DXという単語が流行って何年も経ちました。化学プラントでもDXを進めている会社はいっぱいあるでしょう。
対外的には凄いアピールをします。これで効果がこんなに出た!という主張。それっぽく見えますが、実態を知っている人から見ると、それってどうなの?という内容の方が多いです。
私の周りでDXの進みは最近落ちてきており、どういう展開になっているかいくつか紹介しましょう。
どこの会社も同じような展開だと信じて・・・
何もしない
DXが進まない理由の大半は、何もしないという展開です。
言葉通り何もしません。
- 使用者の感度を聞くわけではない
- 上位者に報告するわけではない
- メーカーに話を聞くわけではない
急いでいないが重要なものというカテゴリに入る仕事だからこそ、誰かが言わないとやらないという人は居ます。言ってもしばらく放置して、誰も何も言ってこないからさらに放置、という悪質な例も見られます。やってくださいと言いすぎたらそれはそれでプレッシャーになるらしく、仕事を依頼しない方が良かったという後悔が出てきます。
担当者としては今から何を動いたらいいのか分からない、どこまでしたらいいのか分からない、などの個人的な理由はあるでしょう。DXを担当する人は組織の垣根を越えて主体的に行動できる人が抜擢されるべきであり、だからこそ努力が認められるのですが、そうではない残念な人がアサインされる場合があります。化学工場の機電系エンジニアの境遇を考えると、非常にありえる展開です。
1回だけデータを取って満足
DXが流行ったので何かしらのツールを使って1回はデータを取ります。ここで満足して終わりというケースは非常に多い。
何もしないよりはましですが、対外的に公表できるデータが整えばそれ以上は何もしないので、結果はあまり変わりありません。業務の効率化を進めるのではないので、一時仕事が増えただけ。仕事を少しでも増やしたくないから、今までの仕事を減らさず新しい仕事を受け付けないという展開。
この場合も、対外的なデータを取ったら後は誰かが勝手にやってくれるだろう、それは自分の仕事ではないだろう、と安易に考えやすいです。1回しかしたことない業務なので、次にやろうとしたら面倒になって今までと同じやり方で対応して、以降は忘れ去られます。
実運用までの展開で力尽きる
DXでデータを取ったとして、それで完成というパターンは少ないです。ほぼ必ず解析や仕組みつくりが必要です。
- 科学技術的なデータとの裏付け
- アナログデータの収集
- 定常的に実施するための手順つくり
何かしらのツールで新しい情報が得られたとして、それが正しいかどうかは評価ができません。何かしらの別の情報と関連付ける必要があります。
例えば、設備内部の点検が出来なくてツールを使って見れるようになったとして、その情報だけで保全周期を決めることはできないはずです。定期的な測定データと実際に破壊されたときのデータを使って劣化パターンを決めたり、板厚測定をしたり、毎回時間を掛けて測定しないようにする仕組みを作ったり・・・。
これらの作業はDXを導入して試しに何かをやるという以上に、相当の作業が発生します。結果的にDXで付加された作業を無機質に何度も続け、コストだけが発生していくという展開になりえます。
日本企業は辞める勇気を持てないケースが多いので、こうしてDXが負の遺産となることは十分に考えられます。
細かく調べても結果が出ない
細かく調べていっても結果が出ないという残念なケースはあります。これまでの例も真面目な人が陥る結末でしたが、この例は真面目でスキルもある人が陥る結末です。
- 裏付け情報をいっぱい調べようとする
- 解析情報やパターンを増やして何かしらの結論を得ようとする
有意な情報が得られるまで時間を掛けようとして結果が出ない場合は、どこかで止める勇気が必要です。担当者がDXの進捗を報告する場があっても、上位者が判断するわけでもなければ、こういう展開になりえます。
その結果、担当者は仕事の意味を見いだせず他のスキルを習得する機会も削がれ、会社としても何の成果も出ないという結構残酷な結末になります。
参考
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最後に
化学プラントの設備保全でDXは進められているように見えてしまいます。対外アピールは凄いのですが、実態はどこも結構なものだと思います。
何もしない人も居れば、1回だけデータを取って満足する人も居れば、実運用までの展開であきらめたり、時間を掛けて結果が出ないというパターンもあります。
DXは部署を横断して自主的に進める力のある人が担当する必要があり、人を選ぶ業務だと思っています。
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