サイクロン(Cyclone)について解説します。
熱帯性低気圧であったり、掃除機であったりと何かと有名になってきたサイクロン。
サイクロンは化学プラントなどの設備としても使います。
アナログな設備ですが、だからこそ効力は発揮するときは絶大です。
ブラックボックス化された設備で、どうやって設計すれば良いのか悩むでしょう。
トライアルをして最適な物を選んでいけば良いですが、トライアル回数を減らすためにも、かんたんな設計方法を解説しましょう。
サイクロン(Cyclone)の原理
サイクロンの原理を解説します。
サイクロンは遠心力を使って、異なる密度の2物体を分離する仕組みと考えてください。
以下のような構造をしています。
入口の内容物は以下のような特徴があります。
- 液体中に固形分が混じったもの(錆など)
- 気体中に液体分が混じったもの(ミストなど)
- 気体中に固形分が混じったもの(掃除機)
これをサイクロンを使って、2方向の出口から分離します。
一般に上側が密度の軽い物・下側が密度の重い物となります。
入口ノズルは円筒胴の接戦方向に接続されています。
円筒胴に入った内容物は、円筒胴の外周に沿ってらせん状に下向きに移動しようとします。
この時、外周面は遠心力と外周面の抗力により釣り合いが取れます。
遠心力の大きさは質量m、半径r、角速度ωに比例します。
もう少し細かく見ると・・・
- 質量mは粒子径・密度に関係
- 半径rはサイクロンのサイズに関係
- 角速度ωは入口速度・サイクロンサイズに関係
という繋がりがあります。
かんたんに言うと、
重たいものほど外側・軽いものほど内側に移動
という関係を使っています。
これは遠心分離機と同じ発想です。
コニカル部をらせん状に下方に向かって移動していき、最終的には下端から重たい物が排出されます。
残った軽い物は押し出されるように上側から排出されます。
こうして、重たい物と軽い物を分離する装置がサイクロンです。
計算式
サイクロンの計算式として一般に知られているものを紹介します。
サイクロンで排出できる粒子径を求める式です。
$$dρ_c=\sqrt{\frac{9αβμQ}{πρv^2A}}(\frac{Y}{V})^{(2n)}$$
何のことか分かりませんよね。
1つずつ解説しましょう。
α・β
α・βはそれぞれ係数です。
αがオーバーフロー割合、βが渦心半径です。
これはそんなものだと思うしかないでしょう。
α=0.7~0.9、β=0.7くらいの数字を使います。
μ・ρ
μは軽い成分の密度、ρは重い成分の密度です。
間違えそうになるので注意が必要です。
Q・v
Qはノズル入口の流量、vはその流速です。
vが遠心力に関係していて、vが大きいほどサイクロンで除去できる粒子径が小さくなり性能が高いです。
その代わり、圧力損失は高くなりますね。
A・V・Y
A・V・Yはサイクロンの寸法をしまします。
直動部のE寸法は計算には入っていません。
入口ノズルを接続できるだけの大きさの胴であれば良く、過剰に長くする必要はありません。
単位
単位はm(メートル)・kg(キログラム)・s(秒)の一般的なものです。
得られる結果はm単位ですが、実際にはmm単位で議論することでしょう。
圧力損失
圧力損失は一般には非常に少ないです。
入口出口のノズルの急拡大・急縮小部分を考えれば良いでしょう。
使用例
サイクロンの使用例をいくつか紹介します。
ミスト分離
サイクロンはミスト分離に使います。
自動的に分離できてメンテナンスも不要なので、ちょっとした分離をしたいときに大活躍です。
サイクロンでも除去できないくらいのミストを取ろうとしたら、デミスタなどの別の方法を考えましょう。
メカニカルシール保護
サイクロンはメカニカルシールの保護目的で使います。
フラッシングプランにも定められています。
ポンプの場合、軽い側の成分が液体なので、重たい側の成分は限定化されます。
例えば、鉄さびなどの金属くらいが望ましく、比重差がほとんどないスラリー系には適切に作動しないことが多いでしょう。
集塵
サイクロンは集塵目的でも使えます。
粉体を取り扱うエリアをブロアーなどで集めますが、集塵機の手前にサイクロンを設置して集塵機のフィルター交換頻度を下げるという発想です。
自動排出を使用とするとブロアー2次側に設置する必要があり、ブロアーには粉体交じりの空気が通ります。
ブロアーのインペラ摩耗対策を考える必要が出るかもしれませんね。
参考
サイクロンのような設計は配管なのか装置なのか悩むところです。
気体・液体・固体の特性を考えるという原理は変わりありませんので、配管に関する知識を集めていく上で習得する感じでしょう。
以下のような書籍が役に立ちます。
関連記事
サイクロンの他の集塵装置をさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
サイクロンについて解説しました。
気体中の液体・固体や液体中の個体を分離する設備として、アナログでメンテナンス不要な設備です。
計算式は複雑で設計が難しいですが、トライアンドエラーで製作したい設備です。
上手くハマれば効果は絶大です。
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