化学プラントの”シャッター“設計について解説します。
土建の建具の1つでしかないシャッターですが、まれに検討するタイミングがあります。
機械エンジニアだからといって土建関係の設計を疎かにしていいわけではありません。
知っておきたいt低限の知識をまとめてみました。
“シャッター”の構造
まずはシャッターそのものの構造を見てみましょう。
下の図のようなイメージで理解すれば良いでしょう。

ここでは電動シャッターを想定します。
シャッターは巻き取り機とシャッター本体から構成されます。
巻き取り機はモーターと軸で構成されていると思えば良いでしょう。
モーターを回して軸を回転させ、軸に巻き取られているシャッター本体を動かします。
シャッターの開閉を検知するための近接スイッチを付けて、スイッチの作動条件とモーターの作動を連動させます。
- 下げるボタンを押す → 下端の近接スイッチが作動するまでモーターを回す
- 上げるボタンを押す → 上端の近接スイッチが作動するまでモーターを回す
- 止めるボタンを押す → 任意の位置でモーターを止める
制御というほど複雑なものではありませんね。
シャッターが特定の位置に降りてくるようにするために、ガイドレールを付けます。

構造としてはこれくらい。
こうやって考えるとシンプルな構造ですね。
手動シャッターの場合は巻き取り機としてのモーターがありません。
任意の位置でシャッターを止めたり、シャッターを自動的に戻したりする機構は機械的な部品で実現します。
全開のシャッターを下ろすときには棒を使ってアナログに下ろします。
“シャッター”サイズ
シャッターサイズは設計すべき要素があります。
シャッターが必要な箇所は倉庫の入口や製品室の入口などです。
これが設計要素そのものですよね。
- 運搬すべき物のサイズ(フレコン・ドラム缶など荷姿)
- 運搬手段(人力のパレッター、電動フォークリスト)
パレットに乗ったフレコンを電動フォークで運ぶ場合が最大サイズと考えて良いでしょう。
とはいえ、これらのサイズだけでシャッターのサイズが決まるわけではありません。
動線というややこしい要素が関連するからです。
動線を意識したシャッターサイズと言っても難しいでしょう。
実際には建屋の壁の大きさで取れる最大サイズとしてシャッターを選ぶことが多いです。
横方向の大きさはあまり制約がありませんが、高さ方向の制約が出てくる場面はあるでしょう。
古い工場だと3mもないくらいの低い高さの部屋にシャッターを付けるという場合があります。
こんな場所に機器を据え付けると、シャッターが邪魔になって機器を運べないというケースもあります。
風向き
シャッターの設計上は風向きをぜひとも考えたいです。

具体的には風と直面する方向にはシャッターを置かないというシンプルなもの。
シャッターを機械工学的な視点で見ると、大きな片持ち梁の状態になっています。
しかもその梁はヤング率が低く、梁とは呼べないようなもの。
ガイドレールがあると言っても固定しているわけではありません。
風圧の影響でシャッターは良く動きます。
シャッターが変形しガイドレールとこすれるように動くシャッターは、モーターの過負荷を起こす原因となります。
壊れたシャッターが開かずに、原料や製品を出せなかった。
なんて悲惨な経験をしたら、風向きは決しておろそかにできません。
搬入ルートの制約
シャッターの向きは搬入ルートと大きく関係します。
風向きを最優先にしたものの、プラントのレイアウトや搬入ルートの都合で向きを制限される場合はあるでしょう。
中にはやむをえず風と直面する方向にシャッターを置かざるを得ない場合もあります。
この場合は土建部門とよく話をしましょう。
- 昔からある鋼製のシャッターでないといけないのか
- 電動でないといけないのか
- ガードを付けることができないのか
いくつかの方法が考えられます。
最後に
化学プラントで使うシャッターの基本的な考え方を解説しました。
電動シャッターが便利ですが、故障の原因になりやすいです。
風向きや搬入ルートなどプラント建設にも影響しますので、建設段階でよく考えたい要素です。
疎かにはできませんね。
この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
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