保温付き配管シュー(pipe shoe)に関して、説明します。
シューはプラント配管ポケットブックにも載っている、配管サポートの一種です。
サポートは種類がいっぱいあって、どれを使えばいいか良く分からない(というかどれでも同じ)と思えてしまいます。
シューだけでも数種類はあります。
この記事を読むと、それぞれの差を知って、現場でより最適な物を選べる考え方が身に付くと思います。
シュー(pipe shoe)の目的
シューの目的は保温付き配管を支えることです。
配管は保温なしの裸配管と保温ありの配管と区別したとき、同じスタンドに設置する場合には多少考慮しないといけません。
というのも、保温ありの配管は保温の厚みを考えないといけないからです。
シュー(pipe shoe)の主な種類
シューにはいくつかの種類があります。
メジャーな3種類を紹介しましょう。
直接溶接はシューという高さ調整部品と配管を直接溶接する方法です。
当板はシューと当板自身は溶接していますが、当板と配管は溶接しません。
クランプも当板と同じように配管とは溶接しませんが、配管の外周を囲って止める形です。
製作コスト
製作コストは直接溶接が最も安いです。
当板やクランプは、部品の大きさが増える分だけコストアップです。
とはいえ、配管工事全体を考えると無視可能なレベル。
保温施工性
保温の施工性は直接溶接が最もかんたんです。
当板やクランプは、保温の障害となる部品が増える分だけ施工しにくくなります。
これも保温性に影響が出ない範囲においては、誤差範囲内。
「当板とクランプでどちらを採用するか」ということは手堅くするならクランプになるでしょうが、施工性で当板を採用するということも珍しくありません。
腐食性
腐食性については直接溶接が最も不利です。
シューは一般にSS400で製作します。
SGP配管であれば直接溶接でも良いですが、SUS304などの配管に直接溶接をすると異種金属接触腐食の懸念があります。
当板やクランプ型は液溜まりが起きますので、腐食の原因となります。
当板の方がクランプ型に比べて構造がシンプルなので、腐食性は低くなります。
昨今では塗装やテープなどで腐食防止を図る例も増えてきています。
シューはいずれの構造でも配管と擦れあいます。擦れあいつつ雨が溜まる構造であるがゆえに、一般的な外面よりも腐食ははるかに進みます。配管はある程度簡単に交換ができても、スタンドの交換はとても大変ですので、スタンドを守るという視点で考えると良いでしょう。
腐食についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
シューの寸法
シューの寸法を設計するときの基本的な考え方を紹介します。
当板もしくはクランプ型を想定しています。
長さと高さが設計要素です。
長さ
シュー長さは配管の伸び縮み量を基に計算します。
配管の伸び縮みとは、以下で決まる量です。
配管の熱膨張率×配管の温度変化×配管長さ
スタンド上の長距離配管であれば、伸縮接手で熱応力を吸収しようとしますが、サポートも同じ発想です。
配管の伸び縮みをしたときにエルボやフランジがシュートと干渉してしまったら、問題になります。
伸び縮みがあっても影響がないように、長さを大きめに設定しましょう。
直接溶接型だとスタンドと溶接してしまうと、固定配管となってしまいますので注意しましょう。
高さ
シュー高さは保温厚み以上としましょう。
保温厚みは使用温度によって変わりますので、一律同じ高さのシューにするか個別の高さのシューに設定をするか思想が分かれるところでしょう。
特殊なシュー
直接溶接でスタンドと溶接してしまうと固定配管になる。
この問題に対応しようとすると以下のスライド型を考えることになります。
シューはスタンドとは溶接しません。
配管とシューが溶接された状態です。
シューはスタンド上に乗っていますが、前後左右に動く形になります。
ここで左右にガイドを付けていると、前後側にだけ動くスライド型ができあがり。
熱変動が激しい配管だとこの方法も使えます。
参考
シューなど配管部品は配管設計者なら知っておきたいですが、機電系エンジニアは意外と知らないです。
配管に関する基礎知識を体系的に習得するためにも、以下のような書籍を活用しましょう。
関連記事
断熱保温についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
配管スタンドについてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
保温付き配管を支えるためのシューの種類について考えました。
直接溶接・当板・クランプ型などの種類があります。
費用や施工性に難があってもクランプ型はトータルで効率的です。
どの方法でも腐食を増加させる要因になるので、適切な保護方法を取りましょう。
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