真空ポンプは系内を真空にすることができる便利な装置です。
系内を加圧状態で使うプロセスは一般的ですが、一部のプロセスでは減圧下で行います。
この装置は運転中よりも起動や停止といった変化を伴う時に、注意しないといけません。
典型的な停止時の逆流の問題を解説しましょう。
停止時に逆流する
真空ポンプの逆流現象を考えましょう。
真空ポンプは系内を真空にするために気体を外に追い出す装置です。
追い出し先は大気中が一般的で、圧力は当然大気圧です。
運転している時はこの状態が維持されていますし、起動時も運転時に向かう流れなので気にすることは少ないです。
一方で、停止時は真空の系内に向かって、大気から空気が流れ込もうとします。
例えば水封式やオイル式の場合だと、液体が系内に混入してしまって、せっかく真空で処理した効果が減少することが考えられます。
その他、空気中の異物が系内に巻き込まれるリスクも十分に考えられます。
危険物を扱っている場合には、空気の混入により引火爆発の危険も考えられます。
子の逆流問題は、加圧ポンプでも圧力が高い場合には考えないといけないことですが、バッチ運転の場合は圧力も低く実質は減圧の真空ポンプのときだけ考えることになります。
逆流対策
真空ポンプの逆流対策について解説します。
逆止弁で止める
大原則は逆止弁で止めるという方法です。
逆止弁は片側にだけ流す仕組みの弁です。
系内から大気に向かって流れる方向に作動する弁を付ければ、停止時に逆流を防ぐことはできます。
ただし、逆止弁は噛み込みなどのリスクがあり、確実な作動を保証するものではありません。
気休めだけど、無いよりはあった方がマシ。
この考え方で設置するのが良いでしょう。
逆止弁ではなく手動弁を付けて、物理的に遮断すれば良いだろうと考えるかも知れませんが、用途によっては第一種圧力容器に該当します。
これを回避するために、ガスラインは無弁にするならば、手動弁を付けることは基本的にできません。
高さを上げる
配管高さを上げるという方法が考えられます。
水封式の真空ポンプが典型例です。
真空ポンプ内には水が入っており、停止時にはこの水が系内に逆流しようとします。
ところが配管高さが10mあれば、水はそれ以上高い所に持ち上がらなくなります。
下の図のトリチェリの実験で有名ですね。
この実験では前提として、容器内の水に試験官が十分に使っているということがあります。
真空ポンプの場合、「ポンプ内の液量 > 10m高さの配管容量」という条件が成立しないと、系内に水が全量流れ込みます。
この方法は、本質的な対策のように見えて、そうでもない可能性もありますので、注意しましょう。
別のラインから圧力を上げる
真空ポンプからの逆流を防ぐためには、別のラインから気体を供給するという方法が考えられます。
この方法は、運転として一般的に行われるでしょう。
気体を系内に供給して圧力を回復させることで、大気からの漏れ込みを防ぐことができます。
化学プラントの場合、窒素を使うのが良いです。有機溶媒への着火のリスクなどが無ければ、空気を使った方が安いです。
先に冷却を
真空ポンプを停止する場合、系内を先に冷却することを考えましょう。
これは減圧下での蒸留・乾燥のプロセスを考えています。
所定圧力で蒸留や乾燥をする場合、常温よりは高い状態になっているでしょう。
ここで冷却を行うと、系内の温度が下がるだけでなく、気体の体積も減少します。
その結果、系内の圧力が下がるので空気が漏れ込むことになります。
真空ポンプが止まっている状態から、冷却を行うと、真空ポンプから逆流が起こりえます。
そうならないように、「冷却 → ポンプ停止」をしっかり守りましょう。
参考
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最後に
真空ポンプを停止する場合は、逆流が問題になります。
逆止弁で止める、高さを上げる、別のラインから圧力を上げるなどの方法があります。
一般例として減圧下で加熱することが考えられるので、冷却をしてから停止をするようにしましょう。
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