プラントの配管中で使用するラインミキサーの考え方と簡単な設計例 温水製造用熱交換器

ラインミキサー化学工学

ラインミキサー(インラインヒータースタティックミキサー)について解説します。

使用用途は結構多いわりに、選定できないエンジニアもいると思います。

メーカーに依頼すれば解決しますが、基本的な設計部分は理解しておいた方が良いでしょう。

熱交換器代わり

ラインミキサーは熱交換器代わりに使うことが最初に考えられます。

典型例は温水です。

ラインミキサーでスチームと工業用水を混ぜて温水を作ります。

例えば、バッチプラントでラインミキサーを使う場合、以下のようなタンクジャケットに温水を供給するケースが考えられます。

ラインミキサー

ラインミキサーを使わずに温水を供給する方法として、温水タンクを使った循環方式が考えられます。

温水タンク

ラインミキサーを使うかどうかは使用量によると考えても良いでしょう。

この2つのケースを比べた場合、ラインミキサーはワンパス・温水タンクは循環と区別できそうです。

ラインミキサーはちょっと温めたい場合というように、ニーズが少ない場合に使います。

ラインミキサーでもタンクと同じく循環方式は可能ですが、時間の問題が出てきます。

温水タンクの方が温水の保有液量が高く(熱容量が高く)、タンクを温める速度が速いです。

特にバッチプラントの場合、1バッチの間にタンクを加熱冷却するタイミングがあり、加熱速度は少しでも早くしたいというニーズがあります。

ラインミキサーでは予め温水として確保できないので、加熱に時間かコストを掛けざるを得ません。

温水タンク方式は個々のタンクに準備すると膨大なタンク・ポンプが必要になります。

一般には1つのタンクでプラント全体を供給する用途に使うでしょう。

複数のタンクに温水を供給している中で、ちょっとした量しか使わないタンクにも温水タンクで供給するのかラインミキサーでさっと作ってしまうのか、という使い分けができます。

まとめると以下の通りです。

ラインミキサーでの温水生成の使い分け
  • 使用量が少ない場合はラインミキサー
  • 使用量が多い場合は温水タンク

熱計算例

ラインミキサーでの熱計算の例を紹介します。

  • 20℃の水と120℃の蒸気で70℃の温水を作る
  • 供給流量は100kg/min

流量

最初に考えることは、水と蒸気の必要流量です。

これはエンタルピー保存式で考えると良いでしょう。

ラインミキサーでの混合はほぼ一瞬で完結し、外部への熱損失がないと考えます。

水・水蒸気のエンタルピーデータは適当に検索すれば出てきます。これと流量情報を並べましょう。

温度流量エンタルピー
kg/minkJ/kg
20Q184
蒸気120Q22706
温水80100335

あとはこれの連立方程式を解けばいいだけ。

$$ Q_1+Q_2=100 $$

$$ 84Q_1+2706Q_2=100*335$$

これを解いたら、Q1=90kg/min、Q2=10kg/minとなります。

口径

流量情報から配管口径を選定できます。

これは標準流量の考え方を使えばいいでしょう。

結果だけ示しておきます。

温度流量エンタルピー口径
kg/minkJ/kgA
20908440
蒸気12010270620
温水8010033540

熱負荷

例えば1tonの鉄のジャケット付きタンクで、内温60℃に制御したい場合を考えましょう。

反応前のタンク温度は20℃とします。

運転中の熱負荷としては、以下の2段階に分かれます。

  1. 20℃→60℃にタンクを温める
  2. プロセス液に熱を加え続ける

1tonの鉄のタンクの比熱0.435kJ/kg/Kとして、20℃から60℃まで温めるために必要な熱容量を計算すると、

0.435×1000×(60-20)=17,400kJ

となります。

温水で温めようとした場合の時間をざっと計算します。

ジャケットの入口出口での温水の温度差を5℃くらいとして、流量100kg/minであるから

4.18×100×5=2,090kJ/min

の加熱速度となり、必要加熱時間は単純計算で

17,400/2,090=8.3min

程度となります。

ラインミキサーでワンパスの場合は、この時間ずっとスチームを使い続けないといけません。

今回のケースでは量がとても少ないので気にならないかもしれませんが、使用量が多くなってくると「他でもスチームを使いたいのに、ラインミキサーがスチームを使うので待っていないといけない」というケースが出てきます。

一方で、温水タンクで5m3程度の80℃の温水を作っておけば、温水タンクとして17,400kJの熱が減少したとしても、加熱中にスチームを全く使わなかったとしても

17,400/(5×1000×4.18)=8.3℃

の低下だけで済みます。

ここの計算では、ジャケットのUの計算をしていなかったり、ジャケット出入口温度差を5℃と仮定をしていたり、温水タンクの温度低下にともなう温度差の影響を考慮していなかったりと、ラフな計算になっています。ラインミキサーと温水タンクで、スチームの占有に関する比較をしたいがための例です。

希釈

ラインミキサーは希釈目的でも使用します。

温水の場合はスチームの相変化という意味で希釈とは感じにくいですが、ラインミキサーでは液液の希釈もちゃんとできます。

分かりやすい例が苛性の希釈でしょう。

苛性ソーダ希釈システムなどのシステムとして市販されています。

自作で設備と計器を組み合わせてDCSで制御する会社もあると思います。

連続プラントならこういうシステムの方が便利かもしれませんね。

希釈の場合は、希釈熱の除去を考える必要があります。

反応

ラインミキサーはある種の反応にも使えます。

バッチ生産から連続生産に切り替えようとしたときには、こういうインライン系のミキサーで反応させることを考えます。

反応槽を1つ減らせるだけでもバッチプラントとしては大助かりですからね。

最後に

プラントの配管中で使うラインミキサーの考え方と設計例を紹介しました。

バッチプラントでは温水の生成用に使うことが多いです。

ワンパスと循環の使い分けだけでなくて、温水タンクの循環との使い分けにもなるでしょう。

そのほかに苛性ソーダの希釈や各種反応で使うこともあります。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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