バルブから漏れるということは、運転上起こりえることです。
フランジからの漏れやバルブ内通の方が確率が高いですが、バルブ本体から漏れるという場合は残念ながらあり得ます。
ここで漏れる場所は決まっています。
グランドパッキンです。
なぜグランドパッキンから漏れるのか?を機械エンジニアっぽく構造面から考えてみます。
グランドパッキン
グランドパッキンは、バルブの弁棒とバルブ本体の間のシールとして使います。
漏れが起きやすいというわけではありません。
あたかもグランドパッキンを悪者のようにとらえる人も居ますが、実績は非常に多く否定的に捉えるのは止めた方が良いでしょう。
仮にグランドパッキンから漏れが起きたという時には、使い方に合っていない設備だったというだけです。
その場所に応じた方法に変えましょう。
バルブの中でグランドパッキンから漏れが起きるのは、簡単に言うとグランドパッキンが強度的に一番弱いからです。
- バルブ本体:金属
- 軸封:グランドパッキン
- 配管接続:ガスケット
こういう組み合わせが一般的なので、グランドパッキンが一番弱いのは直観的に分かるでしょう。
グランドパッキンとガスケットを比べると、動く部品であるパッキンの方が、動かない部品であるガスケットよりも消耗しやすいのは明らかです。
こういう一般論から考えていくと、体系的な整理がしやすくなります。
バルブの種類と弱い場所
具体的にバルブの種類ごとに弱い場所をチェックしましょう。
基本的にはグランドパッキンが弱いことが分かると思います。
ゲート弁
ゲート弁はバルブの構造を考える上でとても分かりやすいタイプです。
材質的には、金属部・本体ガスケット・グランドパッキンから成り立つ基本形。
金属>本体ガスケット>グランドパッキンという強度関係を考えると、グランドパッキンから一番最初に漏れることは明らかですね。
グローブ弁
グローブ弁もゲート弁と似たような扱いです。
金属>本体ガスケット>グランドパッキンという強度関係です。
ボール弁
ボール弁はゲート弁やグローブ弁とは少し異なります。
構造的には、金属部・本体ガスケット・グランドパッキンから成り立つことは変わりありません。
異なるのは、バルブ内に掛かる力。
液封の問題がボール弁では起こりえます。
ボールとバルブ本体の間に封じ込められた液体が、温度膨張したときに金属が破壊されることがあります。
これはグランドパッキンの周りにプロセス液が固着して硬くなってしまうことで、金属>本体ガスケット>グランドパッキンの関係が狂ってしまうからです。
例えば、グランドパッキン>金属>本体ガスケットという順位関係になったとしましょう。
この場合、本体ガスケットからも漏れが起きるはずですが、液封という大きな力が掛かる場合は、金属も勢いに負けて破壊されることがあります。
液封って怖いですね。
だからこそ、液封の対策をボール弁メーカーはいろいろ取ってくれています。
ダイアフラム弁
ダイアフラム弁は、少し特殊な形状をしています。
漏れが起きるのはグランドパッキンから、というわけではありません。
ダイアフラム膜が強度的に一番弱く、最初に破壊されます。
膜から上部に液体は進入しますが、ここから外に出るのは2パターン考えられます。
グランドパッキン部と本体ガスケット部ですね。
ダイアフラム膜の破れ方によっては、本体ガスケット部のシールが効かなくなって漏れます。
ケースバイケースですね。
フラッシュ弁
フラッシュ弁も強度という点では、他のバルブと同じです。
パッキンが一番強度が弱く、下向き弁なので漏れた場合の被害が大きいのがフラッシュ弁の弱点です。
ボール弁・ダイアフラム弁と同じく開閉頻度がとても高いので、軸封部のダメージは高いです。
こういう場合、グランドパッキンよりも信頼性が高いベローズを採用する方が良いでしょう。
ベローズも伸縮という動作が発生しまうが、グランドパッキンのように擦れあって摩耗するということは起きません。
シール部の強度という点では、ガスケット>ベローズ>グランドパッキンと考えても良いでしょう。
参考
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最後に
バルブの漏れはグランドパッキンから起こることを、構造面から解説しました。
金属、ガスケット、パッキンという材質と強度面から、グランドパッキンが一番弱くなります。
ボール弁の場合は液封に対して、ダイアフラム弁は膜の破れ方に対して、漏れるパターンが少し変わります。
安全性を高めたい場合、ベローズの検討をしましょう。
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