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原料の品質と製品に及ぼす影響のイメージ

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バイオナフサなど再生可能エネルギーが注目されています。化学工場でもバイオナフサを作るという点は結構注目されますが、その原料を使った製品についてはあまり注目されていません。

世間的にはメリットばかりが注目されていますが、品質については少し慎重になった方が良いでしょう。気が付いたときには原料がバイオナフサに変わっていて、気が付いたときには製品の品質が変わってしまっていた、ということになりかねません。

バイオナフサに限らず、今まで使っていた原料工場の場所や製法が変わったときや、新たな会社の原料を採用する場合も、共通する考え方があります。

ざっくりイメージだけでも掴んでおくと、いつか役に立つときがあるでしょう。

CoAと使用用途との関係

製造物の品質を証明するために、CoA(成分分析証明書)というものが発行されます。化学工場向けには例えば下表の左列のような感じで、含量と不純物の規格が定められます。他にも密度粘度などの物性や色目なども定められたりしますが、今回は省略します。

CoA原料規格として欲しい製品規格
含量(%)含量(%)含量'(%)
不純物A不純物A不純物A’
不純物B不純物B0
(規定なし)不純物C不純物C’
(規定なし)不純物D不純物D
その他不純物その他不純物その他不純物

CoAには含量のほかに不純物Aと不純物Bが定められているとしましょう。構造が分かっていて分析で判明するものが、不純物Aと不純物Bとします。この他にも不純物は非常に多くの物が微量ながら含まれています。それをまとめて「その他不純物」として、合計値が一定値以下であれば合格という判断をします。

ところが、その原料を実際に反応で使う場合には、不純物Cと不純物Dというものが反応に影響を与えかねないということが、ユーザー側では分かっていたとしましょう。

イメージで書くと以下のようなベン図になります。

規格範囲

メーカーのCoAよりも少し縛った規格が本当は必要という場合は、あります。

不純物は反応で影響する

プロセスでは主原料が反応して目的物を得られるという点に着目しがちです。ところが、不純物も同じように反応する可能性があります。ざっとイメージとしては以下のような分類が考えられます。

  • 不純物が反応して別の不純物になる(不純物Aと不純物C)
  • 不純物は反応に全く関係なく、工程中で除去される(不純物B)
  • 不純物は反応に全く関係なく、工程中で除去されない(不純物D)

今回は単純な例として、個々の不純物が別の不純物に単純に変化するという例を考えます。不純物Aは不純物A’にしかならず、例えば不純物B’などにはならないと考えますが、実際の反応では複雑なルートを経て起こる可能性があります。

不純物AはCoAにも書いてあるので、不純物Aの量に対して製品として得られる不純物A’の量が問題ないかどうかは、予め実験することによって判断しやすいです。

ところが不純物CはCoAには書いていないので、どれだけの量であれば不純物C’として問題ないかを判断するのはやや難しいです。その他不純物の上限で評価して問題ないことを確認していれば、安心です。

不純物Bは工程で抜けることが分かっているので、安心感は高いです。とはいえ規格値が変わって含量が増えた場合にも抜けるかどうかは、その時になって確認する必要があります。

不純物Dは反応にも関係せず工程中で取り除けないので、完全に製品に残ってしまいます。製品規格が厳しい場合は、原料の規格をチェックしておかないといけません。メーカーのCoAには書いていないので、受入前に分析をして問題ないものだけを購入するという面倒なプロセスが発生します。1回だけな良いですが、製造の場合は購入のたびに分析が必要になるので分析方法によっては時間が掛かる場合もあります。時間が掛からなくても、輸送時間や待機時間としてあまり時間が取れない場合もあります。

不純物の動きが完全に分かっているわけではない

上記の例は、不純物の動きが完全に分かっているという前提を置いています。

製品にとって問題となりえる不純物は、原料に含まれていることは確かだがその量は分からない。というだけであれば、面倒でも分析をすれば一応の解決はします。

ところが、原料に含まれる不純物の何が製品に影響が与えるか完全に分かっているケースは珍しいです。ごく微量とは言え良く分からない不純物だらけで、その集まりが製品にどう影響するか読むのは難しいというパターンはありえます。その他不純物の範囲内であれば良いのですが、それすら確実ではないという状況です。

分析をするだけでは解決せずに、その原料を使って製品まで実験によって誘導してその評価をするというのが確実になります。ただし、時間が掛かります。

新たなメーカーの購入をする場合は、時間を掛けて評価すれば良いでしょう。問題なのは既存使用のメーカーで規格が急に変わる場合。バイオナフサは特にこの可能性が考えられます。

CoAでは定めにくい

ユーザーとしてはCoAで定めることができれば助かるのですが、そうもいきません。メーカーはそのユーザーのために専用の分析をしてCoAを発行することになります。単純にお金が高くなるだけでなく、分析そのものが妥当なのかどうかを時間を掛けて評価しないといけません。

だからこそ、メーカーの原料の変更というのはユーザーにかなりの時間を持って連絡して欲しいと思います。

追加設備が必要な場合も

こうした原料の変更は、機電系エンジニアにとって完全に無関係というわけではありません。設備投資が必要になる場合があるからです。

  • 異物除去のストレーナ
  • 分液により水層もしくは油層を取り除く
  • 簡単な蒸留をして取り除く

こういう場合は製造課から急な依頼として流れてくることになります。納期の問題もあるので、すぐに対応することはできない場合も多いです。それでも最速で何とか設備を導入しなさいというブラック的な依頼をする会社と、諦めて別の手を考える会社とで、方針が分かれそうです。

参考

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最後に

原料の品質は不純物が製品に影響を与える可能性があります。原料の製法や工場が変わるとその影響を評価しないといけません。

メーカーのCoAと原料に必要な規格とは異なる部分があるので、メーカーが問題ないと言ってもユーザーはそれなりに評価が必要な場合はあります。

バイオナフサはこの辺りを強引に進めているような気がしています。

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