入社試験(Entrance exam)の問題について解説します。
みなさんは試験問題って作ったことありますか?
友達と勉強している時に、1問1答式の問題を出したことがあるかも知れませんね。
大学・大学院・資格試験など数多くの試験を受験していても、問題を作る側に回る人はそうはいないはずです。
私は入社試験の技術面接時に、面接官が技術的な質問をするための質問内容を作成する業務を行ったことがあります。
技術的で専門的な内容なので、面接官は質問すら思いつかないという場合があります。
そこで面接官が困らないようにするための質問内容です。
面接の日程が決まるのが、数日前なので半日~1日程度で質問内容を考えてくださいと依頼を受けます。スピード重視です。
面接官は社長クラス
化学プラントの機電系エンジニアリングであれば、入社試験は数回に分けるケースもあると思います。
事業所面接と本社面接のような分け方です。
今回のテーマは本社面接です。
事業所面接で技術的な素養を査定し、本社面接で人間的な部分を査定するというスタイル。
技術的な部分は事業所面接で完結しているはずですが、本社面接で技術部分を何も話さない訳にもいかず、何となく技術発表をさせるとしましょう。
発表をした瞬間に質問をしないといけません。
そのための質問つくりに先輩機電系エンジニアが割り当てられる場合があります。
研究発表は千差万別
入社試験の研究発表で問題作成が難しいのはたった1つの理由だけです。
発表内容が千差万別。
研究室の研究テーマは年々変わります。
化学会社の化学系研究者のように、毎年同じ研究室の学生が入社希望をするわけでもありません。
あまりにも発表テーマが広すぎるので、どれだけ知識を持っている人でも即座に質問するのはさすがに無理です。
そこで先輩機械系エンジニアの出番。
面接を受ける学生のPPTを入手して、質問内容を考えます。
作成時間が極めて短い
問題を作成するうえで、厄介なのが時間。
極めて短い時間で作成しないといけません。
例えば昼くらいにメールが来て、今日の17時までに作ってほしい。
他の業務はホワイトでも、こういう時だけ急にブラック集を漂わせるのはJTCあるあるでしょう。
時間が短く相談できる相手もおらず1人で考えなければいけない。
困りますね。
大学時代の基本的な知識を聞く
こういう異常な状態で質問を作るにはコツがあります。
それが、大学自体の基本的な知識を聞くということ。
機械系エンジニアならこれがとても楽です。
四力(材料力学・熱力学・流体力学・機械工学)が該当します。
研究のPPTは研究テーマの概要だけが書いてあります。
その背景には大学時代に学んだことがあるのですが、研究発表としては省かれます。
というのも研究発表を聞く相手にはあまりにも当たり前の知識だから。
ですが、入社試験は別。
化学プラントの面接官の役員が四力なんて知っているわけがない。
化学工学の出身者なら熱力学や流体力学はある程度知っているかも知れません。
でも、研究テーマとどう結びついているかを発表を聞いて即断するのは難しいです。
だからこそ試験問題として確認してみるというのが王道。
例えば「マイクロバブルの研究をしています」なんて言う例があれば、強引に流体力学の話に持ち込みましょう 笑
適当に密度とか温度と絡めて、流体力学の基本的な質問を作ればOKです。
このスキル、会社では結構重要です。
何か知らないテーマでも自分の知っている分野に連結させて答える方法。
お茶を濁すという立派なスキルです。
正誤は大事ではない
質問に対する答えの正誤は実は問題ではありません。
分からない質問でも答えに詰まることなくそれなりに答えることができるかどうか。
これを重視しています。
というのも分からなければ聞けばいいから。
何が分からないか言語化できることが大事だから。
面接官は仕事を通じて、このことを良く体感しています。
工場系のエンジニアでは、こんな傾向があります。
- 言語化できる人は成長速度が速い
- 言語化できない人は成長速度が遅い
分からないことを分からないままにしがちということですね。
言語化に対する訓練は、研究活動でも鍛えることは可能です。
ただし議論を避ける学生が多いので、一般には習得速度は遅めです。
言語化については面接段階で一定のスキルにあるかどうかを見ていますが、それよりも素養があるかどうかを見ています。
まだ芽が出ていなくても、仕事をしていくうえで伸びるはずだ。
ここを見ています。
言語化は物事を理解するというプロセスでは、かなり高度なレベルにあります。いきなり先生のような言語化をできるレベルまで到達しなくても、言語化しようとしてアウトプットをするということ自体が大事です。アウトプットをして指摘をもらい改良していくPDCAを回しましょう。
仕事では明確な指示を
発表の場など会議に対してはお茶を濁す方法でも良いでしょう。
いかにもJTC的なやり方。
ですが、実務では具体的で明確な指示を出していかないといけません。
これは工場の技術系のエンジニアならどの職種でも同じです。
機械系エンジニアなら図面屋さん・メーカー・協力会社などへの指示です。
お茶を濁しても成功することはあまりありません。
面接ではお茶を濁す力を求めておきながら、現実には具体的な指示。
矛盾していますね・・・。
これが事業所面接だけで完結するような採用だったら違ってくると思います。
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最後に
入社試験の研究発表面接での問題作成について解説しました。
面接官の知識・発表テーマの幅広さ・時間の短さが課題となります。
テーマが何であれ大学時代の基本知識に結び付ける力が作成者には求められます。
正誤が大事ではなく即興でお茶を濁す力が大事ですね。
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