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渦巻ガスケットとは?構造・特長・使い方を図でわかりやすく解説

渦巻ガスケット 配管
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プラントの配管フランジで使われる渦巻ガスケット(ヴォルテックスガスケット)は、高圧・高温環境に強く、近年採用が広がっているガスケットの一つです。

この記事では、渦巻ガスケットの構造・特徴・他のガスケットとの違いを図を使ってわかりやすく解説します。選定や保守に関わる機械系エンジニアや保全担当者の方に向けて、実務的な観点で役立つ情報をお届けします。

1MPa以上の高圧のラインを追加します。

1MPaに耐えるガスケットちゃんと考えていますよね?大丈夫ですよね?

連続プラントの担当者なら、渦巻型ガスケットは高圧用という認識を持っているでしょう。ところが、バッチプラントの担当者は渦巻型ガスケットの存在を意外と知りません。1MPaを越える高圧下での反応がほとんどないからです。

高圧ガス設備や一圧がほとんどない世界。それがバッチプラントです。

だからこそ、渦巻型ガスケットの存在を知らないまま成長していき、いざ渦巻型ガスケットを扱う時に困ることになります。渦巻型ガスケットの基礎として、最低限知っておきたいことをまとめました。

渦巻ガスケットとは?

渦巻ガスケットは、金属と非金属の素材を組み合わせた高性能ガスケットです。

正式には「スパイラルウンドガスケットに似た構造で、溝形状に沿ってシール材を収めるタイプ」とされており、熱・圧力変化に強く、繰り返しの締結にも耐える特性があります。

◾️構造の特徴(図解付き)

  • 金属製のガイドリング(外周部)で位置決め
  • 中央には溝加工されたリングがあり、そこにソフトシール材を挿入
  • 接触面には高いシール性能が期待される

渦巻型ガスケットは金属を以下のような形に成形したものが基本です。

フープの形状(Gasket)

「V」の字型ですね。

ここに圧力を加えると、「V」が広がっていきます。

フープのシール性(Gasket)

「V」の字が広がってフランジ面にガスケットが押さえつける格好になります。

これって、Vパッキンと同じですよね。

渦巻型ガスケットは「V」の字型

Vパッキンと同じく、枚数を重ね合わせることで強度と耐久性を持たせます。

渦巻の構成(Gasket)

金属だけを重ね合わせても、重なった金属部分で力が適切に伝わりません。

金属の変形が均一ではないからです。

そこで、緩衝材を間に挟んでいきます。

金属部分をフープ、緩衝材部分をフィラーと言います。

私はいつも混乱して、どちらがフープなのかフィラーなのか分からなくなります。

金属と緩衝材と言えばすぐ分かりますよね。

渦巻型ガスケットが高圧に耐えれる理由

渦巻型ガスケットは高圧用です。ジョイントシートガスケットなどは高い圧力には耐えず、壊れます。圧壊と呼んだりします。ジョイントシートはゴムやPTFEで成形しているから弱いのは当たり前。

ガスケットでも高い圧力に耐えるというのは、多少の不思議があるでしょう。ガスケットに以下の分類があることを気が付けば、その疑問は解決しますね。

  • ジョイントシート
  • 金属ガスケット

金属でガスケットを成形すれば、高圧に耐えるのは自然なこと。

渦巻型ガスケットの形状パターン

渦巻ガスケットの形状は合計4パターンあります。

形状(Gasket)

基本、内輪付、外輪付、内外輪付の4種類です。

内輪や外輪というのがオプションとして発生します。

いずれもフランジのタイプに合わせて、ガスケットを選ぶという発想でOKです。

渦巻型ガスケットの形状はフランジのタイプに合わせる

基本形は「みぞ形フランジ」

基本形はみぞ型フランジに対して使用できます。

下の図のようなイメージです。

基本(Gasket)

フランジで溝をしっかり作っておいて、溝に渦巻型ガスケットをはさんでしっかり固定する方法です。

「はさむ」という意味では、Oリングと同じ発想です。

渦巻型ガスケットが高い圧力を受けて変形しても、フランジの溝がガードとなって変形量が抑えられつつシールができます。

みぞ型フランジが使える場合は、基本型を選べば良いでしょう。

みぞ型フランジはTG型という呼び方もしています。

内輪付は「はめ込み型フランジ」

内輪付ははめ込み型フランジに対して使用します。

下の図のようなイメージです。

内輪付(Gasket)

内輪付というのはガスケットの強度を補強する目的がありつつ、みぞ型フランジと同じようにガードの目的も持っています。

みぞ型フランジが使えない・使う必要がなくてはめ込み型フランジにする場合は、内輪付を選びます。

はめこみ型フランジはMF型という呼び方もしています。

外輪付は「平面座・全面座フランジ」

外輪付は平面座・全面座フランジに対して使います。

以下のような形です。

外輪付(Gasket)

外輪が付いているので強度は基本形より強くなります。

渦巻型ガスケットが変形しても、外輪がフランジのボルトに接するところで終わり。

みぞ型やはめ込み型の特殊なフランジ加工をする必要もない、というのがメリットでしょう。

でも、相当中途半端な存在です。

理由は下の内外輪付があるから。

内外輪付は「平面座・全面座フランジ 」

内外輪付は外輪付と同じで 平面座・全面座フランジに対して使います。

内外輪付(Gasket)

外輪付のメリットはそのまま、内輪があるので外輪付よりも強度面で安心感があります。

外輪付を選ぶくらいなら、内外輪付を選ぶ方が無難でしょう。

渦巻型ガスケットの材質

最後に材質です。

材質は、金属(フープ)、緩衝材(フィラー)、補強材(内外輪)に対して決めていきます。

金属(フープ)

金属(フープ)は金属なので、汎用的な金属から選べます。

SUS304、SUS316Lを知っていれば十分ですね。

チタンなど高級金属も使えることは頭の片隅に留めておけば良いです。

というのも、高級金属を使うということは、高圧下で扱う装置そのものが高級金属であり、

バッチプラントではほぼ完全に使わないといえるレベルだからです。

緩衝材(フィラー)

緩衝材(フィラー)はいくつかの種類があります。

  • 膨張黒鉛
  • PTFE
  • 無機材

ジョイントシートと同じ発想ですね。

膨張黒鉛は汎用ジョイントシートと同じ扱いで、腐食性のないユーティリティラインに使います。

PTFEは腐食性があるプロセスラインに使います。

無機材は安価という以外メリットはなく、悩むくらいなら膨張黒鉛を選んだ方が良いでしょう。特別な場合を除いて。

補強材(内外輪)

補強材(内外輪)も金属(フープ)と同じです。

補強材は炭素鋼も選択肢に入っているのがポイント。

外輪は腐食雰囲気になければ、炭素鋼で十分ですね。

内輪を炭素鋼を選ぶ場合は、ユーティリティ用途に限定されるでしょう。

フィラーの膨張黒鉛に対する内輪が炭素鋼、という位置づけ。

プロセス用途ならSUS304やSUS316Lを選ぶ方が良いです。

参考

ガスケットは試行錯誤で決める性質があります。

渦巻型ガスケットも同じ扱いですが、高圧で危険ですので、原理を理解して安全なものを選べるようになりたいですね。

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ガスケットについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

最後に

渦巻ガスケット の基礎について解説しました。

渦巻ガスケットは、フランジ配管の信頼性を高める有効な選択肢です。構造を理解し、設計条件や用途に応じた選定・管理を行えば、長期的な運用でも高いシール性を保てます。

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