をぶつけるです。
頭をぶつのはとても危険ですよね。
プラントに立ち入る人すべてに関わる危険性です。
2m近くの低い位置に配管が通っているプラントは結構あります。
前を見て歩いていたらぶつかるはずがない、と思っていてもぶつかってしまうもの。
前を見ずに周りを見ながら歩いていたら、もっと確率は上がります。
歩いている時ではありませんが、しゃがんで立ち上がった時も危険です。
背の高い人の方がリスクは高いですが、低くてもゼロにはなりません。
しゃがんでいるうちに頭の上に配管があったことを忘れてしまって、何も考えずに立ち上がってしまうと強烈に頭をぶつけます。
ヘルメットが無いと血が出る程度の怪我になります。ヘルメットがあっても痛いですね。
上から物体や液体が落ちてくる
上から物体や液体が落ちてくるリスクに対して、ヘルメットは有効です。
プラントの運転や工事に関わる人が当てはまります。
一般の見学者は、こういうリスクが相対的に少ない場所しか立ち入らないでしょう。
工具が5m程度の上部から落ちてきて、頭に当たれば終わりです。
液体を頭からかぶっても大きなダメージを追います。
どちらでもヘルメットはガードの機能を持ちます。
液体は配管から漏れるケースが多く、漏れがいつ起きてもおかしくないというのが怖いところ。
作業員がサンプリングや仕込など液を扱っている場合には、その周りに行かないだけで防げます。
同じ階の上部から液が漏れている場合には、歩いている床面が濡れますので、前の床面を見ていたらリスクを下げることができます。
工事現場でも上部に人が居ないかを、前を見て歩いていたらある程度回避できます。
回避策はいくつかあるものの、完全にゼロにはできないので、ヘルメットを付けるという感じですね。
工事中に足場などに頭をぶつける
工事中の足場に頭をぶつけるリスクがあります。
機電系エンジニアにとって、最も危険な行動です。
足場自体は専門の工事会社が作ってくれますが、機電系エンジニアはそこの上に昇ることがよくあります。
足場は高さも幅も制限されたもの。
頭をぶつける可能性のある部材がいっぱいあります。
もちろん配管やダクトとの距離感が近づくので、頭をぶつける可能性はぐっとあがります。
足場は通常の架構よりも危険という認識を持ちましょう。慣れている人ほど、当たり前に使ってしまいます(私もその一人)。
転落・転倒する
転落・転倒するリスクに対してヘルメットは有効です。
自転車などでヘルメットを付ける理由ですよね。
化学プラントでもそのリスクはあります。
リスクが高いのは、当然ながら足場ですね。
他には床の取付や取外しの作業をしている場所など。
どちらも工事会社の人が該当します。
プラントに慣れている人でない限り、近寄らない方が良いです。
参考
関連記事
最後に
化学プラントにおけるヘルメットの役割は、単なる形式ではなく、明確な危険に対する備えです。特に以下の4つのリスクに対応するために不可欠です:
- 歩行中の配管への頭部接触
- 上からの落下物・液体の危険
- 工事中の足場等への接触
- 転倒・転落時の頭部保護
こうしたリスクは、見学者や新入社員にとっても例外ではありません。現場に入る前には、なぜヘルメットが必要なのかをしっかり理解し、納得したうえで安全対策を講じることが大切です。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
コメント