化学プラントで液体や固体を製品として扱っていると、異物混入はゼロにはできません。限りなくゼロにする努力は必要ですが、それでも起きてしまった時には対応をしないといけません。特に身近な例では「原因不明」や「単純ミス」の例が多いと思っています。この場合の、報告書の書き方はとても困ります。
本記事では書きにくい異物混入が起きた時に作成する報告書の例を紹介します。全体が見えていると、各部署で対応することも分かりやすくなります。
この記事は、異物混入シリーズの一部です。
異物混入トラブルの原因と対策|化学プラント現場の難しさと解決法
プラント運転で絶対避けたい異物混入のリスクとその対応
クレーム内容
クレームを受けた内容をそのものを報告書にしっかり記載する必要があります。こういう内容の報告を受けているはずです。
・発見日
・ロット番号
・状況説明のメールなど
・写真
あくまで事実ベースで淡々と記載することが大事です。
調査結果
クレームを受けたあと、工場内で調査を行ってその結果を報告書に記載します。
充填記録など
異物を発見した場合は、最終工程である充填に関する記録を集めます。これで解決することはほぼありません。記録上は「問題なし」になっていることが普通だからです。自主的に異常が見つかっているのであれば、出荷するわけはないからですね。
充填記録以外にも、作業工程の記録もチェックする場合はあります。こちらも「問題なし」が普通です。
現地調査
記録だけでは解決できないので、現地調査を行います。
・現場の設備で異物となりそうな要因がないか
・作業方法で異物が起きそうな箇所はないか
これも「問題なし」となる確率が高いです。クレームが頻繁に起きていれば対策はとっくにしているはずで、クレームが少ないor初めてであれば「これまで問題なかった」わけですから。
調査はするものの、「原因不明」となることが多いはずです。原因が分かるとむしろ助かるくらいです。
原因
調査したことをまとめた後、原因を記載します。上にもあげましたが、「原因不明」という場合が多いはずです。会社によっては「単純ミス」という場合もあります。
私がこれまでに見た報告書の9割以上は「原因不明」か「単純ミス」です。こういう報告書は体裁を整えるのが大変です。
対策
原因の後は対策です。「原因不明」か「単純ミス」の場合、対策はとても書きにくいです。
応急対策
応急対策は記載しない会社もあります。
開放洗浄
設備を開放洗浄して異物を発見できずに、綺麗になったことを証明する記述や写真を撮れば理想的です。再開後数バッチは様子を見て問題ないことを確認してから出荷するという慎重な会社もあれば、最初のバッチからいきなり出荷するという会社もあります。この辺りは、品質保証の考え方が大きく分かれるところでしょう。
教育
作業員への教育は、報告書に必須です。これは最も簡単な対策で、どこの会社でもできます。教育記録には作業員のサインがあって報告書に添付していると、信頼感は少し上がります。これすらしない会社だと、品質に対する考え方がかなり緩いと思った方が良いでしょう。
恒久対策
恒久対策は、報告書の最も大事な部分です。ここがしっかりしていないと、類似のトラブルがまた起きてもおかしくありません。
設備の再発防止対策
設備の再発防止対策は、決定的な対策になります。原因不明や単純ミスの場合には、設備面で何を対策していいかわからず、対策が取れないことも珍しくありません。
原因かどうかは分からないが、ここは問題になってもおかしくないと思うポイントはあるでしょう。対策には多くのお金が必要ですので、原因に入れたくないという心理も働きます。例えば表示を付けるなど、すごく簡単な対策をしただけでも、説得力は増すと思うくらいでちょうどいいでしょう。
機電系エンジニアが製造課から設備改造依頼を受けた時は、報告書に書くことがなくて困っているという相手の気持ちを理解できると、少しは楽になるでしょう。でも、短い時間で対応してほしいという要請が来た場合は、時間的に対応できるかどうか自分たちの主張はすべきです。
作業手順
作業手順の見直しは、大抵の場合は記載できます。
多くの異物混入はチェック体制が甘かったという展開にできるので、
・1人のチェックから2人のチェックに変えた
・充填時のチェックだけでなく出荷時に抜き取りチェックをする
などの手順を作ります。
たいていの会社では当たり前にできているかもしれませんが、意外にも1人で1回だけチェックという会社があったりします。手順を増やしたら解決するというわけでもありませんが、書類上は整います。これでもダメなら監査に入るという感じでしょう。
参考
最後に
化学プラントにおける異物混入は、完全にゼロにすることは難しく、特に「原因不明」や「単純ミス」といったケースでは報告書作成が最も悩ましい業務になります。
本記事では、クレーム内容の事実記載から調査結果の整理、原因のまとめ方、応急対策・教育・恒久対策の書き方まで、実務で困りがちなポイントを体系的に整理しました。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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