化学プラントでは溶接などの火を使う作業は、とても厳しく取り締まります。
タバコですらも厳しく取り締まります。
この理由は、引火爆発がどこで起こるか分からない、というもの。
先日、大阪万博のトイレ建設現場で、溶接作業中のメタンガスへの引火による爆発が起きています。
地下から発生したと考えられているようです。
怖いですよね。
一般人が行き来する場所でこの事故が起きると、工事が起きて開催したとしてもタバコをどうやって取り締まるのか極めて気になります。
爆発の元になるものがどこに溜まっているか分からない
化学プラントでは、メタンガスに限らず引火爆発する物質がどこに溜まっているか分からないという問題があります。
化学物質は地中に溜まる
化学物質は地中に溜まっていてもおかしくありません。
水より密度が軽い・重い関係なく溜まります。
規制が緩かった当時に、地下に危険物を廃棄したり、漏れていったりしたものが溜まっています。
雨で完全に流れるわけでもありません。
この一部の化学物質が、例えば地面を掘る工事で大気中に漏れてくる可能性は否定できません。
地下水などにより地面が削れていき陥没したときのショックで、大気中に漏れてくる可能性もあります。
引火性物質は地面に溜まる
引火性物質は地面に溜まります。
大阪万博の場合のメタンガスは空気より軽いので、大気中に漏れてくると拡散されます。
多くの引火性物質のガスは空気より重いので、大気中に溜まります。
コンクリートで囲われた防油堤や排水ピット内には、危険物のガスが溜まります。
こういう場所での溶接は、非常に危険です。
地面に溜まるものもあれば、地面から湧いてくるものもある。
怖いですね。
地表近くが危険
地表近くは特に危険だと認識しましょう。
密度の低いガスが地中から拡散する場合でも、密度の高いガスが空中から降りてくる場合でも、です。
地中から拡散する場合は、濃度が最も高い地表が最も濃度が高いです。
空中から降りてくる場合は、連続的に拡散されて濃度が低いとは言え、地表面で溜まる可能性があります。
どこに溜まっているか分からない
化学物質がプラントのどこに溜まっているのか、正確に把握することは難しいです。
プラントの配置や、横断配管の配置など、過去の設備状況は分かるとしても、意図的に廃棄した場所を特定することは困難です。
どこに溜まっているか分からず、いつ漏れてくるかも分からない。
まさに時限爆弾。
大阪万博のケースでは地下からメタンガスが発生しているとしたら、地面に蓋をするために舗装をすることもできず、各所からパージすることになるでしょう。
膨大な個所をパージしないと行けないし、メタンガス濃度の常時監視もしないといけず、膨大なコストが発生することでしょう。
排水処理も怖い
排水処理施設といっても実は怖いです。
プラントに比べると、こちらは場所が特定しやすいです。
例えば曝気槽による微生物処理をする場合には、有害なガスが発生します。
臭気の問題があるので、発生源を隔離して臭気して処理をします。
焼却施設が存在する場合は、焼却施設そのものは安全でも、危険物が近くに保管されている可能性があります。
例えば引火性物質を貯めていたドラム缶の空のもの。
洗ったとしても残っている可能性があります。
トイレの浄化槽も曝気槽と同じ処理をしているので、リスクは存在します。
着火源をとにかく持ち込まない
引火爆発を防ぐために、着火源をとにかく抑えることが大事です。
可燃物である危険物と、支燃物である空気を遮断できない場所では、燃焼の三要素の最後の1つである着火源の対策が大事です。
タバコの火は爆発のもとになる
タバコの火は爆発の元になります。
溶接のように強力な火であれば爆発する、というわけではありません。
静電気のように小さな熱源であっても爆発します。
だからこそ化学プラントでは火をとても恐れます。
車もスパレスターを
車自身も着火源になりえます。
エンジンから出る火の粉ですね。
マフラーにはスパレスターを付けます。
携帯電話も
携帯電話も非防爆の設備なら引火爆発する可能性があります。
プラント外の屋外なら使っている場合もありますが、実は結構怖いです。
立った状態など比較的高い位置で使うなら良いのですが、例えば図面を見るためにしゃがんだ状態で使うと危険性が一気に上がります。
計器室内の空気は新鮮な空気を取り込む
計器室内はDCSやパソコンなど非防爆の設備をたくさん取り扱います。
周囲には危険物がある状態。
引火爆発が起こっても不思議はありません。
だからこそ、計器室内に取り込む空気は限定して、ファンなどで室内を微加圧にします。
空気の取り込み位置は、できるだけ滞留がない高い位置が良いでしょう。地表近くは危険です。
考えられるエリア全面禁止
プラントでは以下のようなルールを付けているでしょう。
プラントや危険物があったエリアは一律タバコを禁止
タバコの火が消えているから問題ない、車の中に置いているから問題ない、という話ではありません。
消し忘れが起こるかも知れないという段階で、持ち込みすら禁止します。
厳密に火を使う工事を管理しようとしたら、危険物を取り扱う領域から10m程度離れた部分まで、という条件が付きます。取り扱い物質や取り扱い量によって変わります。
プラント周りの道路は引火の原因にならないのでタバコを吸っても良い、と条件を付けてしまいたくなりますが、道路にも溜まっている可能性があります。
一度爆発したら、誘発されるリスクがあるでしょう。広範囲に及びます。
だからこそ、エリア全域で禁止というルールをしないと、不安になります。
参考
関連記事
最後に
化学プラントではタバコを吸うことを特定エリア全面で禁止したりします。
危険物がどこに溜まっているか分からず、ちょっとした着火源でも危険になるからです。
着火源を遮断することが最も確実だから、タバコの火を消しているかどうかは関係なく、とにかく持ち込まないと分かりやすくすることが大切です。
大阪万博は、この後どういう対策を取るのでしょうね。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
コメント