危険物屋外タンク貯蔵所の防油堤に関する要求事項をまとめます。
屋外タンク貯蔵所は製造所と同じように多くの法的制約があります。
この中でも防油堤に関する規制は、プラント建設だけでなく増設などでも考慮が必要な、頻度の高い規制です。
工事をしている時にこの規制に不合格であった場合は、消防検査に合格できず生産開始が遅れることになります。
少しの寸法をちゃんと見てなかったために、不合格。
こうなったらエンジニアとして失格ですね。
実行段階で失敗しないように、重要な内容に絞って解説します。
防油堤のサイズ
まずは防油堤のサイズについて説明します。
防油堤のサイズは、防油堤の規制で最も重要なもの。
防油堤の役割が、タンクが破損して危険物が漏洩しても外部に拡散しないこと、という基本を押さえておきましょう。
防油堤容量
防油堤容量は防油堤の能力そのものを示すことになります。
法的には以下の条件が必要です。
タンク容量の110%よりも防油堤容量を大きくしないといけません。
防油堤容量は図のように、防油堤内の液を溜められる空間部分を考えます。
対象としているタンク内部も容量として計算できます。
1つの防油堤に対して、2つ以上のタンクを設置する場合は、最大タンクの110%以上の防油堤サイズを考えます。
最大タンクから液漏れが起きて防油堤でキャッチする、という思想。
最大タンク以外のタンクは漏れが起きていないと考えて、防油堤容量からは削減しないといけません。
2つ以上のタンクが同時に漏れることも想定はしていません。
防油堤の限界
防油堤の限界についても抑えておきましょう。
1つの防油堤は80,000m2以下でないといけません。
250m×250m=62,500m2、300m×300m=90,000m2なので、正方形で1辺250~300mの間くらいですね。
1つの防油堤にタンクは10基までしか置けません。
防油堤のサイズとタンクの数で、タンクの大きさも含めて一定の規制が掛かることになります。
防油堤高さ
防油堤高さは、50cm以上であることが求められます。
防油堤容量の規制を確保しつつ、防油堤の敷地面積をできるだけ小さくしようとしたら、高さはある程度確保しておいた方が良いでしょう。
防油堤高さが1m以上なら、30mごとに階段の設置が義務付けられます。
とはいえ、50cmの防油堤でも階段は付けるのが普通なので、階段の設置間隔に関する追加規制とという位置づけですね。
保有空地
屋外タンクでも製造所と同じく保有空地の概念があります。
保有空地はタンクの指定数量と関係があります。
指定数量 | 保有空地 |
~500倍 | 3m以上 |
500倍~1000倍 | 5m以上 |
1000倍~2000倍 | 9m以上 |
2000倍~3000倍 | 12m以上 |
3000倍~4000倍 | 15m以上 |
4000倍~ | タンク直径もしくは高さより大きい方、かつ、15m以上 |
バッチプラントレベルでは3mとか5mが多い感じです。
とはいえ、指定数量4000倍のタンクを扱うこともあるので、3mや5mと覚えてしまうのは危険。
製造所とは違ってタンク容量に依存するということは、意識しておきましょう。
保有空地には障害物となるものを置いてはいけません。
これが1つの防油堤内で複数のタンクを設置する時の、タンク間距離の制約になります。
保有空地が長い側の制約で決まります。
引火点70℃以上なら保有空地の緩和がありますが、よほどのことが無い限り考慮しない方が良いです。
というのも、設置当時は引火点70℃以上であっても、内容物変更をしようとしたときにどうしようもなくなるからです。
タンクと防油堤の距離
タンクと防油堤の距離について解説します。
防油堤の設計上は、ここが最も設計しがいのある部分。
タンク高さと防油堤は以下のような規制があります。
タンク高さは防油堤の地盤面からタンクとして機能する最も高い点です。
例えばコーンルーフタンクであっても、液を溜める部分ではない屋根はタンク高さの計算に含めません。
タンクと防油堤の間は、タンク高さに比例する距離制限があります。
タンク直径15m未満が多いので、1/3Hと私は認識しています。
タンクの外壁から防油堤の内壁までの距離が、制約対象となります。
意外と見落としがちですが、防油堤の土間の傾斜は注意が必要。
土間は平たんには作らずに傾斜を付けて、防油堤内の水抜口に誘導するようにします。
土間に傾斜が付いている以上、見た目のタンク高さは傾斜の上流・下流で変わります。
例えば1/100の勾配を付けていてタンク径が3mであるならば、実測値としてのタンク高さは30mmの差が上流・下流で出ます。
1/3Hとしても、タンクと防油堤の間の距離は10mmの差があります。
防油堤をできるだけ小さく作ろうとしたときに、この差が結構な問題になるので注意しましょう。
防油堤高さの50cmについても同じ話になります。
参考
関連記事
消防法の危険物関係の法規についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
屋外タンクや大気圧タンクについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
危険物屋外タンクの防油堤に関する要求事項をまとめました。
プラント建設よりも増設時に課題になります。
防油堤サイズとタンク容量の関係・上限・タンク高さ・保有空地など複数の制約が関連し合います。
タンクと防油堤の距離はタンク高さと関連があり、土間勾配の影響を受けるので特に慎重に考えないといけません。
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