一度建てたものが未来永劫使えるわけではない。
当たり前の話ですが、高度経済成長期に建てた化学プラントなどは、今になって大ごとになってきています。建てたときも高額だったでしょうが、その後の運用で一定の補修をしながら使い続けていって、限界が見え始めたこの頃。
実態を理解していない本社の企画部門に、設備投資の必要性を訴えるには、いくつかのコツがあると思っています。大手企業だと見積をする人と申請をする人が分かれていて、見積をする側からは見えない部分だと思います。その結果、見積額が高いけども削減しようがないという結末になりやすいです。
老朽化している
設備が老朽化しているということは、現在では力強いアピールです。設備投資として通るのは、老朽化だけに限定されるかもしれません。
この場合には、いくつかのコツがあります。
写真で訴える
老朽化の具合を写真撮影しましょう。ボロボロになっていて、いかにも朽ち果てそうな状況を取ります。補修で凌いでいる後が見えるとよりgoodでしょう。
合わせて、設置したばかりの綺麗な設備も並べましょう。
見た目に訴えるのは必須ですね。
履歴で訴える
老朽化を語るうえで、履歴情報は欠かせない要素です。
- 何年使い続けているか
- 腐食環境の高い生産で何年使っているか
- これまでにどんな補修をしてきたか
これらの情報は保全部門に集まりやすいです。保全部門が対外アピールする良い機会ですので、日々の業務でしっかり整理しましょう。
データが無ければ、何年くらい使ったかというアバウトな情報だけになり、信頼性を高めることはできないですね。
数で訴える
老朽化は特定の1基だけが話題になるわけではありません。同じような年代に設置した設備は一律に老朽化していきます。
建設してから40年50年と経ったプラントだと、ほぼすべての設備が該当するわけですね。
投資は小額にしたいので、数基に限定して更新をします。これを10年のオーダーで継続していくには、どれだけの数を更新しないといけないか全体像を明らかにしているといでしょう。
というのも、申請を受ける側からすると結構怖いものです。毎年、「○○の設備更新で△△円が必要です。」と訴えられるわけですから。やらなければ生産はできなくなるけど、お金の問題があってどこまでお金を出せばいいか考えないといけなくなります。
プラントライフサイクルに関わる大きな話です。
これを単年度の申請などでしか訴える機会がなく、数年後に一気に問題化してしまうことを企画部門側は恐れます。結果、まだ問題になっていないのに、プラントを閉じるという最悪の決定になってしまうかもしれません。
合理化できる
設備投資で合理化できるというのは絶対的なアピールです。
新しい製品を導入したり、生産量を増やしたり、という分かりやすいものは、アピールを強くする必要はありません。投資の説明の中に自ずと含まれており、企画側もその情報だけに興味があるので、自ずと伝わります。
問題は、設備老朽更新。
老朽した設備数が多くて更新しないといけなくて抑制せざるを得ない状況で、この更新は合理化の意味もありますとアピールすると、優先度が上がる確率が高まります。
効果を明確にアピールできたらいいのですが、理論上これくらいは合理化できますという概算値でも良いと思います。実態は運用段階で調査すると逃げましょう。
以下のようなものが例ですね。
- モーターを高効率なものにする
- 蒸気駆動から電気駆動に切り替える
- 台数制御化して、低負荷時の動力を抑える
故障リスクが下がる
故障リスクが下がることもアピールになります。
老朽化して故障が頻発して、生産は止まり保全担当者は追い詰められ、と良いことが無い状況でリスクが下がることは特に工場としては大助かりです。
同じ老朽更新でも、単純更新で問題を先送りするだけよりは、少しでも楽な方向にする方が将来を明るく感じやすいです。そこでうまくいった事例が別のプラントにも適用できたり、発展するかもしれません。
設計と保全の連携がしっかりしていたら、見積段階で自ずと考えられる内容です。大手ほど担当が分割されて情報が集まりにくいかも知れませんね。この提案ができることは、工場の技術力の1つだと思っています。
- 台数制御化してリスクを抑える
- 耐食性の高い材質にして延命化する
- 移動式の設備にして、交換が容易にできるようにする
参考
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最後に
化学プラントの設備投資では、投資を決めるために厳しい厳選がなされます。老朽化しているプラントが多いので、特に問題になりやすいですね。
ここで必要な投資を許可してもらうためには、申請者はいくつかの工夫が必要です。老朽化している具合のアピール、合理化の可能性、故障リスク削減の可能性などです。
プレゼンで露骨にアピールするという必要までは無いと思います。しっかり情報を盛り込んで、普通に説明すれば良いでしょう。企画側も話をしっかり聞こうとするはずです。これらの話をして受け入れてもらえないなら、会社としてはかなり致命的です。
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