配管設計などの空間設計を行うときに、柱サイズ(pillar size)は意外と関係があるということを紹介します。
土建設計は耐震基準のレベルアップとともに厳しくなっていく一方です。
それは仕方がないとしても、配管設計に影響がでるのは確か。
配管設計からみた柱サイズの影響について解説します。
配管設計という空間設計上は、機械系エンジニア・配管設備設計エンジニア・土建設備設計エンジニアの協働作業となります。
化学プラント建屋の構成
まずは、化学プラントの建屋の基本を見ていきましょう。
5m四方を1単位
化学プラントの建屋は柱と梁を組み合わせた構造です。
縦横5m程度の間隔で柱が建てます。
これは建屋の強度上どうしても必要です。
柱の間隔を5mよりも長く取ると、梁の強度をあげていかないといけません。
5m四方の空間に設備を配置していくのが、バッチ系化学プラントの基本的な設備配置の考え方です。
バッチ系化学プラントでは反応器がメジャーなので、5m四方の区画に1基の反応器に割り当てていくイメージです。
この反応器に人がアクセスするための作業面を設定します。
設備を外部から調達するとき道路を通らざるを得ないですが、道交法上運搬できるサイズには限界があります。約3.5mの径が限界となります。グラスライニングやフッ素樹脂ライニングなどの設備はこの3.5mが限界設備となります。ステンレス系なら現地組みも可能ですね。
柱は□400
柱のサイズは□300や□400が多いと思います。
□400とは一辺400mmの四角鋼で建設資材として一般的です。
H形鋼を使う場合もありますが、強度が弱くなるので補強ブレースが必要となるでしょう。。
最近の化学プラントではH形鋼はほとんど使わず、四角鋼が多いです。
柱サイズが平面上の設計に及ぼす影響
空間設計において柱サイズを議論する場合、平面上で考えられる問題が多いです。
本題の、柱サイズが配管設計に及ぼす影響を見ていきましょう。
□400の柱は5m四方の範囲内では誤差範囲
こう思ってしまう機械エンジニアが意外と多いです。
これは造像力がちょっと足りていません。
□400を5m四方に設置すると、おおよそ以下のイメージになります。
柱の陰となる赤の部分がデッドスペースとなります。
柱のサイズ400mmに対して800mmのサイズを考えているのは、耐火被覆が必要だから。
消防法の要求で、延焼を防ぐための耐火被覆が柱に必要だと指導される地域もあるでしょう。
地域によって結構差があるようです。
耐火被覆が必要な場合、柱が400mmだからデッドスペースも400mmだと思っていたら、気が付いたらその2倍の800mmもデッドスペースがが必要になります。
5m寸法のうち4.2mしか配管を通すスペースがありません。
設備を置きにくい
赤の部分には設備を置きにくいです。
- 隣り合う5m四方の建屋との通路になる
- 地中梁が通っていて、大きな設備を置けない
- ポンプは置けるが作業通路を潰す
通路や土建の構造上の問題でそもそも設備を置く場所として、設置できません。
地中梁をかわすように脚タイプの基礎を付けて無理やり設置するという設計になるでしょう。
平底のタンクは置けないという意味で制約が出てきます。
立ち上がりスペースが狭い
2FLは梁を配置して、設備を支えることになるので、こんな構成になります。
ここでポイントは階をまたぐ配管を設置するスペースが狭いということ。
階をまたぐ配管は梁や設備と干渉してはいけません。当たり前です。
ということは梁の無い場所を探さないといけませんね。
5mのスペースのうち、400mmの柱と2..5mくらいの設備と受梁を構成すると、4m程度は最低でも絵デッドスペースとなります。
配管を通せる余地は残り1m幅の範囲。
人が通るための安全通路を確保しようと思うと、配管を通せる幅は1~2本が限界です。
通すことができる最大エリアは以下のとおり非常に少ないです。
配管は上部の取り回しが必要
設備が設置できない以上は、配管を設置することになるでしょう。
例えば流量計が一般的。
流量計は直管長が必要です。
その直管長を確保するためのスペースとしては最適。
でも、上部から配管を引き回してくることは考えないといけません。
ルートいかんによっては、将来的に配管を延長させる要素を潰してしまいます。
下の図のようなイメージです。
ジャケット用のヘッダーを作業面と逆方位に設置して、そこまで配管を敷設します。
その敷設ルートと、赤のデッドラインに引き込むための配管スペースが干渉する恐れがあるからです。
通常は高さで回避します。
それでもスペースが圧迫されることは確か。
特に配管ラックの引き込み部では配管が密になります。選択肢は少なくなっていきます。
これが長期間のプラント運転において配管設計の拡張余地を少なくしていきます。
柱サイズが立面上の設計に及ぼす影響
柱サイズが立面上の設計に及ぼす影響も見ていきましょう。
大型の設備を据付撤去しにくくなる
柱の大きさが大きくなり有効活用できるスペースがなくなることで、最も困ることは大型の設備の据付撤去です。
最悪、据付撤去ができない可能性があります。
そうすると、工場の能力を既存工場と新設工場で同一としたい割に、柱間のスペースを確保するためだけに、製造所全体の面積を大きくしなければいけない可能性が出てきます。
投資が増えることになるので、かなり困ることになります。
建屋設計と機器設計の一番初めに考えておくべき部分です。
こんな感じで平面図上で検討をすることでしょう。
駐車の話に似ていますね。
断面図上で見た場合の据付検討はやや複雑です。
綺麗な流線型で機器が動くわけではありません。
バッチ系化学プラントの設備なら通常は1と2の場所から機器を吊り上げて回転させます。
これで99%の設備は取り外し可能。
でもごくまれにサイズが大きすぎて、3の場所からも吊らないといけない場合があります。
これは柱サイズそのものというよりは、柱サイズに釣られる形で大梁のサイズが大きくなるから影響がでてくるという話です。
配管ラックとの干渉
配管ラックと柱サイズが実は関係します。
配管ラックは配管スタンドのプラント内版と思えば良いでしょう。
柱サイズが大きいと配管ラックの位置が微妙に邪魔になります。
これは機器の脱着と同じで、柱サイズその物が問題でなくて、柱サイズに釣られる形で大梁のサイズが問題になります。
ラックの最上段に配管がある時、配管の枝管を引き出そうとしたら大梁に当たるために、折り曲げないといけない場合があります。
これはいろいろな意味で問題ですね。
仮に折り曲げて無理やり配管を通せたとしても、本来はラックにもう1本配管を載せるスペースがあったはずなのに、それを使えなくしてしまっている可能性があります。
なら、配管ラックをもっと下げれば?という意見はあるでしょう。
この場合は、設備の横引きに下段ラックが干渉する場合があります。
この影響は非常に大きいです。
下段ラックの干渉する部分を全部外さないといけないですからね。大仕事です。
参考
最後に
化学プラントの空間設計と柱サイズの関係について紹介しました。
プラントは1スパン5mで柱が□400、耐火被覆を入れると□800。
地中梁の影響で設備が置きにくい、階をまたぐ配管が通せない、ラックから引き込めない・ラックの高さを取れない
などいろいろな影響が実は関係します。
後で修正ができない部分なので、大物の設備周りのメンテナンスを考えて建築設計をしたいですね。
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