バッチプラントで大活躍するグラスライニング装置。
これを製作しているメーカーに対するイメージは、化学工場では生産技術以外にも強い興味を持たれています。
生産技術の機械系エンジニアなら、今回の情報を口頭で説明できるだけで、かなり信頼感を持たれることでしょう。
10年~20年くらい過去の情報と今の情報をリンクさせていると、強いです。
神鋼環境ソリューション
神鋼環境ソリューションは日本でもっとも有名なグラスライニングメーカーです。
米国ファウドラー社と技術提携し、神戸製鋼所から分離独立して、神鋼ファウドラーという会社を設立しました。
その後、神鋼パンテックという名前に変わり、今では神鋼環境ソリューションという名前になっています。
20年くらい前の話です。
それより前の機器図面を見ていると、神鋼パンテックという名前ですので日常業務で目にしている方も多いでしょう。
兵庫県明石市の少し西に大きな工場があります。
神鋼環境ソリューションに対して私が特に感じている特徴は以下の通りです。
- 大量の反応器を製作できる工場能力
- 技術開発と工場との密接な関係
- 各種情報公開
工場規模が大きくて、製作可能な反応器数ば膨大であることは大きなメリットです。
納期のかかる反応器で、年間受注数が少ないと、ユーザーとしては発注タイミングを考えたりその後の運転保全を考えたりと、気にすることが多いです。
そのストレスをできるだけ下げることができるので、ユーザーとしては助かるという意見が多いでしょう。
納期の問題もそうですが、技術的な解析についても他の追随を許しません。
研究開発も盛んにおこなわています。
グラスライニングは神鋼環境ソリューションにお願いすれば安心。というより、他に選択肢がないというのが実態です。
研究開発に限らず、各種情報の公開が他社より進んでいて、まさにトップメーカーと言う認識です。
日本ガイシ
日本ガイシはいわゆる二番手のメーカーとして、私は認識しています。
フランスのドゥ・ディートリヒ社と技術提携をしています。
撹拌機のマックスブレンドは住友重機械プロセス機器の技術から生まれたものです。
NGKケミテック・池袋琺瑯工業など過去に何度も名前が変わっています。
埼玉県所沢市に工場があります。
この会社を私が一番ではなく二番と位置付けるのは、理由があります。
- 工場の規模が小さい
- 技術に関する知見が少ない
- スピード感に欠ける
日本ガイシのグラスライニング工場は規模が小さいです。
工場内のラインコントロールが大変で、納期の調整が非常にしにくいです。
最終工期の変更とまではいかなくても、図面や検査の日程はユーザーが指定できる範囲を越えて、メーカーの都合に振り回されてしまいます。
使用上の問題があっても、メーカーとして知見を持っているわけではなく、別の会社にヒアリングしないといけません。
スピード感を損ないます。
他にも、見積や技術的な問い合わせをしても、やはりスピード感に欠けます。
どうしても神鋼環境ソリューションの方に期待してしまいます。
これらのことは日本ガイシ自体も理解しているはずです。
グラスライニングの主目的である耐食性グラスとしての技術は、2000年ごろには頭打ちになっています。
ここで差が付かないわりに、生産能力などで差がある以上、日本ガイシは別の機能を探索していきました。
それが、静電気帯電防止・ナトリウムフリー・熱伝導性向上などのオプションとして登場しました。
医薬工場・半導体工場などでニーズがあると思います。
今では神鋼環境ソリューションも同じような技術を開発していますので、一見差があるとは思えません。
狭い業界だからこそ厳しい競争にさらされていますね・・・。
生産技術以外の人にはこの情報があまり入ってこないので、神鋼環境ソリューションが駄目な時に日本ガイシはどうなのだ?という問い合わせを社内で受けることでしょう。
この場合に、どう答えるかはユーザー次第です。
GL HAKKO
GL HAKKOはグラスライニングメーカーとして、いろいろな意味で注目をしています。
東京産業・八光産業などユーザーから見たら名前が何度も変わっているのは、他社と同じです。
今は旭製作所のグループ会社になっていますね。
大分県中津市に工場があります。
10年くらい前に債権取り立て不能の恐れがありました。
ここが最大の不安要素。
今の技術力はともかく、当時多くの技術者が会社を去ったであろうことは容易に想像できます。
これを立て直すのに10年では難しいのでは?と今でも思っています。
若い人だとこの辺りの認識がなくて見積額の安さだけで手を出して、後で痛い目を見るときには選んだ人は異動していた。なんてことが起こりえます。
長年取り扱っていた人からは、印象がとにかく良くありません。
運転オペレータや保全からは、特に。
これはGL HAKKOも当然認識していて、技術開発よりもメンテナンス関係に力を入れていると感じています。
メンテナンスで実績を上げて、印象改善を図っていこうという感じでしょうか。
10年20年と掛かる長期的な視点で見ないといけないですね。
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最後に
グラスライニング装置メーカーの個人的なイメージをまとめました。
神鋼環境ソリューションがやはり一番信頼できます。日本ガイシは二番手・GL HAKKOは今後に期待という感じです。
どこか1社に偏った付き合いは、長期的には好ましくないので、メリットデメリットを考えてユーザーごとに戦略を持たないといけないでしょう。
高い買い物ですからね。
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