化学プラントに限らず、マテリアルハンドリングは製造業のライン設計で重要になります。
化学プラントだとマテリアルハンドリングの割合が相対的に低いから、軽視されがちですけど重要です。
プラント設計の中でもかなり特殊な扱いとして位置づけられますが、考え方の基本を知っておかないと結構進まないです。
少なくともこの要素が必要ということを、整理します。
みんなで話し合える環境
マテリアルハンドリングの設計で最も大事なことは、みんなで話し合える環境です。
これが無いとほとんど進みません。
メールで図面のやり取りをして審査するというような、プラント設計にありがちな方法だと、下手をしたらスルーされてしまいます。
というのも化学プラントのようなマテリアルハンドリングに慣れていない工場だと、誰かが絶対的な答えを持っているというわけではありません。
プラント設備・配管設計・計装設計のように決まった標準的なものがないから、誰か1人のアイデアで完結することがほとんどありません。
もちろん、製造の経験者が圧倒的に有利ですが、機械屋の方が良い案を出せたりするのもマテリアルハンドリングの特徴。
みんなで作り上げていく雰囲気を味わえる、数少ない機会でしょう。
すぐにNGと言わない雰囲気
マテリアルハンドリングの議論では、NGを出すことがNGです。
誰もが答えを持っていない以上、一見ボツに見える考えから急に良い案がでたりします。
最初にとにかく案をいくつ出せるかが、質のいい設計を生み出せます。
今は、こういう雰囲気の会社が減っているはずです。期待しています。
作業に必要な要素の言語化
マテリアルハンドリングの設計をするうえで大事なことは、意外にも言語化です。
どういう作業があるかを、1つ1つ言語化します。
プラント設計でシーケンスを考えるのと、同じ。
ところが、この言語化が意外と難しいです。
実際に作業している人が言語化ができるとは限らず、監視している管理者も怪しかったりします。かといって、設計する機械屋が現場を見てもプロセス上の目に見えない危険性が分からなかったりします。
情報を総合的に集めつつ、共通認識を持たせるための言語化も大事な設計プロセスです。
動画を撮影して後で見返すことは、今となっては不可欠の作業ですが、動画を見たら後は不要というわけでもありません。
超略図を書けるスキル
言語化された情報に対して、略図を書くスキルも大事です。
下手でも良いので、イメージを相手に伝えることが大事。
全員の共通認識を持たせて、詳細の設計に取り掛かるためにはイメージを早い段階で固めておきます。
略図を書かないまま、言語情報だけで叩き案を作ろうとすると、かなりの時間を必要とします。
メーカーによっては現地に1度赴いてくれて、図面を起こそうとしてくる場合もありますが、すぐに諦めてしまう傾向です。イメージ図が無いと検討が進みにくいのは、社内・社外問いませんね。
少しの予算を簡単に割り当ててくれる
マテリアルハンドリングの設計が、一度で上手くいくことはありません。
大抵は改善という名の微調整を必要とします。
言語化しても図面を書いても作業を完全にトレースした物になるとも限りません。
だからこそ、少しの予算で試作することが大事。
初めから図面を正確に起こして一点設計せずに、市販されている道工具を使って、疑似的な装置を作ります。
この環境が無いと、1つの装置を作るのに1000万円かかり、それでも不満のある設備となって、我慢しながら使い続けるということになりかねません。
お試しで作業ができる場所
試作品を作ったら、それを実現する場所が必要です。
化学プラント内で試作できる場所があったら良いのですが、必ずしも見つけられません。
運転中の設備を改造することがとても難しいですからね。
試作場のような場所があれば、検証がしやすくなります。
この環境が無いと、試作品を作っても導入までに1年が掛かったり、手直しをするだけでさらに1年ということになりえます。
参考
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最後に
化学プラントでマテリアルハンドリングの設計をするためには、みんなで話し合える環境・すぐにNGをださない・作業の言語化・略図を書く・少し予算をすぐに割り当てる・お試しで作業できる場所、が必要です。
これらのスキルが無いと1年~2年のレベルで、設計が遅れていきます。
会社としては結局は損ですね。
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