化学プラントなどエンジニアリングをしている人は、海外勤務(seconded overseas)に興味があるでしょう。
オーナーエンジニアで海外出向というケースは非常に少ないです。運の要素が強いです。
その割に手厚い待遇を受けやすいので、個人的にはおススメ。
海外工場の1例として私の例を紹介しましょう。
化学会社の海外工場は中小規模
化学会社が海外工場を構えるとき、一般には中小規模です。
その中小化学プラントの不利なビジネス環境を紹介します。
大企業の化学プラントにいると、「これくらいは当然できるでしょ?」という思い込みを起こしがちです。
世間から疎い環境ですから。
原料が安定供給されない
中小企業では原料が安定供給されません。
大手化学プラントの物流機能は凄いですが、コロナ禍で貿易がストップしている現在は非常に危ういです。
大手の物流担当者が苦労していることは確かですが、それでも結果がちゃんと出ているので、目立ちません。
中小企業なら、原料が間に合わないために生産できないというケースは多々あります。
バッチ系化学プラントでは、「バッチを抜く」という対応をせざるを得ません。
その結果、年間の生産量は当然下がります。
海外の会社ならそもそも物流機能が整備されているわけでもなく、突発要因で遅延することも多いでしょう。
原料とは真逆に、廃棄物はもっと過酷な条件にあります。
廃棄物が処理できずに生産が止まることもしばしば。
この辺の状況が分かれば日本から設備を海外調達するときも背景を類推できるもの・・・
用役が安定供給されない
原料や廃棄物が安定供給されないのと同じで、海外の中小企業では用役も安定供給されません。
典型例は電気
停電が起こるなんて日常的。
日本だと停電なんて起きないことを前提にしていて、停電が起こったときの訓練を考えますよね。
海外ならそんな訓練は考える必要があります。
日々実践できますから^^
電気だけでなく水も供給されません。
化学プラントにとって水は生命線。
水をどれだけ貯める場所があるか、は工場でも極めて大事なことです。
エンジニアが育たない
海外の中小化学プラントならエンジニアは育ちません。
日本なら日常的にSDMがあり、エンジニアリング業務を並行処理することが普通です。
もしくはエンジニア以外の業務も兼務しますよね。
海外の中小化学プラントなら、エンジニアリングが必要な増改築は限定されます。
普通に日本の中小化学プラントも同じですけどね。
化学プラントがオーナーエンジニアを抱え込む必要がないくらいです。
1年に1回小さなSDMを繰り返すくらいなら、エンジニアリングの技術力は育ちません。
図面屋の仕事が雑
海外の中小化学プラントが接する図面屋の仕事は雑です。
日本でも化学プラントの図面屋さんの質は怪しくなっています。
この理由は以下のとおり。
- 海外の中小化学プラントでは、そもそも配管図が必要な増改築工事が少ない
- その地域全般で、配管図が必要な増改築工事が少ない
- 配管図を書いた後のレビューをする環境にない
- その地域全般で、配管図作成者が少ない
図面屋の質が悪いのは、成長する機会がないだけでなく、どの水準が高いレベルかを知らないまま仕事が完結するからです。
日本の図面屋さんがどれだけ緻密で正確な配管図を書くか。
海外に行くと良く分かります。
日本で配管図をきれいに書き上げるということは、工事会社を楽にしているということ。
優秀な工事屋さんなら、配管図に問題があっても現場で考えて施工してくれます。
図面屋の質が悪いということは、工事屋の質が良いという傾向がありそうです。
日本でも企業規模によってこの辺の差が出ますね。
意思疎通ができないことが海外勤務の辛さではない
海外勤務が決まったときに周囲から言われることとして、以下があるでしょう。
辛いですよね
この話を聞けば、意思疎通の問題を取り上げる人が多いです。
でも、私自身はこれは違うと思っています。
仕事とプライベートに分けて考えればいいでしょう。
仕事の意思疎通
仕事の意思疎通は海外勤務でも日本勤務でも大きな差はない、というのは私の意見です。
海外勤務の場合は、言語の問題があるのは確かです。
1回1回のコミュニケーションに時間が掛かるように見えます。
日々の業務管理や、報告書を確認するときには1人当たり1時間くらいかけて話をすることもありました。
1時間もかけて指導や教育をするって結構大変ですよね。
