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化学機械

キャンドポンプのかんたんな選定指針

キャンドポンプ 化学機械
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バッチ系化学プラントではおなじみのキャンドポンプ(canned pump)。シールレスポンプの1種です。

どうやって設計していいか気になっている人はいませんか?

パッケージ化されていて、設計する要素が無いように一見見えてしまいます。

決めるべき要素はメーカーのHPやカタログを見れば分かるでしょうが、それぞれの要素をどうやって決めるのかは良く分からないと思います。

そこで、ある化学プラントの例としてキャンドポンプの選び方を紹介します。

キャンドポンプ(canned pump)の型式

バッチ系化学プラントで使うキャンドポンプの99%は普通のタイプです。

何も考えずに普通とか標準って書いておけばOKです。

他の種類をなぜ使わないのか?という視点でリストアップしてみました。

  • 循環型・・・高温、低沸点の液をあまり扱わない
  • 高温分離型・・・高温の液をあまり扱わない
  • スラリー型・・・意外と扱いが難しい
  • 自吸型・・・押込み方式が多い

普通・標準以外のタイプでいくつか選択肢がありますが、主だったものを数個選んでみました。

ほとんどが使わないですね。かろうじてスラリー型くらいでしょう。

いろいろな種類が存在しているということだけを知っていればOK

内容物

内容物は運転条件によって決まるので設計という意味では考えることはありません。

ポンプを選定するうえで必要なキーワードを抽出して一般化していきましょう。

密度

有機溶媒系なら水より軽いので、水に合わせて1000kg/m3にしておけば無難です。

設備洗浄で必ず水を使いますからね。

この発想で90%は対応可能。

逆にいつも水相当で対応していたら、思わぬところで足元をすくわれます。

水よりも重たい液体であることを忘れてしまうっていうケース。

硫酸・苛性ソーダなどは普通は水よりも重たいです。

内容物とその重量は忘れないでチェックしたいですね。

プロセス液そのものの密度を提示しても良いですが、少し高めに見積書に提示する場合の方が多いと思います。

粘度

粘度はバッチ系の場合1~10mPa・sで考えればほぼOK。

これよりも高い液体の場合は、そもそもキャンドポンプが使えるのか?って考えるレベルです。

密度と同じく、見積書には少し高めに提示するでしょう。

温度

密度や粘度とは違って、温度は正直に提示するでしょう。

バッチ系化学プラントでは100℃以下での取り扱いが普通なので、適当に書いておけば大丈夫です。

配管にトレースや保温を掛けている時だけは、温度を少し丁寧に書きましょう。

このクラスでは温度が多少高くても、ポンプ選定上には影響出ません。

もっと高いとポンプ内のコイルに熱が溜まるという意味で、ポンプ選定に影響がでます。

温度がポンプ選定に影響があるという意味では、頭の片隅には入れておきたい要素です。

蒸気圧

蒸気圧は基本的に書くことはないでしょう。

温度が高い液体に限定されます。

私は温水用のキャンドポンプでしか蒸気圧を提示したことはありません。

それくらいで十分。

腐食性

キャンドポンプを使うから腐食性はあって当然。

そもそも提示する必要があるのか?ってレベルです。

スラリー濃度

スラリー濃度はユーザーが責任をもって判断しましょう。

メーカーに提示するかどうかとは別問題です。

数wt%程度なら標準型でも使えるでしょうが、それより高い場合はスラリー型を選ぶことになるでしょう。

どれくらいの濃度まで使えるかということはトライアンドエラーです。

自社内でノウハウが溜まっているはず。

pH

pHも記載する必要はほとんどありません。

  • pHが低い特殊液 ・・・そもそもキャンドポンプを使うかどうか真剣に考える
  • 汎用的な酸    ・・・実績で選定を選ぶ
  • pHが高いアルカリ・・・ほぼ無条件でキャンドポンプを使う

こんな感じになると思います。

pHを提示することで、ポンプ選定を変えたりメーカーに選んでもらったりということは少ないと思います。

流量・揚程

流量や揚程は化学プラントの機電系エンジニアの腕の見せどころ。

数少ない計算をする機会です。

計算せずに選定する場合は、既設よりモーター動力が1サイズ大きい・小さいと言った定性的な議論になるでしょう。

それでもある程度使いこなせてしまうのがキャンドポンプの凄いところ。

計算の価値が相対的に低いですね。

材質

材質は機電系エンジニアの腕の見せどころでしょう。

とはいえ、流量・揚程と同じで既設と同じとかSUS304で統一とか、何となく選べてしまうのがキャンドポンプの凄いところ。

そう言っているだけでは何の意味もないので、選び方の基本を紹介しましょう。

本体

SUS304、SUS316L、ハステロイCくらいから選ぶことが普通です。

バッチ系化学プラントの場合はSUS304などで統一してしまっても良さそうです。

ハステロイCを選ぶならマグネットポンプの方が安くて使いやすいと判断できる場合に限定されますが、意外と緩い条件です。

高温・高粘度・高スラリー・高透過性などの特殊条件ではハステロイC以上を選ぶこともあります。

この場合はスラリー型に限定されそうですが・・・。

キャン

SUS304、SUS316L、ハステロイCくらいから選ぶことが普通です。

これも本体と同じ材質にしていれば無難でしょう。

キャンは磁力の伝導性を上げるために肉薄ですので、耐食性を上げるために1ランクアップしても良いかも知れませんね。

この辺は考え方次第。

ベアリング

ベアリングはカーボンが一般的です。

カーボン以外にはPTFEも選択肢になるでしょう。

ほとんどの場合はカーボンで対応できますが、一部カーボンでは対応できない液体が存在します。

材質的にはベアリングのカーボンのみは耐食性のチェックをしておきましょう。

機電系エンジニアがキャンドポンプの選定をするときに、付加価値を最も付けれる部分かも知れません。

ベアリングの設計はキャンドポンプのポイントです

電源

電源周りはユーザーの環境によります。

設計に関連しそうな要素のみピックアップします。

電圧

200V系か400V系かの選択になるでしょう。

最近なら400V一択ですが、古い工場なら200Vも使っているでしょう。

設計要素っぽくありません。

ケーブルサイズ

端子箱の引き込み方法は、ユーザーが指定しやすい部分です。

メーカー標準でも十分ですが、工場の思想が色濃く出やすい部分。

内容物と流量・揚程などの条件からメーカーがモーター動力を選定して、それからケーブルサイズを選定するので、それに合わせる形でユーザーは決定していきます。

設計要素というには主体的に決める要素ではないですね。

防爆

防爆も設計要素としてはほぼゼロです。

危険物製造所なら耐圧防爆構造に限定されます。

これはメーカーの都合です。

エンジニアとしては知っておいた方が良いという程度。

参考

関連記事

さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

バッチ系化学プラントのキャンドポンプの選定指針を解説しました。

型式・内容物・流量揚程・材質・電源

化学プラントでは汎用的な機械ですので、選定する要素は意外と多くはありません。

そういう意味でエンジニア初心者が取り組みやすい設備ですね。

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