水素(hydrogen)について解説します。
最近では自動車の燃料電池などで話題になっていて、一般の人でもその名前を知っている人は増えているでしょう。
原子番号1番で化学元素の基本みたいなもの。
化学プラントでもよく使います。
化学の知識はとても深いもので、全部を習得するのはとても難しいでしょう。
機械系のエンジニアが実務で知っておいた方が良い知識に限定して解説します。
危険
水素について化学プラントのエンジニアが最初に知っておきたいことは、危険ということ。
安全安定な運転をするために、特に認識しておきたいことです。
いろいろな薬液を使っていて、何が危険か分からない。全部危険なんでしょ?
って言われがちですが、工場内で危険度のランク分けはされています。
この中でも水素は高いランクに位置づけされているはずです。
燃焼範囲が非常に広い(4~75%)
静電気で着火する
危険物乙四でも化学の知識として登場する話です。
燃焼範囲が広いということは、燃えやすいと言い換えても良いです。
工場での運転上の取り扱いで気を付けるだけでなく、工事でも気を使います。
外部に漏れが起きないように、気密試験・窒素ブローを特に強化しておこなうのが、水素のラインです。
透過しやすい
水素は透過しやすいという性質を持っています。
最小の原子
粘度が小さい
拡散しやすい
原子番号1番ならでは、でしょう。
最小の原子で透過しやすいという性質は、装置を設計する点でも問題になります。
水素を使うラインは一般に圧力が通常よりも高く、水素自身が透過しやすいために、配管のガスケットは渦巻ガスケットなどの強力なものを使います。
配管フランジ面が平行になっていて、ガスケットが片締めにならないように、配管施工としても気を使わないといけません。
軸封はダブルメカニカルシールなどシール性が高いものを要求されます。
気密試験でも使用圧力や通常の試験圧力よりも、かなりの余裕を持った圧力で試験するでしょう。
溶接面の検査もPT検査やRT検査など厳重に行う場合もあります。
操作ラインは自動化をしておき、バルブの開閉などはその信号をDCSに取り込みインターロックを組む。
これだけ万全の態勢でも、運転する前は緊張します。
この緊張感を持てるようになれれば、機械系エンジニアとしては一定のレベルに到達したといっても良いでしょう。
仕事中で「水素」という単語を聞くと、いつもとは違うという感覚を持つことは大事です。
かつ、通常の対応と通常とは違う対応の差がどこにあるのか、社内基準などを良く確認しておくこともとても大事です。
反応しやすい
水素は反応しやすいという性質があります。
この辺りは化学的な話なので、機械系エンジニアとしては参考程度に留めていても良いでしょう。
金属と反応する
有機化合物と反応する(水素添加反応として使われる。)
還元性が強い
私もこの辺りは詳しくありません。
反応しやすいという性質があるから、危険であっても化学反応として重宝されている。
その程度の理解です。
高圧のガスとして使う
水素は通常はガスとして取り扱います。
反応を効果的に行うために、高圧のガスとして扱うことも多いです。
圧力が高く・ガスである、ということは化学プラントではとても危険なことです。
高圧ガスという資格があるくらいですからね。
さらに透過しやすく・反応もしやすい、と何となく危険な要素が満載の気がしませんか。
参考
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最後に
化学プラントで水素について知っておきたいことをまとめました。
危険・透過しやすい・反応しやすい・高圧のガスとして使う
身近になってきた水素ですが、危険であるという認識が薄れそうで怖いです。
化学プラントで安全安定な運転を行うために、水素に関する知識は持っておきたいですね。
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