スチーム(水蒸気)は、化学プラントや製造工場で非常に身近なユーティリティです。原料は水であり、日常生活でも目にするため、危険性が低く見積もられがちです。しかし実際には、スチームは火傷・静電気・腐食・詰まり・設備破損といった、見落とされやすいリスクを数多く抱えています。
本記事では、化学プラントの現場で起こりがちな事例をもとに、スチームが持つ危険性を整理します。「水だから安全」という思い込みを一度リセットし、設計・運転・保全の視点で再確認してみましょう。
この記事は、ユーティリティ基礎シリーズの一部です。
工業用水は化学プラントでどう使われる?用途別にやさしく整理
循環冷却水はなぜ必要?化学プラントで使う目的を基礎から解説
冷水(チラー水)は化学プラントでなぜ重要?役割・使い方・設計の基本
水・蒸気・電気・空気・窒素|化学プラントを支える5大用役を基礎から整理
なぜ窒素は化学プラントで便利なのか?用途とリスクをまとめて解説
計装用空気とは?圧縮空気との違い・仕様・設計ポイントを解説
火傷する
スチームは火傷する危険性が高いです。大気圧下で飽和水蒸気の温度が100℃。これだけでも十分に危険です。
化学プラントなどでは複数の圧力の水蒸気を使い、100℃を越える温度になることもしばしば。スチーム配管に保温が付いていない場合に、手を触れるとすぐに火傷するでしょう。
温度が高いけど大気に放出される物質はあまり多くはなく、プロセスの蒸留などで温度を加えたものは必ず冷却して取り出します。安易に大気に開放するのはスチームくらいではないでしょうか?
静電気が発生する
スチームは静電気を発生させる要因になります。水だから静電気が発生してもすぐに逃げるだろう。こういう誤解が結構あります。
水でもスチームでも、移送されるときには静電気が起きます。スチームは、例えば有機溶媒が残った床や設備の洗浄に使ったりするケースが考えられます。
この時に、スチームの放射によって静電気が発生し、スチームの温度で温まった有機溶媒が静電気によって引火するということが十分に考えられます。
スチーミングで溶媒の温度を上げて粘度を落とし、洗浄するという方法は一般的です。この場合は、速度を落としたり、窒素雰囲気下で行ったりなどの工夫が大事でしょう。
腐食させる
スチームは配管などを腐食させます。温度の高いドレンが溜まっている部分が、特に腐食しやすいです。プラントでは酸やアルカリなどの腐食性の高い薬液に対して材質のケアをしますが、スチームは軽視されがちです。
SGPなどが多いですよね。気が付いたときには配管のピンホールが起きていて、腐食性に気が付かされます。
詰まりの危険性
化学プラントでは融点の高い液体を結構扱います。固化しないようにスチームで温めながら使いますが、何かのタイミングで固化してしまう場合があります。解除するためにはスチームを使って温めます。
配管の外側から温めたり、内側にスチームを入れたり、いろいろ頑張ります。
何とか導通できそうな目途がたって、いざ確認するために配管は外したら、高温のスチームが漏れてきたり、溶媒に引火したりする問題が起きやすいです。
タンクを変形させる
スチームはタンクを変形させる可能性があります。詰まりと同じで固化しやすい液体を、タンクに入れていたとしましょう。タンクはスチームで温めます。
仮に固化してしまった場合に、スチームで溶解しようとしたら、温め方に工夫が必要です。
下の方から温めてしまうと、液面近くはまだ固化した状態なので、温まって溶解した液体が膨張しても逃げる場所がなくなります。
その結果タンクが破壊されるというトラブルが起こります。単純に温めるだけで設備が壊れるというのは怖いですね。
参考
最後に
スチーム(水蒸気)は、火傷リスクだけでなく、静電気発生、腐食、詰まり時の事故、設備破損といった多面的な危険性を持っています。身近な水を使うユーティリティだからこそ、危険性が過小評価されがちですが、実際には非常に扱いの難しい存在です。
スチームを使用する際は、「水だから安全」という先入観を捨て、設計・運転・保全の各段階でリスクを意識することが重要です。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。

コメント