会社の人事評価(Personnel assessment)ってしっかりしているように見えますよね。
目標を作って、色々な評価項目を設定し、面談を繰り返して、評価を決める。
それっぽいことをしているように見えます。
でも、実際はとても雑
そんな事情はどこの会社でも似たようなものかも知れませんね。
管理職なり立ての私としては、評価者の時の気持ちもまだ辛うじて残っていながら、評価者の気持ちも分かるようになってきました。
このタイミングで評価者と被評価者の考え方を、幣工場の例を紹介しようと思います。
評価って雑ですよ
昇進に関わる評価上のポイント
人事評価でも最も興味があるのは昇進でしょう。
まずは昇進から解説します。
昇進に関わる人事評価をするうえで大事なポイントは、おそらくこの3つに絞られます。
- 年次
- トラブルを起こさない
- 空きポジション
年次
人事評価は極端に言うと年次がすべて。
「あの人は何歳だからそろそろ・・・、あの人はあのポジションで何年だからそろそろ・・・」
こんな会話が日常的に行えます。
もっとひどい例では「あの人は何年卒の大卒or院卒だから何年後に昇進する」というような計算をすら人すらいます。
昇進前から、そういう人の態度の変わり方や身の振る舞いは徐々に変わってくるから観察すると楽しいかも知れませんよ(つまらない仕事の息抜きという意味で)
トラブルを起こさない
年次が人事評価の基本ですが、最近ではトラブルを起こさないことが評価上のポイントとしてかなりの重要度を占めています。
年次だけで決まりそうな人事評価を左右する要因ともなっています。
もっと厳しい表現をすれば「人事上の問題を起こせば一発アウト」。
これくらいの位置づけになっています。
パワハラが問題化して久しいですが、メンタルハラスメントはもっと厄介な問題として顕在化しています。
- 部下にとって過剰な要求をすると、部下がメンタルを病む
- 教育や指導で長時間掛けると、周りから否定的な目で見られる
- 職場の将来を語ると、白い目で見られる。
- 指導を放置すると、部下がメンタルを病む
「部下は腫物のように扱うこと」なんて最近では言われます。
職場の将来を憂い部下に成長して欲しい、と上司が思えば思うほど逆効果。
期待に応えられない部下がメンタルを壊してしまい休んでしまうことも。
こうなったら誰も得をしません。
原因を作った上司はほぼ一発アウト状態。左遷コース。
その場しのぎをして部下のメンタルを病まないことに特化したマネジメントがこれからは求められます。
とにかく残業をさせないことが基本中の基本。
会社としての競争力?
職場程度の狭い世界ではそういうことは考えない方が健全ですよ。
空きポジション
人事評価上は空きポジションも大事な要素です。
とはいえ年次やトラブルに比べたら、比較的簡単です。
というのもポジションは作るもの。
課長に昇進しそうな人が居るけど空きポジションが無ければ、作ればいいだけ。
「特定業務」って付ければ何でもアリです。
しっかりしてそうな組織でも、こういう雑な部分はあるでしょう。
定期評価上のポイント
昇進とは違って毎年の定期評価に興味を持つ人は少ないでしょう。
「どんなに努力をしても同じ」
このマインドは社員に根深く植え付けられているでしょう。
実際に評価もその通りだから否定できません。
相対評価
定期評価では組織内の同じようなポジションの人との相対評価をします。
優秀な人には少し加点、そうでない人は少し減点
こんな感じで多少のばらつきを持たせます。
みんな同じ横並びだとさすがに露骨なので、評価数値上は差があるように見せます。
でも結果としての昇給額はほとんど変わりませんよ。月給1,000円変わるかどうか。
それなら評価数値は真面目に考えても意味がなく、何となく差をつけている感の記録を残すだけのモノ。
細かい評価指標を人事評価に設計している会社は、この差をつけている感を出すだけのものと疑ったほうが良いでしょう。
もうちょっと露骨に言うと、平均より上・平均・平均より下の3段階くらいで、組織として一定の割合を配分させようとします。人数が多い会社ほどこれはやりやすい。その割合が評価設計値に近づくように人事部門は調整をします。そのため、「平均より下」という評価を一定の人数に割り当てることは、絶対に避けられません。面談上はこのすり合わせがポイントになるでしょう。
評判
相対評価上の優秀かそうでないかを決めるのはどうするでしょうか?