ところが、日本でも状況は同じです。
日本語だから意思疎通ができるはず
これは大間違いでした、
世代間ギャップなのか能力ギャップなのか、不明ですが
日本人同士でも日本語でも意思疎通はできません。
一昔前なら15分~30分で終わった打ち合わせも、今では1時間~2時間ということがザラにあります。
化学プラントの機械エンジニアのように、仕事において意思疎通が多い人間にとっては
意思疎通が取りにくい海外勤務は辛いと思いきや
実は日本でも同じだった、という悲しい結末です。
日常生活の意思疎通
日常生活の意思疎通も海外勤務でも日本勤務でも大きな差はない、というのは私の意見です。
日本で日常生活をすると言っても、コンビニやスーパーでの買い物がほとんどでしょう。
コロナ禍で自粛慣れした人にとって見れば、日常生活で対面で話す機会は特に減っています。
コンビニやスーパーの店員と話す機会もほとんどないでしょう。
仮に話をするとクレームに発展することもあります。
店員が自分のペースで仕事を進め、それに客が会わせる形の現在では、意思疎通なんて形だけです。
日本では足を引っ張りあう
日本では日本人同士が明確に足を引っ張りあいます。
仕事が良い例ですよね。
誰か1人が仕事を進めようとしても、残り99人が仕事を止めようとします。
新しいことなんてやりたくない!
こんな人ばかりですよね。
こんな日本人でも海外だと協力し合おうとするのが普通です。
特に少数の場合は、力を合わせようとします。
一定の数が集まれば派閥ができて、対立するのですが。。。
私が海外出向(seconded overseas)の日常生活で困ったこと
私が海外赴任をしたときの日常生活で困ったことを紹介します。
言語とも関連しますが、言語を切り離した側面を紹介します。
移動手段が限定される
海外赴任では移動手段が制限されます。
車を運転できる環境は少ないでしょうからね。
長距離移動はタクシーが基本。
タクシーを呼ぶのですら言語が必要なので、ためらうでしょう。
公共交通機関ならバスや電車に限定されて、移動範囲が狭くなります。
せっかく海外にいるのだから色々と動き回りたいと思うのに、
移動の制限があるとストレスが溜まりますよね。
コロナ禍による移動の制限とは質が違います。
食事が限定される
海外赴任では食事が制限されます。
日本料理屋が近くにある場合は、助かると思うでしょう。
でもそうとばかりも言えません。
その日本料理屋に飽きる時が必ず来ます。
現地料理を食べようにも言語が通じないと注文できません。
自炊しようにも、食材を買うのに言語が必要で、ためらうでしょう。
レトルトカレーやカップラーメンやパックのご飯を持ち込んだとしても、飽きます。
食事こそが唯一の楽しみと思う多くの社会人にとって
食事が制限されるのは非常にストレスです。
お酒が飲めない環境や、肉の種類が限定される環境も、一種の制限ですね。
特にお酒はストレス発散に飲みたくなります。
ネット環境が良くない
海外赴任ではネット環境が一般によくありません。
化学プラントの機械エンジニアが海外赴任というと新興国ですからね^^
日本のネット環境が恵まれていると感じます。
ネットがあれば暇つぶしはいくらでもできますが、ここに制約があると途端に大問題となります。
日本からゲーム機を持っていっても良いですが、確実に飽きます。
今ならブログを書けばいいのですが、当時はそれすら思いつきませんでした。
海外生活で困らないようにするための予防策
海外赴任をして、次に海外赴任をするときのために予防策を考えました。
誰にでもできる方法ではありませんが、1つの方法としてご覧ください。
移動しない
移動に制限が付くことを嫌がるなら、移動をしなくても済むような生活を日本で過ごしていればいいわけです。
コロナ禍の移動自粛で、家での生活をメインにして慣れた人もいるでしょう。
私は、日本では積極的に外に出ようとは思わなくなりました。
海外は行きたいですよ^^
車がないと、自由に移動ができないと、ストレスがたまる。
kということがないように、生活を見直すことが予防策の1つになると考えました。
そもそも、海外赴任を前提としたサラリーマン生活を考えるべきかという問題はありますが。
ぜいたくな食事をしない
食事でぜいたくをしなければ、海外赴任でも困りません。
これは移動の制限以上に困難でしょう。
不健康な食事をしないようにすれば、自ずと食事の内容は絞られていきます。
