プロセスガス分析システム(gas analsys)は分析装置としてパッケージになっていて、ブラックボックス化されている部分です。
装置本体の理解は難しくてメーカーに依頼することが多くても、適正な運転管理をするうえではシステムとしての理解は欠かせません。
機械系エンジニアとしてはちょっと分からない…と敬遠する部分ですが、構造は意外とかんたんです。
結局は化学工学や液ガスの特性という基本的な部分を知っていれば、かなり理解できることでしょう。
業務スパンを広げる格好の分野でしょう。
ガス吸収システム
ガス吸収システムの概要を示します。
ボックス化された分析システム内の構造は、プロセス側だけを見るとこんな感じになっています。
測定器自体にいろいろな種類があって、酸素濃度を測定したりガス濃度を測定したりと、応用が利く装置です。
ガス入口
ガス入口はプロセス内の配管に直結しています。
その環境を代表するようなガスライン中から採取すると良いでしょう。
重要なことは、プロセスは測定したいガスだけが含まれているわけではない、ということ。
ガスだけでなくて、液体としてのミストや粉体としての粉塵なども含まれています。
これを除去するためのシステムが測定システムの前半に必要です。
異物除去
前半の異物除去は、ミストと粉のそれぞれを除去する役割を持っています。
ミスト除去は簡単な慣性力集塵の原理を使います。
いわゆる反転型です。
これだけだど、ミストを除去しても、粉は除去できるかどうか疑わしいです。
そこでフィルタの出番です。
物理的に粉をキャッチしようとします。
ここで粉がキャッチできてないと、メインの測定システム内で閉塞してしまいます。
測定ができないというトラブルが起きたときは、ここを疑いましょう。
ミスト除去もフィルタも下層部に異物としてのミストが溜まります。
これを自動的に排出するオートドレンを付けます。
原理はシールポットと同じです。
液体中にパイプを挿入して、液体によるシールをします。
このシステムでは後半部分にあるポンプでガスを吸い込む方式なので、シール部に液体が入っていないと、適切な測定ができません。
オートドレン側から空気を吸い込むことになり、測定ガスの濃度が変わるからです。
まとめると、ガス中の異物除去として以下の装置を構成します。
- ミスト除去
- フィルタ
- オートドレン
ガスや液の分離という意味で、化学プロセスでは割と使う機会の多い装置で構成されていますね。
測定対象
本システムを使った測定はいろいろ可能ですが、化学プラントとしては、数点に限定されます。
酸素濃度計
可燃性ガス濃度計
毒性ガス計
1つの計器であらゆる分析ができるわけではないので、1ラインで複数の分析をしたい場合には、このシステムを並列して設置することになるでしょう。
くれぐれもサンプリング箇所に誤差がでるような配置は避けましょう。
システムへの導入口はとても小さなチューブで繋ぐことが多いですが、チューブ長さが長いと圧力損失が高く導入されません。
1本のチューブから分岐するように複数のシステムに繋いでも、バランスが取れません。
この辺りは圧力損失の話なので、機械屋の専門範囲です。
流量調整
測定装置の後半部分では、測定環境を形成するための流量調整がメインです。
ポンプでガスを吸い込み、吸い込み側に測定装置を置く形です。
ポンプの出口には流量計(と調整弁)が付いていて、測定したい流量に合わせます。
流量計の出口は、分析装置システムから排出されます。
完全に無害なガスであれば大気中に開放しても良いでしょうが、プロセスは一般に有害なので処理が必要です。
専用の吸収装置をつけるか、採取したプロセス中に排出すると良いでしょう。
プロセス中に排出する場合は、採取口からできるだけ離すようにしましょう。
近すぎると、測定後の処理ガスを再度採取してしまうことになり、真のプロセス条件を測定していることにはならなくなります。
- ポンプ
- 流量計
場合によっては圧力調整の機構も必要になります。
この辺りはプロセスラインの発想がとても似ていますね。
付帯
機械エンジニアとしては分析装置の概要として、上記を知っていれば十分です。
測定原理の細かい部分はかなり専門的になりますので、専門家に任せましょう。
とはいえ、付帯的な情報として以下の要素は気にしても良いと思います。
- 制御動力源としての計装用空気
- 装置内に可燃性蒸気を溜めないように置換するための計装用空気
- 動力装置の防爆仕様
- 耐食性材質
特に材質は、ミストの有り無しや処理前後のガスによって変わることがあります。
配管材質と同じだから問題ない、と無条件で成立するわけではありません。とはいえ、最初は配管材質と同じにするでしょう。
参考
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さらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
最後に
化学プラントのプロセスガス測定用システムの構造を解説しました。
測定器そのものは原理によって変わるので、紹介はしません。
その前後に必要な装置として異物除去、流量調整の機構があります。
このシステムは化学プラントの機械屋の方がむしろ詳しい部分ですが、ブラックボックス化されていて敬遠しがちです。
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