タンク底弁は通常のバルブと同じ感覚で設計すると失敗します。
特に近年は手動弁ではなく自動弁を直接設置することが普通なので、機械エンジニアの範囲内だけで決めれるわけではなく計装エンジニアと情報交換をしないといけません。
担当者が複数いれば見落としが起きるもの。
細かくチェックしましょう。
シリンダの向き
タンク底弁はボール弁が一般的ですが、この自動作動機構としてエアーシリンダが必要となります。
ところが、何も考えずにボール弁を発注してしまうと、以下のようなミスが起こりえます。
シリンダの向きが流れ方向と平行なのか、垂直なのか、の違いです。
ライン中なら気になりにくい問題でも、タンク底弁だとそもそも取り付けができないという致命的な問題になります。
購入した後でシリンダの向きを変えられるなら心配いりません。
それが無理なら配管側で調整するための単管を足さないと、工事が進みません。
では、単に単管を付ければ良いのか?というと、別の問題が起きます。
サポートは予め考えておく
タンク底弁はタンクノズルに荷重を預ける形になります。
ノズルの強度が不足していたらノズルが折れる可能性がありますし、腐食しやすい環境だと使っているうちに割れたり漏れたりする可能性があります。
単なる手動弁ですらこれは起こります。
自動弁だとそのリスクはグッとあがります。
エアーシリンダは想像以上に重たいですからね。
タンク底ノズルと自動弁の間の距離が長いほど、モーメントが掛かってしまいます。
だから、タンク底ノズルと自動弁は直結させたいという想いが出てきます。
さらに、リスクを下げるためにタンク側に予めサポートを取っておきましょう。
タンク側に溶接が必要となるので、製作段階で対応しましょう。
簡単そうに見えますが、意外と難しいです。
- 図面チェック段階で自動弁が付くことをちゃんと認識している
- 自動弁のエアーシリンダの向きが問題になることを認識している
- 計装エンジニアの設計が機械エンジニアの設計の後に行われる
これらの関係性を理解したうえで、計装エンジニアがミスしないように、機械エンジニアはケアしないといけません。
タンク製作段階で溶接ができない(指示を忘れていた場合)、現場で改造することになりえますが、これはさらなる注意が必要です。
製作会社でない第三者の工事会社が施工することで、製作会社のタンクが壊れる可能性があるからです。
責任問題になって施工会社が対応してくれないことも。
自動弁の大きさが分からないからサポートの位置が決めれない、という完璧を求めすぎて決断を先送りにし、結果サポートを忘れることもあります。
配管ルートを考えながら、邪魔にならない向きに適当にサポートを伸ばしておけば大丈夫。
サポートを切ったり張ったりすることと、下鏡にサポートを溶接することは別の話です。
液溜まりと漏れの関係
タンク底弁は液溜まりの悩みと関連します。
通常のフランジとボルトナットによる接続だと、ボルトナットを取り付けるためのタンクデッド部ができます。
デッド部の最小化のためには、パッドフランジ型が考えられます。
確かにデッド部は最小化しますが、タンク側にタップ穴を開けないといけません。
これはボルトの緩みがあっても検知しにくいことを意味します。
万が一漏れが起きてしまったら、タンク内の液が全量漏れてしまうリスクがあります。
デッド部の閉塞を気にするあまり、全量漏れることを許容せざるを得ない。
とても怖いですね、
自動弁で重たいエアーシリンダを使うなら、リスクはさらに上がります。
底ノズルをパッドフランジにするなら、ハード面での対策ができないためソフト面での対策をしっかり考えましょう。
参考
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最後に
タンク底弁は自動弁にすることが多いです。
シリンダの向き次第で自動弁の取付位置が変わり、サポートの有無含めてノズル保護の問題が出てきます。
液溜まりを最小化するためにパッドフランジを使っても良いですが、全量漏れるというリスクを許容していることを忘れないように。危ないです。
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