慣れると、海外でも食事内容の制限は気にならないでしょう。
ここでいう食事の制限とは、カップラーメンやお菓子を採りすぎないという意味です。
これらの食事は依存性が高く、海外にいても食べたくなると、金を払っても調達しようとします。
海外赴任では自分で車を運転できない
化学プラントの機械エンジニアが海外赴任をするとき、そこで自分が車を運転することは普通は考えません。
怖くて運転できない
これが実際でしょう。
文字が読めない、何かあっても助けを求められない、ということも大きいですが。
自分で車を運転できないことで、赴任時に実際どういう影響がでるかをまとめました。
通勤が不自由
自分で車を運転できないと、通勤に不自由が出ます。
日本だと出退勤を自由に決めれますよね。
バス
バスは公共交通機関もあれば、通勤バスもあるでしょう。
いずれにしても時間の制約があります。
公共交通機関なら、工場まで直通のケースはほとんどないと思います。
乗り継ぎが必要になることが多いでしょう。
通勤バスなら、公共交通機関よりは制約が緩いです。
出勤時間の制約はあまり問題になりません。
退勤時間の制約は大きいですが、実はありがたいことです。
5時になったらバスがでるので、帰らないといけない。
こういう認識が従業員に浸透します。
自分の車で自由に移動できる場合は、退勤時間が雑になりますが、
制約がある場合は、定時で上がろうという仕事を切り上げます。
電車
電車も時間の制約があります。
バスよりも移動場所の制約が大きく、化学プラントの目の前に電車が止まるというケースはほぼないでしょう。
タクシー
タクシーは時間の制約は少ないですが、高いですよね。
安全性を考慮して、運転手付きタクシーを契約する会社もあります。
このタクシーは、化学プラントでは大助かりの存在です。
夜にトラブルがあったとき
ここでタクシーが登場します。
通勤バスや電車が仮に通っていても、夜は運転していないですからね。
地域によっては僻地にある化学プラントまでタクシーが行ってくれないこともあります。
逆に、夜に工場から帰宅するときに、タクシーを呼ぼうとしても来てくれないこともあります。
休日が不自由
移動が限定されると、休日はすごい制約を受けます。
一言で言うと引きこもり
近くに食事に行く・食料を買いに行くということ以外は、何もできません。
現地人と仲良くなって移動手段を確保して、観光・ドライブ・スポーツなどができれば楽しみは増えるでしょう。
日本人同士のサークルなどを活用することで移動ができる場合もあるでしょう。
個人的には、海外に行ってまで日本人同士で固まる必要はないと思いますけど。
いずれにしても、1人で行動できないという制約は残ります。
日本から食材を輸入して、休みの日は家で引きこもる
こういう生活をする海外赴任者は多いです。
この生活になれていると、日本でも同じ引きこもり生活ができて
コロナ禍でも特に苦も無く生活できるメリットがあるのですけどね^^
海外生活での買い物ってどうするの
海外生活をするときに買い物ってどうするでしょうか?
化学プラントの機械エンジニアが海外赴任をしたときの一例を紹介します。
私は現地の言語が使えない状態でした。
大きな買い物はしない
海外赴任をした場合、大きな買い物は基本的にしません。
海外赴任は仕事をしに行っていますからね。
そこで大きな買い物をしてしまうと、引っ越しが大変です。
引っ越しが前提のエンジニアなら、そもそも物を大量に持とうとしないでしょう。
生活に必要な家電は、会社が準備してくれましたので、買い物はほとんど必要ありません。
ホテル住まいでテレビ・ネット環境・冷蔵庫・洗濯機・風呂・トイレがあれば、生活は基本的に困りません。
後は食事ができて、パソコンが使えたら、ほぼ満足です。
Amazon最強説
現代ではAmazonという非常に便利な手段があります。
言語が使えない環境で、物を買おうとすると手段は限定されますよね。
- 店で店員と指を指しながら買い物をする
- 通訳者に依頼する
- 欲しい物を印刷して持っていく
一般に通訳者を経ない限り、損をすることが多いです。
対面でのやり取りの場合は、言語が使えないと不便。
割引やお得な情報を教えてもらっても分かりませんからね。
多少言語が扱えるというレベルなら太刀打ちできません。
そんな時に便利なのが、Amazon
ボタンを押せば解決!
