化学プラントでは多くの撹拌機を使います。反応に使う反応釜や単純に混ぜるだけの撹拌槽など役割はいろいろあります。撹拌機の性能1つで生産性能が決まってしまう場合もあります。
撹拌機メーカーとしては撹拌性能を上げるために、色々な形状を開発しています。ユーザーとしてはかなり慎重に考えないといけない場合があり、私は単純更新でもかなり恐る恐る取り組んでいます。
この難しさについてまとめてみました。
何が影響するか分からない
撹拌機はパドル翼に代表されるように、撹拌羽根と撹拌軸を組み合わせてモーターで回す構造をしています。
既存の設備を更新する時に、新しい設備の形をほぼ同じに揃えることは可能です。ただし、使用条件に合わせるために、どこまで形状を揃えて良いかはわかりにくい場合があります。
翼の径・幅・高さを合わせていても、図面には書いていない曲がり・表面仕上げ・厚みなど主要ではない要素で、反応成績が変わったりします。機械系エンジニアとしてはいざ更新が終わって一息ついたときに、原因不明のトラブル対応で呼び出され、解決しないままずっと攻められる。怖い展開です。
単純に混ぜるだけの設備なら、例えば省力化などを目的にメーカーの提案する撹拌機にすれば良いでしょうが、そうとばかりも言えません。ユーザー側でシミュレーションや小実験をして傾向を掴んだうえで、それでも実機で問題が起きるかも知れないと思いながら慎重に取り組みます。
気が付いたときには製造中止で、すぐに変えないといけない
既存の設備で撹拌機を長年使っている場合、その撹拌機がすでに製造中止になっていることを知らずに、撹拌機が壊れてしまって問題になる場合があります。
あと1年持つだろうを続けた結果、いざ壊れ時には同じ形状の撹拌機が手に入らない。そして、反応性正規が変わってしまう。
時間があればプロセス面でリスク回避ができるかも知れなかったのに、時間が無いからすでにある物・簡単に手に入る物を調達せざるを得なくなります。
撹拌機はこういうリスクを抱えた設備であることを認識し、社内でどれだけの設備が該当するかを整理し、更新計画を訴えるようにしておきたいですね。
どこまで変えていいか分からない
撹拌機を更新する場合に、どこまで更新していいか分からない場合もあります。
- モーターだけ交換しようと思ったけど、モーターがすでに入手できず、撹拌機全体を変えないといけない
- 撹拌機だけを変えようと思ったら、座である天板を変えないといけない
- そう思ったら設備本体を変えないといけない
- お金が無いので交換できない
こういう展開になりえます。繰り返しますが撹拌機は怖いです。安易に交換できると思わず、部品の構造・使用条件・調達可能性など幅広く情報を掴んでおく必要があります。
世間一般にある撹拌機で対応できるなら良いのですが、そうではない場合がとにかく怖いです。
汎用性の追求
撹拌機を交換する場合、汎用性をどこまで追求するかは1つの問題になります。
プロセスが固まっていて、新しい生産品目が入ってきてもほぼ条件が変わらない設備なら問題ないでしょう。例えば、排水処理のために廃油や排水を混ぜるだけのプロセスなどは該当しやすいです。とはいえ比重・粘度の問題や不純物の発生など内容物の特性に応じた対応が求められることもありえます。
どんなプロセスが来てもある程度対応できるように、撹拌機は汎用性を求める方が良いという考えがバッチプロセスです。ここに特殊な撹拌機を入れてしまうと、専用設備となってしまい稼働率を十分に確保できないことにもありえます。
この背景を知らないメーカーからはこういう提案を受けたりするでしょう。
- こっちの方が安いですよ~
- 性能差はほぼ無いと弊社で実験しました~
- 他の会社はみんなこっちのタイプに変えていますよ~
信じるかどうかは個人の考え方や会社の判断によりますが、鵜吞みにするのだけは止めた方が良いというのが私のスタンスです。
参考
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最後に
撹拌機を交換するのは意外と怖いです。単純更新ですら意外とできなかったりして、単純更新のつもりが微妙に違う部分があって性能に影響を与えたりします。
このリスクのある撹拌機を自プラントでどれだけ抱えているか把握して長期計画を練ることは、機械系エンジニアにとって大事なことだと思っています。
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