化学プラントのエンジニアリングの形態に、自社にその機能を持たせるオーナーズエンジニアがあります。私もその立場の仕事をしています。
機電系で化学プラントという選択は、基本的にはおススメの仕事です。ところが、諸手を挙げて賛成というわけではなく、当然ですがリスクもあります。
このリスクを認識したうえで、是非を判断する方が良いでしょう。私も何回も悩みました。
仕事の浮き沈みを吸収しにくい
オーナーズエンジニアは仕事の浮き沈みの吸収がしにくいという、決定的な問題があります。
その会社やプラントで毎年定期的に仕事がある場合は、悩むことはありません。でも、10年20年と仕事が継続する保証はどこにもありません。ここで悲惨なことが起こりえます。
まずは社内で別の部署への異動が考えられます。それでも引き取り先がない場合には、子会社や関連会社への出向が考えられるでしょう。それでもダメな場合は・・・と考えてしまいます。
エンジニアリングの仕事ばかりをしていると、他の仕事の経験を積むことができず、応用が利かなくなるかもしれませんね(個人の努力の範囲内ですが)。
この辺りの問題は、プラントエンジニアリング会社だともう少し気楽だと思っています。仕事は会社が探してくれるでしょう。海外のケースが多いですが。仕事範囲が変わると言っても、エンジニアリングに関わることは手堅いので、戸惑うことも少ないと思っています(仕事内容に依るので、何とも言えない部分はあります)。
突発の仕事が多い
仕事の浮き沈みでも沈む側の話を先に述べましたが、浮く側の話も課題です。
すなわち仕事量が急に多くなっても、補充する手段が必ずしも多くはありません。とてもカバーできない範囲であれば、プラントエンジニアリング会社に依頼するのですが、その中間の「自社でやるには仕事量がやや多い」という状態が継続的に発生しやすいです。
中でも突発の仕事が入って振り回されると、辛いです。多くのプラントエンジニアは、突発の仕事に疲弊します。長年続けてしまうと、感覚がマヒしてしまいます。そういうベテラン層を何人も見てきました。
化学プラントの中でも機電系は専門性の高い仕事なので、他に行き先がないのと同様に他からの応援も期待しにくい、というのは1つのリスクです。合成や化工の人たちを見ていると、少し羨ましく思います。
ずっと工場
オーナーズエンジニアであれば、基本工場勤務です。作業服での勤務です。本社でスーツを着てオシャレな仕事をすることは、まずないでしょう。
私は幸いにも、この機会を得ることができました。工場勤務で一生を終えることは悪くはないのでしょうが、別の選択肢を見る機会がないというのはそれはそれで勿体ないと思います。
工場に紐付いた仕事をするので、最初から選択肢を絞ってしまうのは1つのリスクです。勤務地が固定化されることをメリットと考えるかどうかは、人それぞれです。
エンジニアリングの知識は習得しにくい
オーナーズエンジニアリングだと、いわゆるエンジニアリングの仕事は習得しにくいと言われています。これはある点で正しいです。
自分で手を動かして、例えば配管図を書いたり設備図を作り上げて、それが実物になるというプロセスを得る機会はほぼ無いでしょう。その手前の概念設計止まりです。私の職場の場合は、概念設計は手前のプロセス設計部門がほぼ完成させてしまうので、エンジニアリングと言いながら何も付加価値がない可能性すらあります。
オーナーズエンジニアリングのメリットは、一瞬である建設や立ち上げの経験だけでなく、その後の長期運転に関われることです。すなわち、運転や保全や企画などの部分です。これはプラントエンジニアリング会社だと一部分でしか携われません。
これらの知識を習得すれば、プラントエンジニアだけができる人からさらに付加価値を上げることができ、別の部署への異動も考えられます。設備を知っている人が少ない化学プラントでは、それだけでも十分な価値があるので、+αがあれば極めてレアな存在になるでしょう。ですが、そこまで踏み込まない人が多いのが事実です。その前に振り回される仕事で疲れ切って、転職というケースが多いように思います。
受け身がゆえに成長しにくい
オーナーズエンジニアリングは、仕事の性質柄か受け身の仕事が多いです。これが成長を阻害することになりかねません。
もっと端的に言うと「言われたことだけやる」という人になりやすいです。それでも解雇されることは無く、給料もそれなりとなると、諦める人は相当多いです。
繰り返しますが、これで仕事が多くて安定的であれば問題はありません。問題は、会社で仕事が少なくなってきた時に、受け身の人をどう扱うかということでしょう。素早く転職を探すか、部署の異動で対応するかという点が、考えないといけないことですね。私の部署でも、何も考えずに窓際的な対応をしている人の方が多いです。
参考
関連記事
最後に
オーナーズエンジニアは個人的にはおススメの仕事ですが、リスクはあります。
仕事の浮き沈みを吸収しにくく、突発の仕事は多く、ずっと工場勤務です。その割に知識は習得しにくく、受け身の仕事をずっとこなすだけという展開も考えられます。
それでも会社が存続する場合は、気楽に仕事ができるでしょう。そうでなくなった時は、リスクが急に問題になります。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。
コメント