樹脂は軽くて耐食性があるので、活躍の場所は広がっていくばかり。
車の軽量化や3Dプリンタなどにも登場します。
ところが、化学プラントでは樹脂をほとんど見ることはありません。
でも同じように樹脂を使ってはどうなのか?と疑問に思うようになれば、工場に少し詳しくなったといえるでしょう。
実は、樹脂を使わないのことには理由があります。
この記事では、化学プラントで樹脂が使いにくい理由を解説します。
危険物ラインは金属が原則
化学プラントのような危険物を扱う場所では、消防法で金属を原則としています。
耐熱性と強度と導電性が主な理由です。
耐熱性
耐火構造や不燃材料と専門用語で呼ばれる、火に強い材料が求められます。
金属は他の材質に比べて強度があって火にも強いので、化学プラントでは基本材質となります。
建物も鉄骨造りや鉄筋コンクリートなど、金属が登場しますね。
強度
金属は強度的にも他の材料に比べて有利なので、高圧下で扱う化学プラントにぴったりです。
化学プラントで扱っている液は危険な物が多いです。
ちょっとでも割れてしまったら、中にある危険な液やガスが拡散していきます。
それを強度的に不安な樹脂に頼りたくはないですね。
樹脂の外部を金属で覆う金属被覆タイプはこのデメリットを解決してくれます。
腐食性などの問題で樹脂を使わないといけない場合でも、金属被覆タイプにしましょう。
導電性
化学プラントで扱う液体は、静電気で着火するタイプが多いです。
配管などに液が流れている時、液が帯電して静電気が起きる可能性があります。
ここで、静電気を溜めないためには静電気が発生した瞬間に逃がすことが考えられます。
金属配管なら導電性があるので、電気はすぐに逃がすことができます。
樹脂などで導電性がない材質を配管として使うと、電気を逃がすことができずに静電気着火が起こりやすくなります。
樹脂の外部を金属で覆う金属被覆タイプはこのデメリットを解決してくれます。
腐食性などの問題で樹脂を使わないといけない場合でも、金属被覆タイプにしましょう。
故障リスクへの対策を
樹脂製は金属製に比べて、故障のリスクが高いです。
自動化がどこか信用できないのと同じで、樹脂性もどこか信用に欠けてしまいます。
液ラインは必須
金属系の材質は、化学プラントのどこでも必須かというと、そうでもありません。
液ラインは必須です。ガスラインは必須ではありません。
液ラインで不適切な材質を使っていて漏れた場合には、止めることができません。
ガスラインで漏れが起きた場合んは、運転を止めたら被害を抑えることができます。
ガスラインも金属タイプにするのが原則ですが、金属被覆にもできない完全に樹脂だけの部材を使うことは一応可能です。
不可というわけではないので、設計で困った場合に頼みの綱としても良いかもしれませんね。
使う場合には慎重に検討しましょう。
定期的な取替を
樹脂製の設備は、金属製の設備よりも劣化が早いと考えましょう。
ライニングなどの金属被覆系でも避けることはできません。
例えばフッ素樹脂ライニングはガスを透過する性質があるので、徐々にダメージを与えます。
ライニングをしているから外見で劣化度をチェックすることができず、定期的な交換を前提とした運用が求められます。
樹脂製のこういう設備が要注意
樹脂製の設備として、こういう設備は注意しましょう。
使うとしても、金属被覆が基本です。
ポンプ
ポンプで樹脂系のものは、例えばマグネットポンプなどで市販されています。
特にポンプは危険度が高く、下手をしたら破裂する可能性があります。
例えば、熱を持つとガスを発生させるような内容物で、ポンプの出口を間違って閉めたまま運転して内容物を温めるという場合です。
金属被覆にしたら、爆発の影響度をやや抑えることができます。
便利な樹脂製ですが、安全を最優先にしましょう。
タンク
樹脂製のタンクは、例えばFRP製が代表例です。
塩酸向けのFRPタンクで、劣化していることに気が付かずに、人が天板に乗って転落という事故も起こっています。
金属被覆にしたらこのリスクは下がります。
この場合は、FRPではなくフッ素樹脂ライニングにしましょう。
危険物を扱う液ラインでFRPにすること自体がNGなので、特段注意しなくても問題を避ける確率は高いでしょう。
バルブ
バルブも樹脂性が市販されています。
ポンプほどではないものの、人が触る機会が多いので故障のリスクも高くなります。
やはり金属被覆を基本にしましょう。
ホース
ホース類は樹脂製は特にNGです。
一端を開放して使うタイプは特にダメです。
静電気が溜まった状態で大気中に拡散されます。
曲げたり折ったりするときにも不向きですし、軽いという以外にメリットがないので使わないのが無難です。
参考
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最後に
樹脂製の設備が化学プラントでは使いにくい理由を解説しました。
軽くて耐食性も高いですが、耐熱性・強度・導電性が低く、火災・高圧・静電気着火などのリスクのある化学プラントには不向きです。
法的にも規制されていますし、液ラインは特に注意しましょう。
使う場合にも金属被覆にしましょう。
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