簡単です。
評判
これだけ。
本人の仕事の成果なんて見ていません。
周りの人がどう思っているか、同じ職場に居れば噂は広がってきます。
中立な立場で評価ときれいごとを言っても、実態は評判をベースにします。
明確な理由
評価を上げても下げても目立ちます。
だからこそ明確な理由が必要です。
例えばこんなことが明確な理由。
- お客さんである製造部の信頼が厚いと高評価
- 会社を長いこと休めば低評価
- 現場でトラブルを起こせば低評価
その職場以外の人から見ても分かりやすい理由が「明確な理由」。
仕事の量などの成果は「明確ではない理由」です。
日本語って難しいですね。
評価に対して考えていること
さて、そんな適当な人事評価に対して登場人物はどんな思いを持っているでしょうか。
評価者・被評価者・人事の立場で見ていきましょう。
最初に評価者と被評価者の間で面談や評価をして、人事と評価者でバランス調整をするという組織を
評価者の立場
評価者が人事評価に対して思うことはただ1つ。
早く終わらせたい
これだけしか考えません。
というのも人事評価は面倒ごとが付きもの。
- 部下1人1人に30分程度の面談をしないといけない
- 評価を適正にしている感を演技してでも出さないといけない
- 部下の仕事を見ている感をアピールしないといけない
- 部下が不平不満を言ってきたらなだめないといけない。
- 部下の評価を下げると自分の評価も下げないといけない。
壮大な工数を掛けて人事評価ごっこをしないといけないのだから、生産性を阻害する以外の何物でもないですよね。
ひどい職場では課長のとある月の業務の大半が面談というところもあります。
人事制度の実態をはっきり伝えると部下のモチベーションが下がり問題になるけども、はっきり伝えないと不平不満が出てモチベーションが下がる。
どちらにも振れないように、評価している感を出すというのが非常に厄介な問題ですね。
評価者は普通は同じ職場に5年くらいしか居ませんからね。逃げ切り戦略でOKです。
被評価者の立場
被評価者が人事評価に対して思うのは、以下のどれかだと思います。
- 私はあの人たちより頑張っている
- 評価なんて変わらない
- あらゆる制度を使って会社にしがみつく
1が能力のある人、2は普通の人、3は能力のない人という理解で良いでしょう。
目立つのは1の能力がある人。
- 私は他の人より担当課が多い
- 私は他の人よりプロジェクトの規模が大きい
などの明確な背景にがあるにもかかわらず、評価が変わらなかったり昇進されなかったりします。
年次で決まるから頑張っても意味がないという事実を知ってか知らずか、こういう不満を出します。
この気持ちは非常に分かります。
本当はこういう明確な仕事の成果を、評価に反映させるべきですからね。
それを許さない人事側に問題があっても、はっきり伝えることもできません。
2の普通の人のように割り切ってくれる人の方が圧倒的に多いです。
3の能力がない人の例は極端。
評価が最低でも問題なし。会社都合で解雇されない限りは会社にしがみつこうという思想です。
休職やリハビリなどの制度が充実している会社ほど、制度を活用しようとする社員は出てきます。
人事の立場
人事の立場からすると人事評価上はこの想いしかないはずです。
コストを上げたくない
ここでいうコストとは何でしょうか?
昇進や昇給のこと。
ひどい会社だと人事の年間目標に、コストカット率を定義しているかも知れませんね。
昇進を遅らせれば遅らせるほど人事としては高評価。
とはいえ、人事の立場であるがゆえに気を付けないといけないことはあります。
- 責任を回避する
- 問題を起こさない
- 公正に評価している感を出す
職場から昇進要望を出したとしても人事の立場でコスト上の問題で昇進を遅らせた結果、その社員が問題を起こした場合は人事の責任問題になります。
人事はこれを最大限回避しようと努力します。
この問題を起こすと人事としては一発アウト。
そうならないように波風を立たせない努力が大事。
人事が持っている立場や権限を意識しながら、責任が人事に降りかからないようにして評価者を説得する。
そんな構図が評価者と人事の間で起こります。
そもそも人事は自社のあらゆる職場のことを知らないといけません。
そうしないと公正な評価なんてできません。
でも、人事がそれをできるとは限りませんね。
職場の仕事内容なんて詳しくは知らないから。
でも人事はちゃんと知っている感を評価者に対してアピールしないといけません。恰好が付かないからですね。
人事も評価者と同じで、その職務に5年くらいしか就きませんからね。逃げ切り戦略が基本です。
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最後に
横並び評価をする会社の人事評価についてまとめました。
年次や空きポジションという分かりやすい要素以外に、メンタル問題を起こさないという新しい要素が最近では追加されています。
波風を立てず職場の将来を考えず責任を取らないようにする逃げ切り戦略が基本です。
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