ポンプの選定は簡単なようで奥が深いです。
特にメカニカルシールは選択肢がいっぱいあって、最適な物を選ぶには知見が必要です。
どれも一長一短ありますが、悩んだときにはいくつか選択肢を提案しつつ、最終手段としての選択肢も準備できるようになりたいですね。
そんな最終手段が私の中ではダブルメカニカルシールです。
プラントによって課題が変わるので、ダブルメカニカルシールが必ずしも万能とは言えませんが、それでも可能性が高くなる理由を解説しましょう。
内容物の漏洩に強い
ダブルメカニカルシールは、内容物が外部に漏洩する確率を下げることができます。
すごくシンプルに言うと、ダブルメカニカルシールが2重シールだからです。
1重シールであるシングルメカニカルシールは、1つ目の壁が突破したら漏れとして検知されます。
ところが、2重シールだと漏れとして外部に検知される確率はグッと下がります。
危険物を扱う化学プラントでは外部への漏洩は極力下げるべきなので、ダブルメカニカルシールは安心感が出ます。
冷却液の選択肢が多い
ダブルメカニカルシールは冷却液の選択肢が多いことが特徴です。
冷却液で一般に思いつく物は水ですよね。
水が駄目なプロセスは結構あって、ポンプ選定で悩みます。
シングルメカニカルシールでもセルフフラッシングタイプにすれば、水を使わなくて済みますが、閉塞の可能性があります。
固形分を含むスラリー液にはセルフフラッシングは危険なので、水以外の液体で冷却となると・・・
ダブルメカニカルシールの出番です!
ダブルメカニカルシールだと溶媒を直接循環させても良いですし、間接冷却を使っても良いでしょう。
シールが漏れたときのことを考えると、間接冷却が無難です。
メカニカルシールは色々な手段を選べますが、失敗するとリカバリーが大変なので、難しい問題には手堅い方法を選ぶと良いでしょう。
メンテ費用が劇的に上がるわけではない
ダブルメカニカルシールとシングルメカニカルシールを比べたときに、メンテ費用が極端に上がることはありません。
もちろんダブルメカニカルシールの方が費用が高いのは間違いないです。
それでも生産機会のロスや復旧の手間を考えると、トータルで安くなる可能性は十分にあります。
大部分のポンプはシンプルなシングルメカで良くても、特殊な数点のポンプに対してはダブルメカでガチガチに組んでも良いと思います。
ケチって少しずつランクアップさせていっても、解決が遅くなるでしょう。
シールレスでもトラブルは起こる
メカニカルシールを使う渦巻ポンプに対して、シールレスポンプが対抗馬になります。
これはこれで、結構問題があります。
- スラリー系に弱い
- 使い方に癖がある
- 材質の選択肢が少ない
- 型式の選択肢が少ない
シールレスポンプはメカニカルシールよりも、漏れの確率が下がることは確かです。
見た目漏れる要素がないからですね。
ただし、見えないからこそ内部で何が起こっている分からずに、ポンプが動かなかったということも起こりえます。
ダブルメカニカルシールもメカ漏れを冷却液で誤魔化している感がありますが、シールレスポンプよりは検知しやすいでしょう。
何をもって頑丈な造りとするか思想が分かれますが、ダブルメカニカルシールは悪い選択肢ではないと考えます。
参考
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最後に
ポンプの軸封で悩んだときはダブルメカニカルシールがおススメです。
内容物の漏洩に強く、冷却液の選択肢が多く、メンテ費用が膨大に上がるわけではありません。
シールレスポンプの方が安心感がありますが、一長一短あります。
ダブルメカニカルシールは悪い選択肢ではないでしょう。
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コメント
軸封の耐久性についての質問なのですが、
※流体はスラリー
流体が漏れても良い条件だと、やはりグランドパッキンが一番良いのでしょうか?
スラリーを送っているポンプにメカニカルシールを用いているのですが、半年に一回壊れておりまして、悩んでおります。
ご質問ありがとうございます。
いわゆる泥水など、外部に漏れても問題にならないものならグランドパッキンは悪くない選択肢です。
下の条件を満たしていたらグランドパッキンでも使える可能性があるでしょう。
・グランドパッキンの屑が混入しても問題ない(異物という概念でない)
・漏れても安全や環境上の影響がない
・溶媒が水
・インペラやシャフトも摩耗している
メカニカルシールが漏れる原因が気になりますが、連続運転で止める機会がないならインペラやシャフトの摩耗を最初に疑います。
バッチ運転で止めたり動かしたりする機会が多いなら、止めた後の洗浄方法が気になります。
ご回答ありがとうございます。
状況としては、連続運転で止める機会が無く、過負荷で停止した時は、メカニカルシールが故障している状態です。
インペラやシャフトの摩耗が原因で歯メカニカルシールが壊れる加納があるのでしょうか?
この場合はスラリーによる配管閉塞(流量低下)ではなさそうですね。
流量が増える要因がなければ、インペラなどにスラリーが付着して質量が増加したポンプを電気的な動力で回そうとして過負荷になっていると考えられます。
(例えばクローズドインペラでスラリーが閉塞していたり、セミオープンでもケーシングと距離が短いなど・・・)
インペラ・シャフトが摩耗すると振動が大きくなって、メカニカルシールが漏れるという可能性を考えました。
スラリー性により配管閉塞やインペラの固着を疑うか、インペラやシャフトの摩耗を疑うか、最初にどちらを考えるかという着眼点だけの話です。