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化学工学

収支の考え方が大事な化学工学

収支バランス 化学工学
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収支(balance)について解説します。

化学工学の最初に出てくる考え方です。

この考え方は、化学工学つまりプロセス設計だけに効くと思いがちですが、意外といろいろな場面で使えます。

基本的な四則計算で済む世界ですが、パラメータが多いので間違えやすいことが難点。

ゆっくり考えて間違えないようにしたい分野です。

収支という表現以外にも表現方法はありそうですが、仕事を初めてすぐに化学工学を学んだので仕事そのものとリンクして覚えた記憶があります。

関数とは違う

収支(balance)は中学校の数学で習う関数とは違います。

この意識は最初に持っておきましょう。

関数

関数のイメージはかんたんに表すと以下のようになります。

関数イメージ(balance)
関数のイメージ

関数という箱があって、何かしらの入力を入れてあげると出力が出てくるというのが関数のイメージ。

$$ f(x)=2x $$

という関数であれば、x=1のときにf(x)=2、x=2のときにf(x)=4・・・というようになります。

関数は中学校の数学で出てきますが、Excelやプログラミングで出てくる関数もこの考え方と同じです。

収支

収支の関数と同じようにイメージで表すと以下のようになります。

収支のイメージ(balance)
収支のイメージ

この絵と関数のイメージだけ見ているとほぼ同じように見えます。

対象と書いている箱部分は、何もしません

関数のように何かの働きをするものではありません。

単に流入として入ってきた量を、そのまま流出として出すだけ。

関数よりも簡単なように見えます。

収支では複数の流入複数の流出を考える点が特徴的。

流出イメージ2(balance)
流出イメージ(複数)

このように、3つの流入があって2つの流出に分かれて、対象には何もたまらない、というようなケースを考えます。

収支は関数のように一般化するわけではなく、特定の条件での数値に着目しています。

関数でも変数が複数個設定できますし、収支を関数として表現することは不可能ではありません。

その労力がとても大きいわりに、メリットがあまりないから関数として表現しないと言っても良いでしょう。

マテリアルバランス・ヒートバランス(balance)

収支を使う代表例としてプロセス設計のマテリアルバランス・ヒートバランスがあります。

教科書的な例を紹介しましょう。

マテリアルバランス(balance)
マテリアルバランスのイメージ

マテリアルバランスは重量のバランスを見るもの。

設備に100kg/hで液体が常に入っていて、上部から30kg/h・下部から70kg/h出ていく設備です。

気液分離槽などがこのイメージ通りの動きをします。

ヒートバランスの例です。

ヒートバランス(balance)
ヒートバランスのイメージ

これは1000kg/hで10℃の水が設備に入ってきて、30,000kcal/hの熱を加えて、39℃の水が出てくるという加熱設備のイメージです。

流量というパラメータと温度というパラメータを、同時に扱うのも収支の特徴でしょう。

左右にメインのパラメータの流量を取り、上下にサブパラメータの温度を取るというような工夫も可能です。

放熱を計算に含めることも可能。

計算に含めるべき項目を漏れなくピックアップするための整理ツールが、収支という言い方もできます。

化学プロセスでは多成分の組成を扱って、反応により組成が変わるという条件も加わり、関数化もむずかしいことが多いです。

これらのパラメータを駆使してバランスを取ることこそが、プロセス設計と言っても良いでしょう。

制御

制御も収支と同じような考え方ができます。

制御イメージ(balance)
制御のイメージ

制御は関数収支を足したようなイメージでしょうか。

制御部分が関数そのもの。目標値が関数でいうx、測定値が関数でいうf(x)です。

ここにフィードバック量が入ってきたり、外乱やフィードフォワードの量が入ってきます。

収支の考え方を学んでなかった学生時代に、古典制御を学んだので少し戸惑った記憶があります。

化学反応でも制御を使うのでこの考え方をしますが、モデリングが複雑になります。

外乱が多いですからね。

できるだけ外乱の要素を減らして制御を確実にするといわれますが、上のイメージで考えれば理解しやすいと思います。

故障

故障も収支と同じような考え方が一応できます。

故障イメージ(balance)
故障イメージ

保全担当者は是非とも理解しておきたいことです。

設備が故障するには原因がいくつも考えられます。

その設備が故障してある結果が出てくるときに、どの部品が壊れているか考えるために活躍します。

例えば、ポンプが動きません!と製造から依頼が来たとしましょう。

ここで原因としては、モーター・カップリング・ベアリング・インペラなど複数の原因が考えられます。

部品図を眺めて構造を理解することが確かに大事ですが、その情報をマッピングするときなどに収支の考え方を使うことが可能です。

漏れなく調べるという意味もありますが、それを誰が見ても分かる形にするときに使います。

保全担当者は部品図だけで話をしようとする傾向が高く、ユーザーである製造部はプロセス設計の理解があるので、その間を繋ぐ意味で収支の形で表現すると相互理解に役立つと思います。

情報の伝達

情報の伝達も収支の考え方で理解できます。

情報伝達イメージ(balance)
情報伝達イメージ

上流部門から情報が来て、それを自部門で加工もしくはそのまま下流部門に流す、という仕事は一般にあります。

これを漏れなく行うためには、組織や関わる人に関するマッピングが欠かせません。

初心者が上司に報告したときに

「その後どうするの?」「○○さんには伝えたの?」

というような質問を受けたら、次のアクションとしての誰にどの情報を送るかというようなことを聞かれている可能性が十分にあります。

自分のところが情報のやり取りの終着点である可能性は低いですけど、それを意識できてないケースが多いですからね。

情報のやり取りの場合は、例えば第三者から外乱が入ってくる可能性もあります。(上司が外乱という場合も・・・)

この辺も収支では表現可能ですね。

参考

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最後に

収支(バランス)の考え方を紹介しました。

化学工学の最初に学ぶことです。

マテリアルバランスやヒートバランスなどのプロセス設計以外にも、制御・故障・情報の授受といういろいろな分野に使える考え方です。

漏れなく情報を整理するツールとなりえますね。

化学プラントの場合は、製造部がこの考え方を持っているので、相手に説明や説得するときにも活用しましょう。

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