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化学工学

温度変化で見るバッチ系化学プラントの典型プロセス

非定常プロセス 化学工学
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プロセス(process)系の製造を理解するうえで、定常と非定常という考え方は欠かせません。

大型の石油化学系のように連続プラントは定常のプロセスが多く、バッチプラントのような運転方法は非定常のプロセスが多いです。

一応はバッチ/連続と定常/非定常の差はあるのですが、初心者の頃はあまり意識しなくて良いでしょう。

本記事の狙いは、定常と非定常の違いがどういうものか理解したうえで、バッチプラントの典型操作が非定常であることを理解することです。

定常と非定常

定常と非定常の例をまずは見てみましょう。

温度の時間変化で説明します。

定常と非定常(process)

定常は温度が時間の経過で変わらない(ほとんど変わらない)条件です。

温度以外に圧力・流量・濃度なども一定の範囲内にあります。

上限・下限を定めて、その管理範囲内で運転制御をします。

非定常は定常ではありません。そのまんまです。

温度が時間に依存するような状態です。

連続プラントでも運転開始や終了の移行期間は非定常のプロセスと言えます。

バッチでは非定常だらけ。

反応器典型操作

バッチ反応器の典型操作を例に、温度の時間依存を見てみましょう。

以下のような感じです。

典型操作(process)

1バッチという単位の間に、いろいろな工程が入っていて、温度も時々刻々変わります。

上限・下限という意味では、バッチ全体に定めるだけでなく、各工程に対しても定めます。

待機

待機とは、反応器内が空の状態で次のバッチを待っている状態です。

一応、温度が変わらないというグラフで単純化していますが、変わる要素はあります。

例えば、温度40℃で工程が終わって液を送り出した後の反応器の温度は、40℃くらいです。

反応器の金属部の顕熱が40℃くらいだからです。(厳密には、液を送った後に窒素が入ってくるので、窒素の顕熱分だけ温度は下がります。)

それ以外に、待機時間には外気の影響をどんどん受けます。

例えば外気が10℃くらいであれば、ジャケットや保温が付いていない部分からは放熱が積極的に行われます。冬場に暖房を切ったら部屋が寒くなってくるのと同じです。

窒素

工程の開始は窒素を入れるところから始まります。

窒素の顕熱分だけ温度が下がりますが、顕熱が少ない場合は無視可能なレベルになるでしょう。

DCSのモニターをずっと眺めて数値を追っていけば、温度がちょっと下がっているかも・・・と気が付く程度の下がり方です。

受入

窒素置換が終わったら、液を受入します。

液を受け入れるときは、反応器内の温度が変わります。

今回は40℃くらいの反応器温度に対して、20℃くらいの液を入れるというシーンを想定しています。

温度は徐々に下がります。

本当ならば、温度の下がり方は直線系ではありませんが、簡単化するために直線で代表させます。

顕熱で温度が変わる

これくらいのざっくりした理解でOKです。

温度調整

受入が終わったら、温度調整です。

今回は反応を始める前にある程度の温度まで、温める工程をイメージしています。

工程によっては逆に冷やさないといけない場合もあります。

温度調整はジャケットに、スチームや温水を通して行います。

反応

温度調整が終わったら、反応本番です。

反応熱で温度が上昇して、それを冷却制御するようなプロセスをイメージしています。

ゆっくり滴下しつつ、ジャケットに冷却水を入れます。

滴下の制御が必要であることと、ジャケットに通すユーティリティの切替が必要であることから、自動制御を行うことが多いでしょう。

温度変化はさすがに直線関係とするのは難しいでしょう。

一般には初期に反応熱が高く、時間が経つほど反応熱が下がります。

反応器と冷却水の温度差が高いほど冷却能力も高く、時間が経つほど温度上昇は緩やかになってきます。

反応で熱が出る場合は、冷やして制御

熟成

反応のための滴下が終わったら、熟成の期間です。

滴下が終わった瞬間に反応が全部完了するわけではなく、一定時間後に反応が終わるというプロセスは多いです。

時間をとにかく確保すれば良いというものでもなく、時間を空けすぎるとさらに反応が進んで不純物となることもあります。

このタイミングでは温度変化が起こらないように、ジャケットの温度制御を行います。

ジャケットの冷却水の流量を調整弁で調整したり、on-offで入切する制御もあります。

分析

熟成が終わったら分析に入ります。

分析をしている間は、次の工程に進められません。

分析結果が合格であれば、ようやく次の工程に進めれます。

温度的には熟成と変わりありません。

冷却

分析結果が合格であれば、次の工程に進めます。

熟成中の温度が高すぎる・低すぎるという場合には温度調整をします。

一般には高すぎる温度を冷やすという方向で動きます。

というのも冷えすぎて問題の物質は少なく、冷えさないといけないものを温めると暴走反応に至って超危険になる方向だからです。

温度を上げる場合は、ビビりすぎてちょうど良いくらいです。

冷却は温度カーブ的には、加熱側と変わりありません。

送液

冷却が終わったら、液を送ります。

ここは反応器の温度的にはあまり変わらないでしょう。(待機の項目参照)

参考

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最後に

化学プロセスの定常と非定常の差として、非定常プロセスの代表のバッチプロセスを解説しました。

1バッチの間で温度が時々刻々変わる様子と、その要因を簡単に述べました。

温度調整や反応といった分かりやすい温度制御以外の要因でも、温度は変わります。

工程で何が行われているか、どんなものが出入りしているかを

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