簡単ですね。
Nintendo 3DSとかiPadなどをこの方法で買いました。
配達してくれるので、後は適当にやり取りすればOK。
到着時に電話で連絡が来た時に、適当に片言で会話してやり通せる確率は高いです。
言語が話せないから現地では買い物はせず、日本から持ち込む
という閉鎖的な対応だけでなく、ちょっとはチャレンジしてみると良い思い出になりますよ。
お店で店員と会話して伝わらずに諦めるというケースよりは、はるかにハードルが低いですからね。
現地アプリも使える
Amazonと同じく現地アプリも非常に使えます。
現地に特化したアプリでiPhoneで使えるものは多数あるでしょう。
- 食事の宅配
- タクシーの手配
- 映画チケットの購入
- 電車・飛行機の手配
- ホテルの手配
かなりのことが可能です。
これだけできれば、1人でできる範囲は広がります。
現地の食事を楽しむことができるのは大きいですね。
タクシーも誰かにお願いしなくても自分で手配できます。
映画も1人で身に行けます。暇つぶしとしても最適。
飛行機の手配はよく考えた方が良いです。別の手段で安価に手配できるケースがありますので。
いずれにしても、昔とは違ってアプリでかなりのことが可能です。
便利な世の中ですね。
海外出向(seconded overseas)時は医療が心配
海外赴任時の心配事の中でも医療はトップクラスでしょう。
私もかなり心配しました。
幸いにも大きなトラブルがなく、健康診断以外で病院のお世話になることなく、海外赴任を全うしました。
それでも、体調を崩す人はやはりいるわけで。
そんな人の苦労話を聞いて感じたことをまとめます。
万全のサポートは期待できない
海外では病院での万全のサポートは期待できません。
この辺は日本って凄いって改めて思います。
コロナで色々な問題が浮き彫りになりましたが、それでも一般論としては変わりません。
少なくとも言語ができないだけでも、サポート体制としては不十分。
会社の福利厚生などで通訳を付けてくれる場合もありますが、
病院に行くまでは自力で行くこと、などの条件が付きます。
日本でも状況はあまり変わりませんが、海外だとハードルが1ランク上がります。
対策は日常管理
海外では医療サービスは期待できないと思った方が良いでしょう。
サービスが期待できない前提で対応するにはどうすればいいでしょうか?
日常管理
これです。
やっぱり健康第一です。基本が大事。
- 暴飲暴食はしない
- 糖分は控える
- 加工品は控える
- 適度な運動をする
- 睡眠をしっかりとる
- 歯磨きはしっかりする
海外赴任はストレスが絶対に溜まります。
ストレス発散に暴飲暴食はしてしまいがち。
私もお酒を多く飲むようになりましたね^^
歯についても海外赴任時に苦労しました。気が付かないうちにダメージを受けていました。
歯は絶対に日本で治療したい
海外赴任時には、そう思う日本人も多く出会いました。
異常時はためらわずに帰国
異常時はためらわずに帰国することをお勧めします。
その国の医療サービスを頼れず、先延ばしにしても良いことはありません。
自分が居なくなると、工場が動かなくなる
こういう責任感を持つのは赴任者としては当然ですし、実際にほぼそれに近い形になります。
それでも、ためらわずに帰国するべきです。
自身の健康の方が会社より大事。
一時帰国を許さない会社であれば、見切りをつける方が良いです。
赴任者同士で協力できる関係性を構築してれば、拒否されることはありません。
この辺は、日本で働くよりも、日本人同士の連携が見れる場面ですね。
コロナ禍の現在でも海外赴任をしている人は、健康に相当気を使っているはずでしょう。
最後に
化学会社の中小の海外工場に関する情報をまとめました。
海外化学プラントは一般に中小規模で、物流も移動も食事もネット環境も日本より劣ると考えた方が良いです。
慣れればなんてことはないはず。住めば都です。
そこで断捨離やミニマムライフと言った考え方を私も身に付けました。
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