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ボールバルブ vs グローブバルブ:化学プラントでの適切な使い分けとは?

ボールとグローブ 配管
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化学プラントの設計や運転において、バルブの選択は安全性や効率に直結します。特にボールバルブとグローブバルブは用途によって使い分けが重要ですが、どのような基準で選ぶべきか悩むことも多いでしょう。

本記事では、それぞれのバルブの特徴と適切な選定ポイントを具体的な運用シーンを交えて解説します。

2つのバルブの特徴は、知りさえすれば結構わかりやすいのですが、初心者は悩むもの。私も結構悩んだ記憶があります。

結果的にどちらでも問題なかったという場合もあるので、唯一の正解というのが無い場合も多いですね。

標準設計を意図していますので、できるだけシンプルで安い設備にして、種類も限定化して分かりやすくしようとしているシーンを前提としています。

数える程度の特殊なラインであれば、個別に考えれば良いでしょう。特殊な場合こそ、どちらが正解か悩みながら、リスクの少ない側を選んで使っていき、長期的な使用と保全のバランスで、選び直していくことになります。

ボールバルブを選ぶ

グローブバルブよりはボールバルブを選んだ方がいい場面を紹介します。

液を溜めたくない

ボールバルブは液が溜まりにくい構造です。

バルブの前後のラインで液が溜まってしまうことを気にする場合は、ボールバルブにする方が良いでしょう。

化学薬品などライン中に保管していると危ないことが多いので、ボールバルブを使う方が無難と言われます。

ボールバルブは形状的には液が溜まりにくい構造ですが、ボールとケーシングの間に液が残る部位があるという弱点があることは理解しておきましょう。

液封というバルブ破損のトラブルを起こします。

今は、バルブ自身に対策が取られていて安心して使えますが、詰まって機能しなくなる場合は考えられます。

液溜まりを少なくしたいからボールバルブを選べば、絶対に心配ないというわけではないので、注意しましょう(この注意のためだけに、グローブバルブを選ぶというのは変だと思います)。

固化しやすい液体に対して、トレースやジャケット付きのボールバルブを選ぶことは多いですが、結構危険だと思っています。トレースやジャケットが詰まるという可能性がありますからね。この辺になると考えることが増えて結構悩みます。

圧損を低くしたい

高圧のラインや、ポンプ能力を下げたい場合など、ライン中の圧力損失を少なくしたい場合には、ボールバルブを選ぶと良いでしょう。

全開の状態で使うと、圧力損失はほぼ無視可能です。

たいていの場合は、圧力損失を少なくしたいので、グローブバルブは「あえて選ぶ」という選択肢となりやすいです。

流量を何となく調整したい

ボールバルブは流量の調整がある程度可能です。

本気で調整して、送液するというニーズがなければ、ボールバルブの出番。

流量制御を掛けないといけない場合でも、ボールバルブで対応可能な場合は多いです。

反応など流量制御がシビアに求められるときにはグローブバルブですが、その他の場合はボールバルブで十分です。

腐食性が高い

腐食性の高い薬液のラインは、ボールバルブにしましょう。

SUS304やSUS316L以外にもテフロンライニングなど幅広く選べます。

納期や費用面でもメリットがあります。

漏れが嫌な場合

漏れを嫌う場合には、ボールバルブがおススメです。

グローブバルブは少し漏れやすいです。

危険物を扱う化学工場でボールバルブが多いのは、漏れの問題かもしれませんね。

ボールバルブはグローブバルブに比べてメリットだらけなので、ボールバルブを選んでおけば基本的にOKと考えても良いでしょう。

グローブバルブを選ぶ

メリットだらけのボールバルブですが、グローブバルブの方が良いという場面があります。

これを知れば知るほど、悩むようになるでしょう。

凍結するような低温の液

ボールバルブは低温向けではありません。鋳鉄のバルブなどが代表例です。

とはいえ、ステンレスのボールバルブでも低温には使えます。

水で0℃以下の条件で使用する時に、凍結したりしなかったりすると膨張して破損するリスクがあるので、低温だとグローブバルブにしている方が無難だと個人的には考えています。

バルブの種類をできるだけ減らしたいから、ボールバルブで上手く使いこなすという工場もあるかも知れません。

低温だからグローブにするか、ボールで統一するか。

悩む場面です。

流量をそれなりに調整したい

流量をそれなりに調整したい場合にはグローブバルブと言われます。

現実的には自動調整弁なら自ずとグローブ型になってしまい、手動弁で流量制御をしたいときにグローブバルブを選ぶというシーンは多くは無いと思います。

ボールバルブでもある程度調整できてしまいますし、精度をもっと上げるなら自動調整弁にするべきだからです。

グローブバルブは流量制御が容易 → 流量コントロールをするラインはグローブバルブで統一

というのは変だと思います。

自動調整弁は付けたくないけども、調整はしたいという場合には、グローブバルブは使えます。

ヘッダーラインに自動弁+手動弁でついていて、手動弁が流量調整目的であったとしても、ボールバルブで対応できる場合は多いです。

流量を何となく調整したい、流量をそれなりに調整したい、という非常にアバウトな表現ですが、これが選定を悩ませる要素となるでしょう。

スチーム

スチームなど高温の場合にも、グローブバルブはおススメです。

ボールバルブのシール面がスチームでは持たなかったり、ドレンの凝縮・蒸発などの相変化があるスチームはボールバルブの構造には向いていません。

特殊なボールバルブならスチーム用にも使えますが、一般的とは言えません。

高圧

高圧のラインはグローブバルブの方が成功しやすいです。

圧力レンジにもよりますが、JIS10kを越える範囲だとグローブバルブを考えましょう。

ボールバルブでも耐えられる場合はありますが、リスクは高くなります。

参考

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最後に

ボールバルブとグローブバルブのどちらを選ぶのか悩む場面はあります。

ボールバルブとグローブバルブはそれぞれ得意分野があり、用途に応じて使い分けることが化学プラントの安全性と効率を支えます。流量調整の必要性や流体の性質、運用上の優先事項を明確にし、適切なバルブ選定を行いましょう。

たいていの場合はボールバルブで上手くいきますが、低温・高温や高圧など条件が厳しい時にはグローブバルブを選ぶ方が上手く行きやすいです。

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