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運転

失敗知識データベース「合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災」を考える

合成ゴムダクト火災 運転
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失敗知識データベースから個人的な考察をしようと思います。

現場で起こったことは最大の教科書。

同じ状況が再び起こる確率は少ないですが、自分ならどうする?を考えて積み上げていくことはとても大事です。

合っている・間違っているを細かく言い始めたり、当時の環境をいろいろ考えていくと、何も議論ができなくなるので、記載された内容だけから考えようと思います。

失敗知識データベース「合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災」はこちら

起こったこと

まずは今回取り上げたシナリオの概要です。

2000年に神奈川県の化学工場で起きています。


合成ゴム製造設備の仕上工程である乾燥設備の排気ダクトに設置されたブロワーの羽根車(インペラー)付近より出火し、排気ダクト及び当該施設を収容する建物の屋根などを焼損した。長年の使用による金属疲労で破損されたインペラーがガイド板に接触し発熱し、ダクト内に付着したゴムが発火した。 
失敗知識データベース「合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災」から

ブロアー内で発熱して、ブロアーのダクト内に付着したゴムが発火したということです。

原因として以下が考えられています。


1.排気ファンが回転翼の破損によって回転が不安定となり、ダクト内部のガイド板に接触した。そのため、摩擦が起こり、その摩擦熱で周囲に付着していたゴムが着火し、火災となった。
2.ダクト内にはゴム粉が溜まりやすく、定期的に清掃しているが、清掃後付着したか、取りきれなかったと推測される。 
失敗知識データベース「合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災」から

ファンの問題とダクトの問題が取り上げられています。

ファンの課題

ファンはメンテナンスをしてなかったという旨が記載されています。

  • TBMで数年に1回ベアリングを交換する
  • CBMで振動診断をする

このどちらもされていない感じです。

工場内にある各設備がどういうメンテナンス方針にするかという管理はできていなかったのでは?という風に感じます。

ダクトの課題

ダクトは定期洗浄を前提としていたようです。

それが実際にどれくらいの頻度で行われていたかは不明。

仮に定期洗浄していたとしても、ダクト内がどれだけ綺麗な状態にあるのかは不明です。

この状態で可燃物であるゴム粉が溜まると、熱によって発火する危険性は十分に考えられます。

さらにできたこと

ファンのメンテナンスとダクトの定期洗浄は、対策の1つとなります。

私は、さらに以下の方法を考えます。

ファンの1次側に洗浄装置を付ける

集塵装置の中の洗浄と同じ発想を考えます。

ダクト内にはいくつも洗浄口が付いています。

個人的には、色々な個所に洗浄口を付けるくらいなら、1か所でまとめて洗浄することを考えます。

化学プラントの場合なら洗浄塔がその発想があります。

常時洗浄するなら循環を掛けると良さそうです。

循環水のサンプリングをすれば、どれくらいの頻度で水をきれいにすればいいか分かります。

ダクト内の水を除去する仕組みもセットで必要です。

ミスト分離をする

洗浄装置を付けるという発想になれば、その前に重力分離をすることも考えられます。

これは発生する油のミストがどういうものであるかによって変わります。

意外とデミスタが機能しそうな予感は少しします。

もちろんミストの温度や性質にかなり左右されます。

ファンの状態監視をする

お金があればという条件は付きますが、状態監視のための計器を付けることは考えられます。

今回の場合なら温度計は付けたいところ。

ファン前後の圧力計や、電流計でも引っかかる可能性はあります。

重要機器だという認識があって初めて取れる手ですけど。

洗浄を自動化する

洗浄はマニュアルで行われていた可能性を考えると、自動化するのは1つの手です。

時間設定ができれば、忘れる確率はぐっと下がるでしょう。

もちろん、そこまでの金額を投資できるとは限りません。

散水ノズルと煙感知器

ファンとダクトがメンテナンスされていなかったことが個人的には少し気になっています。

もともと重要な設備でないというなら、散水ノズルや煙感知器のような対策すら取っていないはずでは?と感じます。

危険性を認識していたからこそ対策をしていて、それであればファンやダクトのメンテナンスに目がいっても良かったのでは?と感じます。

簡単そうに見えますが、現実には気が付かないことは多々あります。

だからこそ、多くの目で見て漏れを無くそうとするしかないでしょう。

もしくは、予算の都合で対策が中途半端であったか。

最終的には運転とメンテナンス頼みになりますが、そのせいばかりにはできず設備面で取れる対策はしっかりと考えたいですね。

参考

失敗は起こした本人にとっては恥ずかしく嫌なものですが、みんな起こす可能性があるものです。

しっかりと考えることは、さらなる失敗を減らすことにも繋がるので、積極的に学習したいですね。

最後に

失敗知識データベース「合成ゴム汎用系仕上げ工程の排気ダクト内にあった堆積物の火災」から学習をしました。

インペラが発熱して、ダクト内の堆積物が燃えたという結果です。

ファンとダクトのメンテナンスに目が行きがちですが、ダクトの対策は異物除去や洗浄という面で対策が取れたかもしれませんね。

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