化学プラントの保全でも修理の実作業ではなく、長期計画や保全指針などエンジニアリングや企画に近い仕事があります。大きなプラントほどこの価値はあるのですが、実態は実務の調整に時間が取られていて、本当に大事な部分が後回しにされがちです。
本記事では、化学プラントの保全計画の部署でこういうことをすれば大きな価値があると、私自身が思ったことをまとめました。
この記事は、保全計画シリーズの一部です。
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ここで紹介する保全メンバーは、地方の高卒・高専卒でパソコンは得意ではなく言語化もあまり上手ではない、どちらかというと体を動かすほうが好きという人をイメージしています。化学工場の保全計画向きではないけど、現場オペレータもできないし、他の間接部門も難しい。こういうメンバーです。
フォルダの整理
まずはフォルダの整理。個人で仕事が簡潔しない多くの仕事では、共通サーバーなどでデータを管理してそこで仕事をしているでしょう。保全の仕事も例外ではありません。
保全業務で扱う点検情報や計画類は化学プラントの短期・中長期の計画を立てる上で、とても大事です。保全が一匹狼的な仕事をしていると、個人持ちのデータとなってしまいます。上司から情報の提示を求められて、すぐに提出できればある程度は問題ないでしょう。しかし、フォルダの整理ができていない人が、何十年にわたるプラントの保全情報を正確に把握できている可能性は低いです。
情報がバラバラであれば担当者に聞いても分からないので、上司が自らそのフォルダを探しに行くかもしれません。しかし、フォルダ階層がしっかりできておらずどこに何があるか分からないと、無駄な時間を浪費していくだけでしょう。
分からない情報を頼りにすることはできず、「保全情報がありません」という類の報告をしてしまいかねません。保全はデータの蓄積が大事なはずなのに、それができないなら価値はないのでは?と経営層から疑われても仕方ないでしょう。
フォルダがバラバラだと担当変更で引継ぎをするときにも確実に困ります。結局は、引継ぎでは何もわからず、一年間の仕事をして実態が把握できてようやくフォルダ整理をしようと思うかもしれません。この一年間はとても大変で、仕事のパフォーマンスが上がらない意味でも損です。
フォルダの整理は多くの人に任せては結局うまく行かないことが多いです。ルールを作って整理しようにも、自由に改造できてしまうならどうしても個人ごとの好みが出てしまいます。かといって1人でルールを作ろうとしたら、例外への対応ができず破綻。結局誰もしたくなくなります。
だからこそ、フォルダの整理をしっかりして、典型例を作ってくれる人は貴重です。その人をモデルにフォルダを標準化することも考えれます。管理職が押し付けるよりも担当者から推進する方がやりやすいと個人的に思っています。
書類の電子データ化
保全の仕事では紙で仕事をすることがまだまだあります。
・日々の工事連絡用紙
・メーカーの点検報告書
・工事計画書
こういうものは、昔は紙でやり取りしていたけども、今では電子でも可能な範囲が多いです。それでも「紙で今までやってきたからこれからも紙でいいだろう」と考える人は多いです。結果、大量の仕事が紙のままで、書類置き場に困ることになります。捨てるに捨てれず、プレハブなどを立てていって置き場所を何とか確保。誰も見ない書類が山積みになっていきます。
だからこそ、これらの紙の情報を電子化すると価値が出てきます。典型例がメーカーの報告書。これは後で述べます。工事計画書の類も、紙でしか見れないと意外と困ります。例えば、去年のSDMで何をして今年は何をする予定なのかといった情報は、工場運営の会議などで急に話題になることもあります。サーバーにデータがあれば会議中に見て即答できても、紙でしかないと持ち帰って検討せざるを得なくなります。回答が遅いというのは、結構損ですよね。
報告のテンプレ化
保全では報告を求められることが多いです。主にトラブルの報告です。これが得意でない保全担当者はとても多いです。口頭でも文書でも言語化に慣れていない人はとても多いです。これでも組織として回るかもしれませんね。
不得意なことに時間を割くのはもったいないので、報告をテンプレ化することは効果的です。報告書などは書くべき項目を欄で分けているでしょう。これをもっと露骨に、文章例まで作ってしまうなどができれば目立ちます。
テンプレなんて作らなくても・・・と思うかもしれませんが、保全メンバーの実力と底上げを狙うならこれくらいから始めないと現実的ではありません。できる人がわざとテンプレを作って、ほかの人にも浸透させるくらいの方が良いでしょう。
メーカー報告書からデータを抽出・整理
紙を電子化するという価値の中でも、メーカー報告書は保全にとってとても大事です。メーカー報告書は社内では貴重な資料です。専門家の意見を反論できる人は基本的にはいないです。同じ内容であっても、メーカーから口頭で聞いた情報を保全担当者が社内で伝えるよりも、はるかに効果的です。
メーカーの点検報告書はその瞬間のデータです。積み上げれば貴重なデータとして活用できても瞬間データでは活用できません。板厚などの情報は年次変化を簡単にデータにできるのに、瞬間データの資料しかないと活用できません。定性的なコメントもその気になれば1枚の資料にまとめれます。
せめて1つの機器に対して、生産品目・運転時間の情報と保全点検記録がリンクしていると、かなり重要な情報になるのに、ほとんどの人は活用しようとしません。だからこそ、こういうデータをまとめれる人は、保全担当者として貴重な存在になれるでしょう。紙の資料を電子化して、必要な情報をまとめるだけ。これで価値アップするのが保全です。
この情報はメーカーからは紙で提出されることが今でも多いです。メールで持っている場合でも、先に取り上げたフォルダ問題でどこにあるか探せなくなります。作った情報を、必要な人が簡単にアクセスできる場所を作ることは、ここでも大事です。
SDMの資料作成を自動化
SDMの資料は、保全担当者が手動で作り上げることが普通ではないでしょうか?
・次回のSDMで点検する項目を抽出
・製造と協議して決定
・設備ごとに仕様書を作成
・各会社に点検の購買依頼書を発行
少なくとも発注に至るまでに上記の作業をしないといけません。この作業に多くの時間が掛かると言われていますが、実際には転機や手入力の部分が多いです。
手入力はできるだけ少なくすることが業務効率化には必要ですが、自動化をするとなるとそれなりにシステムを作り上げようとして結局上手いこといかなくなります。例えば専任の部門でこれを作り上げようとしたら縦割りな考え方で、物事が進まなくなっていくでしょう。
自分たちの作業は自分たちで軽くする。これができる人は重宝されます。
参考
最後に
化学プラントの保全計画において価値を生むのは、必ずしも高度な技術や大規模な改善ではありません。
フォルダ整理、電子化、テンプレ化、データ整理といった一見地味な取り組みでも、情報の活用性を高め、意思決定のスピードと精度を向上させます。
日々の実務に埋もれがちなこれらの業務こそ、長期的に見ると大きな差を生むポイントです。保全担当者として価値を高めるためには、こうした基盤づくりに目を向けることが重要です。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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