ステンレス反応器について解説します。
グラスライニング設備の代わりとして、ステンレス製設備の需要は、化学プラントでは一定量あります。
数が少なくて目立ちにくい設備ですが、特徴をしっかり理解していないと、概念設計の段階で詰まってしまいます。
機会が少ないからこそ、検討をするだけでも基礎的な部分からチェックしましょう。
ステンレス系の設備は自由度の高さがメリットです。
標準化をするべきかどうかも含めて考えましょう。
グラスライニングでは駄目なもの
ステンレス反応器は、グラスライニング設備では駄目なものに対して使うことがあります。
腐食性が大事な場合には、ハステロイなどの高級金属が求められます。
腐食性は低いけどフッ素を含む液
静電気が溜まりやすい液
加熱冷却が大事なプロセス
この辺りが候補となります。
加熱冷却を優先してグラスライニングではなく、ステンレス反応器を採用することもあります。
材質
ステンレス系なので材質は、SUS304かSUS316Lが候補になります。
反応器レベルになるとSUS316Lにしましょう。
というのも、どういう反応に使うか将来が読めないから。
ステンレス系でも耐えるくらいの腐食性しかないものの、SUS304だと寿命が短くなるということは多いです。
高い買い物になるので、SUS316Lにしておいた方が無難です。後で後悔しないように。
接液部はステンレスにするとしても、他の部分は選択肢が生まれます。
無垢のステンレス一体品として作るか、クラッドなどの組み合わせとして作るか、です。
クラッドは、接液部の薄い部分だけステンレスにして残りはSS400などの汎用金属とする組み合わせ材料のことです。
ライニングもクラッドと同じ発想ですね。耐食性を持たせる部分と強度を持たせる部分を分けるという発想です。
無垢とクラッドの簡単な比較は、以下の通り。
無垢は高価
クラッドは溶接不良や剥離の可能性を気にしないといけない
無垢にすると非常に高価なので、クラッドにすることが多いです。
溶接不良や剥離の可能性はゼロとは言えませんが可能性は低いので、メンテナンスでしっかり管理するという方針でクラッドを選ぶことが多いでしょう。
形状
反応器であれば、以下のタイプが一般的です。
円筒胴
上部下部とも半楕円鏡板
ジャケット付
鏡板でなかったりジャケットが付いていなかったりすれば、それは撹拌槽というのが私の認識です。
ジャケットが付きますが、ジャケットはSS400などの汎用鉄板にすることが多いので、母材との溶接部で異種金属接触腐食の可能性を気にすることになります。
であれば、母材を無垢のステンレスにしても得られるメリットが少ないですね。
設計条件
ステンレスの設計条件は非常に広いです。
温度は150~200℃の条件でも可能です。ただし、ガスケットなどシール部は考慮が必要。
圧力は1MPaを越えるものでも容易です。グラスライニングでは不安があります。
伝熱
ステンレス反応器はグラスライニング反応器に比べて、伝熱性が良いです。
これは材料の熱伝導率から明らか。
そのほかに、ジャケットの補修が容易という点でもメリットがあります。
伝熱性を求める場合、交換熱量を高くするために流量を上げようとします。
これは設備に負荷を掛けます。具体的にはジャケットが割れるという結果。
グラスライニング反応器だと、ジャケットが故障したときの修理がとても難しいです。溶接補修をしようにもガラスを割ってしまうリスクがあります。
ステンレス反応器だと、割れのリスクはないので溶接補修がしやすくなります。
内部部品
内部部品は撹拌機とバッフルがあります。
撹拌機
撹拌機は種類が豊富です。
プロペラ翼などの汎用的な物や、特殊な形状まで。
現実的には小実験の結果を反映させるような形状にするでしょう。
プラントの汎用性という意味では、グラスライニングなどの他の反応器で使っている撹拌機と同じ形状にしても良いでしょう。
プロセス設計の重要ポイントになります。
装置設計という意味では、あまりポイントはありません。
バッフル
バッフルは本体胴から溶接するタイプと、天板ノズルから取るタイプがあります。
溶接のタイプは、溶接不良によるトラブルが起こりえます。
天板ノズルから取る場合は、バッフルの振動を無くすケアが必要です。
バッフル形状やノズルの強度などを考慮しなければいけません。
軸封
軸封はメカニカルシールやドライシールが一般的です。
ステンレスでも大丈夫な腐食環境にあるので、軸封の材質は一般的なもので良いでしょう。
OリングだけはFKMだと失敗する可能性があるので、注意が必要です。
ステンレスだから腐食性がなくてFKMを選び、溶剤に腐食するというケースが意外と多いです。
ノズル
ステンレスのノズルは、標準的なフランジで構成された形状で自由度が高いです。
グラスライニングなどのように形状が固定化されることはありません。
挿入管も自由に設計が可能です。
マンホールも厚みを変えたり、軽開閉装置を付けたり、とにかく自由度が高いです。
タンク底バルブも、パッドフランジなど溜まりを無くす設計が可能です(ただし漏れのリスクは高まりますが)。
参考
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関連情報
最後に
ステンレス反応器に求められる特徴を紹介しました。
グラスライニングでは駄目だけど、耐食性が要らない場合や伝熱性を上げたい場合に、候補となります。
ハステロイよりは安価ですが、それでもグラスライニングよりは高いので、選定には気を使います。
ステンレス系の自由度の高さがメリットになるので、各社のステンレス設計を基本にしながら、グラスライニングと仕様を合わせていくと、運転上は便利になるでしょう。
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