化学プラントの製造技術と生産技術の違いを解説します。
生産技術も製造技術も製造業の技術職としては非常に大事。
必要なことは確かですが、組織としてはきちんと構築されているとは限りません。
割と水物です。
組織設計と関連してきます。
恥ずかしながら、私は生産技術と製造技術の違いを最近まで意識していませんでした。
生産技術と製造技術という仕事名があることすら意識していませんでした。
調べてみたら私は生産技術として10年以上仕事をしていたことを、今さら知りました。
製造技術と生産技術の違い
製造技術と生産技術の違いは端的に言うと以下の通りだと思います。
- 製造技術:製造課にどっぷり浸かって、製造プラントに関する技術的な業務を行う
- 生産技術:製造課から離れて、工場全体に関する技術的な業務を行う
製造課との密接度合いで考えると分かりやすいと思います。
組織体制
製造技術と生産技術を組織という目で見てみましょう。
製造技術は製造管理の業務に紐付いて、生産技術は生産管理の業務に紐付く形です。
製造管理の組織の方がイメージしやすいと思います。
製造課のラインはこのように、課長-係長-主任-班長-一般というライン構成を取ります。
課長や係長は管理職という位置づけです。
班長や一般はいわゆるオペレータ。
一般オペレータとして入社して、キャリアを積めば班長や主任に昇進していきます。
主任は大卒の社員が担当するケースもあります。
製造技術は製造ラインに紐付いたポジションになりやすいです。
この例のように、製造ラインから派生しています。
製造技術者が課長クラスの管理職でない場合は、課長が製造技術者を労務面なども含めて管理します。
製造技術者が課長クラスの場合は、こちらのような例になるでしょう。
製造技術職が課長クラスの場合は、製造ラインの課長からの指示や管理を受けない関係になります。
この構成になると、製造技術として配置していていいのか?という問題が出ることがあります。
現場に詰めるわけでない製造技術管理職が生まれやすいからです。
それなら生産技術として配置しても同じだろうと。
製造技術を製造管理の部署に配置せずに、一式生産技術に集約する場合は実際にあります。
この場合の課題は、製造管理で起こった問題を生産管理になかなか上げないということ。
製造ラインで起こった問題はとにかく製造ラインで解決しよう!
姿勢は美しいのですが、検討時間が伸びて解決しないままというケースが多いです。
無理して頑張ってしまう国民性や文化からすると容易に想像できますね。
製造技術の仕事の概要
製造技術は化学プラントの場合は、プラントの工程解析や工程能力の把握を行いながら、合理化案を検討する仕事が花形です。
化学反応や化学工学に関する知識が大事な技術職です。
- 工程解析
- 合理化案の検討
- 反応トラブル
- 原料トラブル
- 設備トラブル
- 人間関係トラブル
製造活動を行っていると、日々いろいろな問題が起きます。
反応に関するトラブルは製造技術が担当することが多いでしょう。
運転データの解析、オペレータへのヒアリング、対策案の提案などを行います。
製造課に配属されることが多いので、製造プラントで起こっている問題を直接入手できることが多く、製造プラントの実態を知りやすいポジションです。
日々のトラブルを解決する部分が多く、判断までのスピードとPDCAを回すことが大事です。
生産技術の仕事の概要
製造技術は製造課内という範囲内での業務になるので、どうしても個別最適に走りがち。
そこをカバーするのが生産技術と考えましょう。
工場全体が範囲なので、種類は多いです。
- 新製品の導入
- 製造技術でカバーできない規模の製造トラブル解析
- 新設備の導入
- 設備の保全
生産技術は製造技術に比べて範囲は広いですが、製造技術のような慌ただしさは少ないです。
1の新製品の導入は、プロジェクトマネジメントの世界になります。
生産計画との関係が深いので、生産計画・企画と同じ組織に割り当てると都合がいいです。
生産計画・企画が事務系、生産技術が技術系、という感じですね。
2の製造現場では解決できない問題としては、例えば社内外の実験チームに依頼する窓口が代表例。
他には工場内の複数のプラントで共通的な課題を解決したり、共通的な運転方法のマニュアルを作ったりします。
3の新設備導入は、1の新製品導入の場合もありますが、単純更新という場合も含まれます。
プロセス的な理解がなくても仕事が進みやすいポジションなので、機電系のエンジニアが担当することが多いです。
4の設備保全は比較的振り回されやすく、製造技術と似た感覚でのスピードが求められます。
保全エンジニアはこの部分の仕事を担当することが多いです。
求められるスキル
製造技術と生産技術に求められるスキルは同じように見えて、化学プラントの場合は結構違います。
- 製造技術:有機・無機・化学工学など化学系
- 生産技術:化学系(新製品導入やトラブル解析)、機電系(設備導入や保全)
化学系なら製造技術と生産技術のどちらも選択肢に上がりますが、機電系はほぼ生産技術に固定化されるでしょう。
製造技術と生産技術で求められるスキルが似通っているからか、化学系はローテーションがされやすいです。
一応は適正的な部分で多少の違いはあります。
- 製造技術:製造オペレータとコミュニケーションを取るのが好き
- 生産技術:技術的にじっくり考えることが好き
性格的に明るいかどうか、積極的に意見を言ったり主張したりするかどうかで、理解しても良いかもしれません。
人材が不足している場合は、そういう違いは無視してとりあえず空いているポジションに割り当てて、数年でローテーションするから我慢してください、という説得を受けることでしょう。
そういう時に限って、数年では済まずに10年くらい変わらないということも起こりえます。
1~2年もして慣れてしまって苦にならなければ、ちょっとくらい先延ばししても良いだろうと思われて、ズルズル行ってしまいます。
1~2年で「もう無理です」と悲壮感を漂わせた主張して、3~4年目でようやく変えてもらえるという感じですね。
参考
生産技術は機電系エンジニアで製造業に就職した人の鉄板職場です。
入社前にイメージを深めるためには、以下のような本で勉強するのも1つの方法でしょう。
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最後に
化学プラントの製造技術と生産技術の違いを解説しました。
製造課に紐付くのが製造技術、一歩離れた目線で仕事するのが生産技術です。
現場に振り回されやすいが即決即断的な仕事に注力する製造技術と、じっくり考える生産技術。
化学系なら性格的な部分を適性として考慮して配置されることもあるでしょう。
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