化学プラントにおいて、原料や資材の調達は生産活動の根幹を支える業務です。その中心を担うのが調達部ですが、社内の他部署からはどのように見られているのでしょうか?エンジニアの視点から、調達部の役割・課題・そして現実について解説します。
意外と知られていない調達部の実態が見えてくるかもしれません。

予算
調達部はメーカーと直接お金の話をする部門です。
会社としてはコスト削減が大事で、調達部は徹底したネゴシエーションを行います。
これがメーカーいじめに繋がることなんて気にしないです。
メーカー営業から調達部の話を聞くと、良い噂は絶対に聞きません。
「とても厳しい」という感想ばかり。
いつも金額高い!もっと安く!と責めるのが調達部の仕事。
予算ありきで、予算を越えないような努力までします。
さてその予算ですが、設定している側は実は結構雑です。
例えばポンプをメーカーが100万円で売りたいと思っていたとしましょう。
調達部からネゴが掛かることを予期して110万円で提示します。
エンジニアはそれを予期して120万円くらいの予算を確保します。
ここで、無事110万円の見積が提示されると安心のはずですよね。
調達部はここからが勝負。
あれやこれや理由を付けて、105万円くらいまで下げようと努力します。
120万円の予算に対して、110万円ならすでに目標達成なはずなのに。
110万円に対してどれだけコストを下げたかという点を評価指標にします。
120万円 | エンジニアの見積予算 |
110万円 | ネゴ前のメーカー見積 |
105万円 | 調達部の目標額 |
100万円 | メーカーの期待額 |
正直面倒ですよね・・・。
一応、過去の実績などを調べて比較検証しようという努力はしますが、大きな効果は得られません。
納期
調達部は納期にシビアに見えるでしょうか。
実際には何も管理していません。
契約段階で納期を決めるまでは、それなりに注意をします。
依頼者のニーズに合致しているかどうかという視点もありますが、複数案件で同一納期のものを統合して契約しようという狙いも持っています。
数や額が多い方が、ネゴシエーションの効果も大きくなりますからね。
とはいえ納期に関して厳しく攻めることはできません。
「嫌なら買うな」とメーカーから拒否されるだけですからね。
契約が終わったら、興味は途端になくなります。
後はメーカーとエンジニアにお任せ。
- エンジニアの図面承認が遅れればエンジニアが悪く
- メーカーの図面提出や資材調達が遅れればメーカーが悪い
- だからこそ途中経過は興味がない。
こんなロジックです。
納期は調達部が管理するべきであありますが、限界はあるでしょう。
人間性
調達部が意外と気にするのが人間性です。
メーカーの人間性を見ています。
良い風に読み取るか・悪い風に読み取るか、意見が分かれそうですね。
でもこれって悪い意味です。
というのも、調達部はスキル的なものを基本的には持っていません。
口だけで勝負する世界。
予算はエンジニアにお任せ、納期はメーカーにお任せ、業務処理は事務仕事で自動化されていく。
業務での付加価値は低いです。
業務を通じてスキルアップを期待できる世界でもありません。
ローテーションで畑違いの人を調達部に異動させやすいのはこれが理由。
買い物は普通はみんなしますよね。
バックグラウンドを考慮せず、その組織内にいる人なら基本的に誰でもできるのが調達部
だからこそ、人間性くらいを見抜くという部分くらいしか付加価値を与えられないでしょう。
調達は事務系の仕事?
調達部は事務屋の仕事っぽく見えますが、本当にそうでしょうか?
そんなことはないですよね。
技術系のバックグラウンドがある人が絶対に必要です。
SUSのタンクを購入するのに、SUSって何?フランジって何?という状態では、物は買えませんよね。
これくらいなら調べればある程度分かりますが、本当に大事なのはメーカーの事情を知ること。
製作物を作る・工事を行う人たちがどういう発想で仕事をしているのか。
ここを知るためには技術的なバックグラウンドがある程度必要です。
そうでなければ、事務屋というか役所的な立場でしか取引先であるメーカーを見ることができません。
メーカーからも、「いくら調達部と話しをしても会話が通じない。最終価格はいくら?しか聞かれない。冷たい。」という感想を持たれることになるでしょう。
調達は小人数
調達部は一般に人数がとても少ないです。
ギリギリの人数で回しています。
- 基本的に誰でもできて
- スキルアップは望めず
- 付加価値も低い
分かりやすいですよね。
自動化の対象として真っ先に挙がる部門です。
だからこそ人数は少なく、忙しいので事務処理に追われる。
悪循環です。
参考
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最後に
化学プラントにおける調達部は、原料や資材の調達を支える存在である一方、その業務実態には課題も多く存在します。予算や納期は他人任せ、人間性での判断、スキル不足など、技術系エンジニアから見た調達部には疑問符も付きます。
技術的なバックグラウンドを持つ人材の配置や、より実務に即した運用体制の整備が求められる時代に差し掛かっているのかもしれません。
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