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配管

配管設計が多少失敗しても受け入れられる理由

配管設計の失敗OK 配管
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化学プラントのような複雑な配管設計では、時に失敗します。

特に初心者の頃は、失敗の数が多くて落ち込んでしまいます。

工事の規模が大きくなるほど失敗の数は多くなり、ベテランでも失敗は当然あるものなのですが、初心者にはその辺りがまだ見えていないから仕方ありません。

配管で失敗しても、自分の失敗だと過度に落ち込む必要はありません。

特に初心者エンジニアほどこの傾向にあると私は思っています。

だからこそ、やり直し率を削減しようとして、次のプロジェクトで努力して、その積み重ねで成長していきます。

経験を高めていくと「本来はこうあるべきだ」という理想を自分の中に作っていきます。

プロジェクトのたびにその高みを目指していき、それでも失敗の数は減らず、理想と現実の狭間で悩まされるでしょう。

これは設計者としては必要な悩みですが、お客さんである製造側は実はそんなことはほとんど気にしていません。

悩みを過剰に抱えすぎないようにするために、製造側目線で配管設計の失敗を許容しているときの考え方を紹介します。

流れればいい

製造が配管設計の求めることは実はたった1つです。

流れればいい

この絶対的な目的のためだけに、配管設計はあると言っても良いでしょう。

ところが、配管設計者としてはいろいろ考えてしまいます。

  • 設置コストを最小にしたい
  • 増改造が簡単にできるようにしたい
  • 詰まりが起きないようにしたい
  • 腐食が起きないようにしたい
  • 現場作業性が悪くならないようにしたい
  • 切替操作が簡単にできるようにしたい
  • 被液のリスクをできるだけ少なくしたい

こういう色々な要望に応えようと、最適な設計をします。

多大な時間を掛けて努力した割に、現場では多少の問題が発生します。

  • 流量がやや少ない
  • ちょっと詰まるかも
  • 作業しにくい

一昔前は、少しの不満ですら現場から声が上がってきて、工事中に手直しをいっぱいしました。

今では自動化や工事環境の問題もあって、ほとんど声が上がりません。

その間に、配管設計者のスキルが上がったわけではありません。

ということは、もともと現場から上がってきた声というのは、実は99点を100点に近づけるための過剰なクレームだったのでは?と思うようにしています。

もしくは、配管設計者にクレームという出して設計者がPDCAを回してほしいという願いかも。

いずれにしろ、配管設計者の品質が過剰になっているかもしれないという意識は、常に持っておきたいです。

数が多すぎる

配管設計の数が多すぎるというのは、製造も同じ目で見ています。

実際に使うのは製造ですからね。

切替配管の設定・遮断板の取付・バルブの開閉・ガスケットの組付け間違いの確認など、生産を開始する前に膨大なチェックをしないといけません。

ちゃんとP&IDを使ったチェックリストを作成して、管理します。

配管設計者が大変なのと同じで、製造も大変。

この辺りの意識は、配管設計者や機械エンジニアには意外とありません。

発注者と受注者の関係のもとに、配管設計者は自信の仕事を100%に持っていこうとします。

配管図を書いていて1つでも干渉するものがあれば、それは失敗。

1つ1つ製造に許可を得て改造していきます。

それを見ている製造は数の多さに疲れ切ってしまい、流れればいいという1点でエンジニアに改造案の提案と実行を委託します。

現場の採寸が完全にはできない

配管設計者は現地の採寸が完全にはできません。

高所にある配管を、地面からコンベックススケールを当てて採寸します。

そこである程度の誤差があるのは当たり前。

配管図で寸法をちゃんと書いていても、誤差によって周囲設備との干渉が起きます。

工事直前に足場を作って直接採寸して、配管図と違うから施工会社からクレーム。

このパターンで落ち込む配管設計者は、特に初心者に多いです。

厳密な寸法として書くよりも、参考値とか逃げを作った配管図にしておく方が良いでしょう。

設計の質は短期的には分からない

配管設計の質が多少の良し悪しがあっても、短期的には変わりません。

流れさえすれば基本的にはOKです。

  • 切替作業は年に数回レベルなので、大抵は許容される
  • 腐食は1年前後で問題なければ、ある程度長期で使える
  • 増改築が多ければ、一瞬の失敗は忘れられる
  • 増改築が少なくても、製造管理者は短期的に入れ替わり、一瞬の失敗は忘れ去られる

配管設計者が悩んでいる部分は、20年30年経ってようやく分かる部分です。

その評価をするにはちゃんとしたデータ収集が必要ですが、専用の人が居ないと難しいでしょう。

一般化もしにくいです。

費用として効いてくるとしても、価格の高騰スピードの方が速いです。

時間を掛けて設計していても、費用対効果があまりよくありません。

この割り切りは、配管設計者としてはかなり難しいでしょう。

実験と同じでやってみないと分からない

化学系の人にとって、工場は大きな実験装置と考えている側面があります。

なぜ実験をするかというと、理論では完璧に解析することができないから。

実験で起こったことを真摯に受け止め、必要な対策をその場で考えます。

そこに現場の楽しみや意義があります。

技術者にとって大事なことですよね。

製造はこの目線で配管設計も見てくれます。

ところが、プラントエンジニアとしては意外とこの感覚がありません。

大学や会社での研究のチャンスがあまりないからですね。

化学と機械で研究の考え方が違うと勝手に思い込んでしまって、意思疎通もあまりできず、ビジネスとして100%を求めてしまっているのが配管設計者でしょう。かくいう私もその1人。

参考

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最後に

配管設計で失敗はつきものです。

液やガスが流れさえすれば、多少失敗してもかなりの部分は許容されます。

設計者の特に初心者~中堅者は完璧を目指そうと努力します。

その姿勢は素晴らしいのですが、過剰に追い込み過ぎないようにしたいものです。

客である製造はそこまでシビアに考えていません。

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